第1022話 それは伝わらなかった
本日は私の最愛の人、『良夫(仮名)さん』についてお話したい。
結婚して11年、お付き合いも含めると15年くらい一緒におりますと、そりゃあもうツーと言えばカーな関係になるわけです。
彼は私がその名を呼んだだけで、次に続く言葉をズバリ当ててきたりします。
宇部「良夫さん(お腹空いたなぁ)」
旦那「おっ、そろそろご飯にする?」
宇部「良夫さん(アイス食いてぇ)」
旦那「そうだなぁ。今日はアイスだなぁ」
宇部「良夫さん(耳かきしてくれ)」
旦那「良いよ、はい(耳かきを持ち、正座待機)」
普通耳かきは妻がやるものなんじゃないかとか思われた方もいるかもしれませんが、私がやったら多分旦那の鼓膜全部死にますから。もう絶対に無理。
何でわかるのか謎なんですけども、旦那になぜわかるのか聞いたところ、聞いてくる時間帯と声のトーンだそうです。完全にあれですよね、赤ちゃんの泣き声でおむつかミルクか当てる感じ。
ちなみにね、逆はほぼ当たりません。
ほんと情けない話ですけど、私はまーったく当たりません。何なら我が子の泣き声判定の方もほぼほぼ泣き声以外のところでしてましたから。時間と臭いに頼ってましたね。泣いたらまずケツを嗅ぐ。駄目なママですわ。ほんとに皆泣き声で聞き分けてるの? すごくない?
それでですよ。
もう皆まで言わずとも伝わっちゃうものですから、割とそこにあぐらをかいていた部分があったというかね。彼は私のことを何でも知っているんだ、みたいな。
お買い物をお願いしてもですよ、パンとか牛乳の場合は「我が家はこれ!」みたいなのがあるじゃないですか。それを買ってきてくれるのはまぁ当然として(と思ったら、そうでもなかったりするらしいですね)、例えばお菓子とかね、翌日の職場に持ってくお昼ご飯用の菓子パンをお願いしたりすると、「これ好きそう」みたいな感じでドンピシャのを買ってきてくれたりするわけです。
もうね、この人は多少説明が足りなくても愛の力(あとたぶん経験とか)で補ってくるんだな、って。某勇者王のアニメでいうところの、ファイナルフュージョンの成功率が限りなく0でも、後は勇気で補ってどうにかする方式。
とまぁそんなこんななある日ですよ。
私が愛用しているビニール袋が切れちゃいまして。
私ね、あのスーパーのサッカー台に設置されているビニール袋みたいなやつをよく使うんですよ。と言ってももちろん、あのトイレットペーパーみたいな状態のやつじゃなくて、200枚くらいがパックになってるやつ。こっちのイメージはティッシュペーパーでしょうか。一枚ずつ取り出せる(だけど静電気のせいで一枚ずつは取り出せない)、とにかくそんな感じのやつです。
宇部家にはね、生ごみを入れる三角コーナーがないんですよ。あれすごく嫌で。なので、調理台の上にそのビニール袋を広げておいて、調理で出た生ごみは全部そこに入れます。
これは完全に私の持論なんですけど、生ごみって、三角コーナーに入れるから生ごみっぽくなるんですよ。あそこ、さんざん水を被るじゃないですか。濡れると生ごみ感が増すんですよ。だから、野菜はキッチンペーパーの上で皮をむいて、それに包んでぎゅっと絞り、そのビニール袋に入れるわけです。で、調理が終わったら、その袋をギューッと絞って空気を抜いて、ぎっちり口を縛って、捨てる。ウチの市は生ごみも燃えるごみなので。
それ以外にも、買ってきたお肉を小分けにして冷凍するのにも使います(食品OKのやつです)。
そんな感じでとにかくよく使うんですよ。
それが切れちゃって。
これは死活問題ですから。
なので、お遣いに行くという旦那に、これもお願い、ってな感じで言ったんですよ。
宇部「私の好きなビニール袋買って来て」
口に出した瞬間、「あっ、さすがにちょっと間違えたな」って思ったんですよ。よく使うけど、別に好きなわけではないな、って。案の定、旦那も「ビニール袋に好きって感情、何?」みたいな顔してましたから。
なので、
宇部「ごめん、間違えた。別に好きなわけじゃないわ。好きとかじゃなくて、私がよく使うシュッシュって感じのビニール袋」
そう訂正したわけです。よし、これで伝わるぞ、と。
旦那「え? え? 松清子が好きなビニール袋? ああでも、好きってわけじゃなくて? え? 何? ごみ袋(市の指定ごみ袋)のこと?」
もうね、びっくりするほど伝わらなくて。指定ごみ袋のことそんなに愛してねぇよ。
伝わらねぇ伝わらねぇ。
普段は、もっと難解なやつをばしーっと読み取って来るくせに、ビニール袋に関しては、もう1mmも伝わらなくて。
いまだにね、ビニール袋をお願いするとこの話をぶり返されますね。いやぁ、「私の好きなビニール袋買って来て」は難しかったわ、って。
ごめんって。
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