第1894話 駆逐

 物騒なタイトルでしょう?

 大丈夫。大丈夫です。

 全然物騒じゃないやつですから。

 性懲りもなく宇部夫妻のトークをお届けしようと思っただけのやつですから。


 ここ数日、宇部家の生活リズムに少々変化が見られました。


 きっかけは、娘の吹奏楽部入部です。


 それまでは、子ども達は学校が終わったら学童へ行き、そこでパパのお迎えを待ちます。旦那の仕事が終わるのがだいたい17時ですので、17時10分くらいでしょうか。で、そのまま自宅へ帰るか、もしくは、旦那の仕事が早く終わった日なんかは一旦旦那の実家へ行って、少し遊んでから帰宅する。


 いずれにしても、だいたい17時半くらいには帰ってきます。それくらいの時間となりますと、私は夕飯の仕込みを終え、洗濯物を取り込んでなんやかんやし、エアロバイクを漕ぎ漕ぎしていたりします。漕ぎ漕ぎしながら旦那とぺちゃくちゃおしゃべりしたりするのです。


 で、18時頃お風呂の湯張りボタンを押し、溜まったら女子チーム→男子チームの順に入浴。上がったらご飯。食べ終わるのはだいたい19時ちょい過ぎですかね。


 そんで、20時になったら子ども達は子ども部屋へGO。


 だったのですが。


 娘の吹奏楽の終了時間は17:45。


 えっ、小学生でもそれくらいまでやるんだ! というのが正直なところでした。いや、お迎え行くから良いんだけどね!?


 なので、帰宅時間は18時過ぎです。ちなみにその間息子は一人でも学童です。淋しいかな? と思ったのですが、全然そんなことはありませんでした。さすがはMr.マイペース。


 こうなりますと、ありとあらゆる時間がズレます。そりゃそうよ。


 帰宅と共に湯張りです。もう何なら帰宅前に湯張りです。帰ってきたら即風呂。上がったらアワアワとご飯です。まぁ私の帰宅時間は変わりませんから、温めて食卓に並べるだけなんですけども。


 で、食べ終わる頃にはもう20時近くなってる。まだまだ食べるのに時間がかかる子ども達です。


 とまぁこんな感じでちょっとバタバタするようになってしまったのです。


 こうなると、どこに影響が出るか、おわかりですか?


 ヒントはこの話の最初の方にあります。


 そうです。

 宇部夫妻のトーク部分に影響が出るのです。

 どういうこと? と思われたでしょう。っつーかっげぇ導入だな、とも思ったでしょう? 何これ、バグ? そう思った方もいるのではないでしょうか。残念ながら、それが宇部ッセイです。前半部でどれだけ字数を稼げるかにかかっているのです。なぁに多けりゃ削るだけよ。


 帰宅後にゆっくり話をしたり、のんびりする時間が無くなってしまったのです。まぁ、子ども達を寝かしつけて――厳密には寝かしつけてはいないんですけど――からすりゃいいだろって話ではあるんですけども。夜はね、旦那もお出掛けしたりお買い物に行ったりするものですから。


 こうなるともう添い寝タイムでたっぷりお話するほかない。修学旅行のアレですね。寝るまでお話するやつ。


 それでまぁ、いろんな話をしてですよ。

 なんか急に肌寒くなった日でね。夜も結構寒くて。だからまだ旦那ももふもふの部屋着でね。しがみつくともっふもふなんですよ。そんであれこれ話しながらもふもふウトウトしておりましたらば。


 なんか、頭にね、ちくちくしたものが刺さるわけです。

 何だ? スタンド攻撃か?


 違います。

 旦那のヒゲです。

 おヒゲが刺さっているのです。


 旦那は会社勤めではありませんので、毎日ヒゲを剃らなくてもOKなのです。というか、旦那曰く、「もともと毎日剃らなくてもそんなに伸びない」らしく。前の職場にいたんですよ。朝剃っても、夕方にはなんか既に青ーくなってる人が。そういうレベルではないぞと。


 あとはまぁ、外仕事なのでね、多少のヒゲはね、ワイルドで良いじゃない、っていう。ただちくちくするんですよね。それが難点。


 それが頭にちくちくと刺さったわけです。

 だからまぁ、言ったわけですよね。


「ちくちくする」


 すると旦那は、「えぇっ?!」と声を上げて私から離れるわけです。


旦那「えっ、んな、何で!? え、俺?」

宇部「どした、良夫さんや」

旦那「えっ、いまの、だって」

宇部「いまの? ヒゲがちくちくするやつ?」

旦那「あ、あぁ~……ちくちくかぁ」

宇部「えっ、何」

旦那「いや、松清子がさ、低い声で『駆逐する』って言い出したから」

宇部「ちくちく! 駆逐じゃなくて! ちくちく!」

旦那「だよね。あーびっくりした。俺、心臓を捧げよって叫ぶところだったわ」

宇部「進撃の巨人じゃん。大丈夫だよ。駆逐しないよ」


 っていうね。

 もう全然物騒じゃないでしょう?

 ただ単に『ちくちく』と『駆逐』って似てるよね、っていう。それだけの、何なら一行で済む話をね、ここまで引き伸ばしたわけです。


 これがエッセイ職人の力ですね。

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