第830話 知らなければ良かった
あなたに出会わなければ良かった、とかね、そういうのあるじゃないですか。あなたに出会わなければ、こんなに苦しい思いをすることなんてなかったのに、みたいな。
まぁもちろん、そんな話ではないんですけど。ないのかよ。
私はですね、まぁとにかく不器用な質でして、自分が『これ』と決めたやつから逸れると駄目なんですよ。
それは、調味料とか皿の置き場所であったり。
朝に回す洗濯機に入れるタオルの枚数は○枚なんていう細かいやつだったり。
営業時代、基本のマニュアルを自分が喋りやすいように手直ししたトークであったり。
一時、『大人の発達障害』みたいな言葉が流行った(流行ったわけではない)じゃないですか。我々が子どもの頃はそもそも『発達障害』みたいな言葉がなくて、大人になってから気付いた、みたいな。
割と当てはまるところがあったので、もしかしたらそうなのかもなー、などと思ったりするわけですけど、特に生きづらさを感じたことはないので(コミュ障ですけど)、どっちでも良いかな、と思っています。
そう、それでですよ。
やり方を変えるとアウトって話なんですが、かといって社会に出ていれば、周りに合わせて変えざるを得ないこともありますし、メディアなんかで「本当はこれが正しいんですよ」みたいなのが紹介されると、それじゃあ正しい方に変えないとなぁ、みたいなことになるわけで。
さぁ、安定の長い前振り(残念、宇部ッセイでは短い方です!)ですが、今日お話したかったのがですね、卵の割り方なんですよ。えっ、たかだか卵の割り方でこんな騒いでんの、この大人!? ってドン引かないでください。宇部さんはいつもこうじゃないですか。
卵を割る時、どこでコンコンするか、ってやつなんですよ。多分母親がそうやってるのを見てだと思うんですが、私は調理台の角とか、ボウルの縁とか、とにかくそういうところでコンコンしてたわけですね。
だけれども、もう5年は前になると思うんですが、
『卵は平らなところでコンコンしないと殻が入る』
みたいなのを漫画で読んだんですよ。旦那もだよねーとか言ってましたし。えっ、マジで?! それじゃいままでどんな思いで私の卵コンコン見てたの?!
確かに稀に殻は入っちゃうけど、それはもう仕様だと思ってたよ! 稀だしね?!
そっか、平らなところでコンコンすれば入らないんだ!
というわけでですね、それこそ20ウン年の手法を変えてですよ。平らなところでコンコンしてみたんですよ。
入るわ入るわ。
角でコンコンしてた時より入るんですよ。
ていうかそのコンコン、何なら、ヒビを入れるレベルじゃなくて、軽く潰してる感すらあるわけです。
だってね、角でコンコンなら入るヒビは線なんですよ。それが面でコンコンしてるわけですから、広範囲にヒビが入るわけですから。そりゃあそうですよ。そりゃあ入りますって。
だけどそれはあくまでも私がまだ下手くそだからなんだろうな。
そう思って、慣れればちゃんと出来るんだ! って思いながら、それからも平らなところでコンコンしてたんですけど。
一向に改善されないのです。殻が高確率で入る入る。
もうこれはアレだ。私には無理なやつだったんだ。そう思って角コンコンに戻したんですよ。
そしたらね、もう角でコンコンするやり方も忘れてしまって。いや、完全に忘れたわけじゃないんですけど、力加減とか角度とか多分あったんでしょうね、それまでに確立してたやつが。そういうのがすぽーんと抜けてしまったみたいで。
平らな面でコンコンしたばかりに、私はもう角ですら上手く卵をコンコン出来なくなってしまったんですよ。朝の目玉焼き、結構な確率で殻も入るし(箸で取り除きます)、気をつけてゆっくり割ると今度は黄身も破れちゃったりして。
だからね、知らなきゃ良かったな、って。
平らな面でコンコンするやり方と出会わなければ良かったな、って。
まだ朝の目玉焼き程度なら良いけど、ハンバーグとかそういうのに乗っける系のやつの黄身が割れるのはマジで勘弁してくれ。
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