第1166話 宇部夫妻会議

 たぶん全国的とかじゃないと思うし、何ならウチの地域、ウチの小学校だけかもしれないんですけど、なんかね、学年のあだ名? みたいなのがあるんですよ。


 例えば、二年生は『きらきら学年』とか三年生は『さわやか学年』とか。もちろんこれは適当に考えましたので、実際のものとは違いますけど。息子が入学した時もですね、入って一週間くらいしたら「学年の名前を募集します。○日までに提出してください。尚、他の学年はこんな感じです〜」みたいなプリントをもらってきまして。


 これがね、まぁ大体四文字なんですよ。そういう縛りがあるわけではないんですけど、何でしょうね、言いやすいのかな。


 それでですね、まぁ各家庭一案は出さないといけないものですから、息子の時に引き続き、宇部夫妻による緊急会議が開かれたわけですよね。まぁ、会議っつっても、私はエアロバイク漕ぎながらなんですけど。真面目にやれよ。


宇部「『わくわく』とか『うきうき』なんてどうだろう」

旦那「いいね。でもなんかもうちょっとひねりが欲しいかな」

宇部「他の学年はどんな感じだっけ」

旦那「『ハピネス』に、『スマイル』……」

宇部「プリキュアじゃん! じゃあ『ドキドキ』とか『フレッシュ』で良くない?」

旦那「あるいは『マックス(『ふたりはプリキュアMaxHeart』より)』とか。でも、いまはジェンダーレスの時代だから、あんまり女子っぽい感じだとよくないと思う」

宇部「たしかに」

 

 こうなると、男子も女子も関係ない感じで考えなくてはならないわけです。


 ちら、と何かヒントはないかとテレビを見ますと、介護保険がどうたらら、みたいなCMが流れておりました。


宇部「『はつらつ』とかは? あと『いきいき』とか!」

旦那「何か一気に年齢上がった感じするの気のせい?」

宇部「気のせいではないですね。CMがほら」

旦那「あぁ――……」


 その後も流れているCM、机の上に置いてある漫画などからどんどん候補があげられます。


宇部「『まっしろ』は?(アリエールのCMより) ここからどんどん汚れていってね、みたいな」

旦那「汚れるのかよ! じゃ『ウルトラ』は?!(ウルトラマンの漫画より)」

宇部「めっちゃ強そう! いっそ学年だよりの書体もウルトラマンの書体にしてほしいけど円谷プロが怖い! あ、じゃあさっきの洗剤の感じで『アタック』なんか良いんじゃない?」

旦那「何事にもアタックする心……、良いかも! あっ、それなら『ハッスル』は? 元気いっぱいで。いや、いっそ『マッ……」

宇部「待て。マッスルは違う。良夫さんはピチピチの一年生をどうしたいのよ」

旦那「うーん、じゃあ『おかわり』! たくさん食べるように『おかわり』はどう?!」

宇部「それウチの娘だろ?! じゃあもうあれだ『もちもち』だ! それか『むちむち』!」

旦那「それもウチの娘だよ!」


 とまぁこんな感じで案はたくさん出したんですけどね。選びきれてないです。よそのお宅でもこんな感じで考えてるのかな。


 会話だけ抜き出すとかなり馬鹿みたいですし、ゲラゲラ笑ってますけど、我々は割と真面目に考えてます。これでも。

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