第1332話 その香りは

 私ね、金木犀の香りがわからないんですよ。

 金木犀といえば、めちゃくちゃ良い匂いのする花を咲かせる木じゃないですか。あれってね、北海道にはなくて。


 だから、漫画とか小説とかでね、金木犀の香りがどうたらこうたらってのがもう全然ピンと来ないわけです。それなのに実は今回のカクヨムコンの新作に金木犀をちょこっと出してしまったこともあって(ほんとにちょこっとではあるけど。知りもしない癖によく出したな)、一体どんな香りなのかな、って興味津々でして。


 なんか手軽にその香りを試せるものはないかしらって色々検索してたら、香水の広告とかバンバン表示されるようになったりしました。たぶん一番入手しやすくて試しやすいのがボディソープ(期間限定っぽい)だと思うんですけど、ウチ、固形石鹼派なんですよ。ボディソープって、流しても流してもぬるぬるしてる気がして嫌なんですよ。それが潤いですって言われたらそれまでなんですけど。


 それでですね、そういえば、秋田にも金木犀って自生してるのかな、って思ってですね。私、内地だったらどこでも生えてると思ってたんですけど、近くでは全然見かけないし、もしかしたら東北、しかも秋田はギリ分布してない可能性もあるじゃないですか。そう思ってですね、旦那に聞いてみたんですよ。金木犀って秋田にも生えてる? 嗅いだことある? って。


 そしたらね、「あるよ」って即答だったんですよ。


宇部「そうなの?! なんかさ、すごく良い匂いなんでしょ? 私嗅いだことないからさ、どんな感じなのかなって」

旦那「えっ、うーん……なんていうか……」

宇部「何かいまさ、香水とかも金木犀の香りって出てるんだよ。ちょっと気になっててさぁ(自作に出してるから)」

旦那「えっ、香水? うーん、でも、あれはさぁ、その」


 何かね、反応が微妙なんですよ。何かモゴモゴしてる。

 何だ、もしかして旦那の好きな匂いじゃないのかな? だとしたら、私から香っていたら嫌かもしれないよなぁ。


 そんなことを考えておりますと。


旦那「あれは、その、あれでしょ。その、えっと、男の匂い、っていうか、その」

宇部「男の?!」

旦那「男の、その、アレの匂いのやつでしょ」

宇部「良夫さん、それは……その……栗の花だよ。違うよ。金木犀じゃないよ」


 珍しいことに、旦那が勘違いしています。いつだってその幅広い知識で私を教え導いてくれた旦那が。


 実際に栗の花を嗅いだことはないんですけど、昔、椎名林檎嬢が『加爾基カルキ ○○自主規制 栗ノ花』というなかなか刺激的なタイトルのアルバムを出したことで知ったんですよ。何か全部同じ匂いがするんだよ、みたいな、そんな理由でのタイトルだったんじゃなかったかな。


 もうね、慌てて否定しましたよ。当社比二倍くらいの強さで否定しました。

 普段はね、間違っててもそこまでがっつり指摘しないんですよ。もっとやんわり、「いや~、それって○○とかじゃない? 何かそんな感じで聞いた気がするなぁ。うん、まぁ、私も自信ないんだけど」みたいな言い方をするんですけど、こればかりはね? しっかり否定しとかんと、旦那の中で、


 『男性のアレの香りを身に纏いたいアラフォー妻(たぶん世間一般では熟女枠)』になってしまうんですよ! とんだハレンチ妻の爆誕ですよ! 普通に嫌だよ!


 そしたらですね、旦那も「えっ、そうなの?! ちょっと調べてみて?! 俺、男のアレの匂いだと思ってた!」って。そんでいつもなら即スマホで調べるんですけど、ちょうど旦那のスマホを子ども達が使っていたものですから、何か私のスマホで調べる流れになってですね。どれどれ仕方ないなぁ、ってクロームさんを開いたら、旦那がそれを覗き込んで来ましてね。


 ヤバイ、検索履歴見られる! 私最近何調べたっけ?! 何か創作関連でとんでもないこと調べてない?! って変な汗かいたんですけど、その時に一瞬表示されたのがこちらです。

 

安倍晴明

我思う故に我あり 誰

神社 各部名称

ハリオ コーヒードリッパー

スコーン 有塩バター


 セーフ!? これはセーフでしょ!

 安倍晴明くらい誰だって調べるだろうし、我思う~、は旦那と「これって誰の言葉だっけ? デカルト?」って会話の流れで検索したやつだし!


 神社、は……まぁ、神社のことだって気になるよね?! アラフォーともなれば嗜みとして、参拝のルールとか定期的にチェックするしね?!(しないか)


 とりあえず、金木犀は良い香りの木であって、決して男性のアレの香りではない、ということはわかってもらえました。


 宇部夫妻は大人なので、このようなR18のトークも普通にします(言うほどR18かな?)。

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