第1162話 結局家庭の味が強い

 これはですね、職場の人から教えてもらって知ったニュースなんですけど、何か、吉野家が炎上したらしいじゃないですか。


 何か、上京したばかりの田舎娘は吉野家をたくさん食わせて中毒にしたれ、みたいな。ちょっとマイルドな表現にしてますけど、何かこんな感じとのことで。


 これに限らずですね、ほら、政治家さんなんかもぽろっととんでもない発言したりするじゃないですか。そんでやっぱり炎上して謝罪して辞職したりなんかして、って。毎回思うんですけど、どうして問題にならないと思うんだろ、って。ちょっと考えりゃわかることだと思うんですけどね。ちょっと考えることも出来ないのか、それとも、気の利いたジョークだとでも思ってるのか、それはわかりませんけど。


 いや、それよりもですよ。

 私はね、何がびっくりしたって言うと、


 中毒になるほど吉野家って美味しかったっけ? って。


 いや、違うんですよ。美味しいですよ? 大丈夫、美味しいと感じる味覚はあるんですけど。


 私ね、吉野家の牛丼を食べたのは大学進学で札幌に出て来た時なんですよ。まさに田舎から出て来たばかりの娘、吉野家さんがおっしゃるターゲットですよ。こういうのを中毒にしてやれ、って話なんですよ。


 私の実家はですね、まぁ田舎なものですから、有名な外食チェーン店があんまりなくてですね、ケンタッキーとモスくらいかな。ミスドは一瞬ありましたけど、一瞬でしたね。ケンタッキーも潰れたんだっけか。とにかくそういう感じだったので、吉野家とか憧れではあったんですよ。みよしのの店舗(北海道の餃子チェーン店)もなくて、みよしのの餃子はスーパーでチルドのを買うしかなくて。


 そんな感じでいざ札幌ですよ。

 すごい! 吉野家もみよしのもある! えっ、なか卯って何?! ココイチもあるじゃん! 札幌都会ってすごい! ってな感じで、もうウッキウキですよ。


 そんで、吉野家の牛丼を食べたわけです。当時は確か華原の朋ちゃんが牛丼のツユダクが好きだとか言っててね、よし、それなら私もツユダクだ、なんつって。で、食べたらですよ。


 何ていうか……こう……思ってた味と違って。

 実家の母さんが作った牛丼の方が万倍美味くね? って。


 いや、単に個人の好みの話なんですけど、実家の牛丼は甘いんですよ。甘じょっぱい系の牛丼なんです。例えるなら、すき焼きの味っていうか。だけど、吉野家もすき家もそうですけど、甘くないんですよね。しょっぱい系っていうのかな。牛丼って甘いものだと思ってたから、ショックで。


 初めてマックを食べた時も衝撃でしたよ。何せこちとらモスしか食べたことなかったんですから。あとはスキー場にある自販機のハンバーガーみたいなやつとか。


 何このぺったんこのハンバーガー! って。モスの方が美味しいじゃん! って。


 だけどね、食べ続けるうちにまぁ美味しく感じるから不思議ですよね。慣れたんでしょうね。

 

 結局、慣れ親しんだ実家の味が一番ってことでですね。吉野家とかすき家の味もいまでは美味しく感じるんですけど、最初の頃は「何でみんなこれをそんなに美味い美味いと食べているんだ」って思ってましたから。


 だけど、実家では普通に餃子はみよしののチルドのやつだったので、初めてみよしのの店舗の方で食べた時はどえらい感動してしばらく通い詰めましたね。実家で食べたやつのさらに美味しい餃子、みたいな感じで。 

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