第857話 どんな悪いことしたのよ

 最近の宇部家では、ちょいちょい貝のお味噌汁が出ます。私は貝が大嫌いなんですが、子ども達と旦那が好きなんですよね。私も貝の出汁は好きです。具はいらない。私だけ具なし味噌汁。


 なぜ私の子なのに魚介類が好きなのか、魚すら頻繁に出さないのに。給食で食べるからなんでしょうか。不思議と魚も貝も大好きな子ども達です。ミステリー。


 というわけで、安い時にアサリを買ってですね、砂抜きをするんですけども、まぁ恥ずかしながら、この年になるまで砂抜きなんて知識としては知っていてもやったことなんかほぼなかったわけです。


 知識としては~なんて偉そうに書きましたけど、あれね『塩水に漬けとけ』レベルですから。濃度がどうとか、どれくらいの時間とかそういうのはまるでわからずネットの力で頑張りました。


 そういや宇部実家では貝の味噌汁といえばシジミでした。砂抜き中のシジミちゃん達が白い実の部分をぺろっと出しているのが何か可愛くて、指でつんつんした記憶があります。


 そんで、実家だと買ってきたシジミは一回で使い切るんですけど、宇部家では多めに買って冷凍する感じです。貝が嫌いで敬遠しておりましたが、味噌汁の具としては大変優秀でして、砂抜きして冷凍してしまえば、いざ使うという時にはまな板も包丁もいらないわけですよ。


 味と食感では好きになれなかったけど、そういう部分で見直しつつあります。やるじゃん、貝。


 それでですよ、その冷凍&解凍(使用方法?)なんですけども。もう皆さんご存知かもしれないんですが、知らない方のためにちょっと偉そうな感じで書きますけど、これネットの知識なんで、間違っても「すごーい、宇部さん物知りー」なんて思わないようにお願いします。


 とにかく急速冷凍と急速解凍させるのが重要らしいです。ジップロックとかに入れて重ならないように平らにし、バットなどに入れて(冷気が伝わりやすいように)冷凍庫で一気に冷やせ、って。

 それで味噌汁なんかで使う際には、グッツグツの湯の中に凍ったままぶち込め、って。そしたら貝がちゃんと開きます、って。


 へぇー、なんつって、それを実践したらですね、冷凍の段階ではぎっちり閉ざされていた貝がグッツグツのお湯の中でぱっかーんと開くわけです。すっげー、って。


 でもね、思うんですよ。


 捕まえられてパック詰めされて、なーんか海っぽい濃度の塩水に漬けられてね、あーいい感じだわぁ、っつって砂吐いてたらいきなり冷凍ですよ。えっ、何何!? って思う間もなく(あるかもしれないけど)コールドスリープさせられて、次の瞬間には熱湯コマーシャルって。しかもガチの熱湯な。


 そりゃあ助けてくれぇ、って貝も開きますわ。


 よくよく考えたらですね、生きている状態でご家庭に迎え入れられる食材ってあんまりないよな? って。釣りが趣味の方はよくあるかもですが。だいたいのものって死んで加工済み(言い方よ)じゃないですか。まぁアサリにしてもですよ、冷凍の時点で死んでるのかもしれないですけど、少なくとも砂抜きの段階では生きてるんですよ。水をぴゅーって吐くところも見ましたし。


 極寒地獄からの熱湯地獄って、お前何、前世で人でも殺したんか。どんだけ悪いことしたらこんな仕打ちを受けるのよ。


 ただね、そんな残酷な事実も知らずに子ども達は貝を美味そうに食うんですわ。弱肉強食だからね、仕方ないね。


 ママはね、可哀想で食べられないわ。

 

 嘘。

 普通に貝が嫌いなだけです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る