第895話 平和
こないだですね、台風が来る、って話になって。話になって、ていうか、発生した台風がそろそろ東北に上陸しまっせ、て。
内地に住んで早16年くらいになりますが、いまだに台風には慣れませんね。慣れるものでもないですけど。なんていうんでしょう、とにかく何をすればいいのかわかりません。
漫画とかアニメだと、やたらと窓に板を打ってるイメージなんですが、さすがにそれほどではないですし。というか、秋田県の場合もそうそう直撃ということがないものですから、ちょっといつもより雨と風が尋常じゃないとかそういうやつなんですけど、そうやって油断してたら一度ガチで直撃します、なんてこともありましたし。
とにもかくにもですよ。
今回もおそらくはそこまでのやつではないと思いつつも、ここ最近はただの雨でもとんでもない災害に発展したりしますからね、気は抜けないわけです。とりあえずその時私に出来ることといえば、家中の窓を閉める、歩いて仕事に行く、ただそれだけだったわけです。
愛車(自転車)を置き、傘を持っていざ
ドアを開けた瞬間、「全然台風来る感じしねぇなぁ」と思い、「一か八か自転車で行くか……?」などと持ち前のギャンブル精神が顔を出しましたが、いやいや、さすがに一か八かすぎるだろ、と押し止め、多少どよんとした空の下、徒歩5分の職場へと向かいました。
この時点で、我々宇部夫妻がもっとも信頼を置いているYahoo!天気さんの雨雲レーダーの『8時から雨が降ります』が全く当たっていなかったのですが、まぁそういうこともあらぁな、くらいの気持ちでした。
さて、お仕事開始です。
その日はなかなか忙しく、天気を気にかける余裕もあんまりなかったんですけど、トイレに行く途中でちらりとガラス窓の向こう側を見れば、空はどよんとしているものの、地面はからりとしています。
おかしい……。
そう思いながら休憩時間になりまして。
旦那も「今日台風来るなら仕事にならないなぁ、どうしようかなぁ」などと言いながら出勤したのですが、この様子だと普通に働いてるんだろうなぁ、と思いつつ、休憩時間が一緒の先輩とぽつぽつ世間話。
宇部「台風来ませんね」
先輩「そういえばそうだね」
宇部「私、台風来ると思って徒歩で来たんですよ」
先輩「あちゃー」
宇部「でも13時から降るって話ですから!(雨雲レーダーの画面を見せる)」
先輩「ほんとだ! これは降るね」
宇部「ですよ。ああ、歩いてきてヨカッター」
で。
13時になったわけですが、まったく降る気配もありません。
確かに空はどよんとはしてるんですけど、雨雲っぽくはないといいますか。ただの曇りというか。
いや、気を抜くな。
これからザーザー降るはずなんだ。
傘は持って来たけど、もうばっさばっさ煽られて、「んもー、傘の意味ないじゃーん」とか言いながら、べしょべしょになって帰るんだ。だから今日は買い出しにも行かないで、冷蔵庫にあるもので作るんだ……
……………………
………………
…………
……
結局、私の住んでいるところには一粒の雨すら降らず、しれーっと温帯低気圧に変わりました。
店内のテレビでもものすごく警戒を呼び掛けていたんですけどね。
あれは秋田県に対するやつではなかったのかもしれません。
そんなこんなで私は一度も開くことのなかった傘を腕に引っ掛けてスーパーに行き、徒歩なのであまり重いものは買わずに帰りました。
とんでもなく平和な一日でした。
何でしょうね、傘って使わない方が良いっちゃあ良いんですけど、使わなかったら使わなかったで、ちょっと悔しくなるんですよね。
ちっくしょう、って思って枝豆茹でましたわ。あれものすごいお塩入れるので、何かめちゃくちゃ悪いことしてる気がしてちょっと快感です。
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