29:そうやって夏休みは過ぎ去ってゆきました――。

 彼は一年生のときにはお弁当をよく持ってきてた気がします。彩りよい、おいしそうなお弁当だった記憶があります。まさかそれをつくられた彼のお母さんともいまこれこれこうなってお会いさせていただくことになるとは……人生、なにがあるかほんとわかんないですよね……。


 もちろん当時は交際してるとかではぜんぜんなかったですし、平日にわざわざいっしょにごはんを食べるということはできませんでした。なので、だからこそ、昼休みを過ごしている彼を観察するのが好きで……いっしょに机を囲めることも、嬉しかったです。



 ちなみになのですが午前授業の日にかぎらず、私はよく平日授業の日でも彼のいるところに突撃して、そばで勝手にぴーひょろリコーダーを吹いてました。

 当時流行っていた「ニコニコ組曲」を勝手にリコーダーアレンジにして、それはもうぴーひょろと吹いていました。

 彼も、そして私とは直接のかかわりがなかった彼のクラス友達も、よく許容してくれてたと思う。というかよく周囲から苦情がこなかった! あのときはほんとうるさくてすんません! 食堂はリコーダーを吹く場所ではありませんでした!


 そして、ちらちらこっちを気にしてたほかのひとのなかでだれよりも確固として、視線さえ上げず黙々と狩りを続けていた後輩くんは、やっぱりあれはあれで当時からつよかったしそういうひとなんだと思うんですよ。元先輩はね、いま振り返ってもそれはそう思うんです。





 と、いう感じで。

 夏休みは、楽しく過ぎ去り。多少、会話を交わすようになって。二学期がはじまり。文化祭の準備が、本格的にはじまります――。

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