第1355話 ウチもかよ!
ここ2年くらいですかね、人手不足ということで、一日だけ遅番に入ってます。閉店の20時までの勤務です。
子ども達も小さいとはいえ、もうバブちゃんではありませんし、私が出来ることなんてほぼ旦那にも出来ますんでね。支障はないです。ただちょっと献立から野菜が少々減って、マックのハッピーセット出現率が上がるくらいでしょうか。
子ども達は基本的には20時就寝なんですけども、その日だけは私の帰宅を待ってからのお休みタイムとなりますので、大体20時20分くらいまで居間で過ごせたりもするものですから、まぁ、鬼の居ぬ間になんとやらみたいなね? 週に一日くらいはそういう日があっても良いのではないでしょうか。
さて、家族がそんな感じで過ごしている中、閉店ギリギリの店内でどんなドラマが起こっているかというと――。
まぁ基本的には平和です。
毎度毎度、そんな事件ばかり起こってたまるかってんだい。
ですが、比較的厄介なお客様が来店される時間でもあります。
というのも、
① そもそも閉店時間を知らずにのんきにお買い物をするお客様(こういう人に限ってカートに山盛り買う)
② 閉店時間はわかっているけど、19時59分までは営業時間でしょ? とでも言いたげに悠々とお買い物をするお客様(なんなら入店も5分前)
だいたいこのパターンだからです。
あぁー、ごめんなさいね、もうすぐ閉店ってわかってるから急ぐわね、って方はむしろ少ないです。わかってます。わかってるけどこっちはお客よ? 開いてるんだもの、良いじゃない、みたいな方が多いです。いやもちろんね、開いてるんだから良いんですよ。何も悪いことはしてません。早く帰りたいなんてこっちの都合ですし。良いんです。
ただね、ほんとに人がいないんです、この時間帯。
なので、
「テーブルクロスのカット、3メートルを3枚。急ぎで」
→急げる長さ、量ではないです。せめて日中の人がいる時ならまだしも。
「このレンガ、もっとないの? じゃあ注文して。30個」
→仮にいま30個あったとして、この時間から何をする気ですかお客様。
「あら? ちょっとこれ車に入らないじゃない。じゃあ大きい車に替えてくるわね」
→大きいものを買うつもりで、尚且つ大きい車をお持ちなのであれば、最初からそっちの車で来ていただけませんでしょうか。
ただ、救いなのは、遅番の面子は皆さん働き者なので、ピンチの際にはすぐに駆けつけてくれるというところでしょうか。
そんなある日の閉店間際。
めちゃくちゃ急ぎのご様子の若いママさんが来店しました。近くにいた男性社員を捕まえて目当ての商品の場所を尋ね、彼と共に店内を爆走です。
何だ!?
そんなに急いで何をお求めに来たのですか!?
ものの数秒で何かを手にしたお客様、再び大急ぎでレジへゴー!
私には見えました!
お客様が持っているのは軍手! 軍手です!
しかもバラ売りのやつ!
あのパッケージ、そして、色。
あれば間違いなく子ども用軍手です。
私の視力はメガネを装着しても0.6でした。こないだの健診で叩き出した数値です。それでもそこまでわかったのは、私がその辺も担当しているからに他なりません!
宇部「……これはきっと、あれですね。明日学校か保育園でお芋掘りがあるんですよ。そんで、この時間にいきなり言われたんでしょうね。それでお母さんが焦って買いに来たんですよ」
小学生の子を二人持つ私の推理が光ります。何せ数日前、小学4年生の息子がお芋掘りをして、それはそれは立派なお芋を持って帰って来たのです。この経験に裏付けされた推理に一緒に働いていた先輩も「成る程ぉ~!」と感心したような声を上げます。最後の最後で良い仕事をしたと私も誇らしいです。
そんな業務以外の部分で満足感に浸り、旦那のお迎えで帰宅しまして、うがい手洗いを済ませてお風呂の準備をしておりますと――、
旦那「そう言えばさ、こないだ娘の学年だよりに今週か来週辺りに芋掘りするって書いてたじゃん」
旦那がそんなことを言い出しました。ああはいはい、そんなことも書いてあったわね、なんてのんきに返します。
旦那「明日だって」
宇部「!? え? あ、あし、明日?!」
旦那「うん、なんか明日天気良いからって」
宇部「えっ、嘘。じゃあ軍手――、あっ」
さっきのママさん、もしかして娘と同じ学年のお子さんのママさんだったんじゃない? そりゃあ今週か来週に~なんてざっくりした予定だったやつが「はい、明日やります!」ってなったらそうなるっつーの! いや、それを見越して準備しとけって話ではあるけどね?!
幸い、宇部家は旦那の仕事柄、軍手が常にあるお家なので、それを持たせることが出来ました。
ただ、まぁ、もちろん大人用なんだけど。ごめんな娘。
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