第730話 平成キッズ

 いまクイズ番組でですね、なんていうかこう、平成生まれの若者が案外知らないことをネタにした内容のやつがあるんですね。あんまり見たことがないのでちょっとうまく説明出来ないんですけど、


 鶏肉って、何の肉? みたいな。


 いやこれ、平成生まれがどうこうって話じゃないんじゃない? と思うわけですけど。昭和生まれだからわかる、っていうのは、それはアレかい? アンタら昭和世代は日常的にご家庭で鶏絞めてたでしょ、ってこと?


 さすがにウチの田舎でもねぇよそんなイベント!


 まぁ、ウチのパパン世代はあったみたいですけどね。それを見てしまったばっかりに、ウチの繊細なダディは鶏肉が食べられなくなったもんですから。そんな繊細な心であの激動の昭和をよく生き抜いてこれたな、あの坊ちゃんは。


 とまぁ、そこまで極端な話じゃなくてもですよ。

 単純に、我々の時代ではそれが主流だったけど、彼らの時代には廃れてしまっているものというのがあるわけで、見たこともなければ触ったこともないようなものを、「え~、こんなのも知らないの~?」って言うのはさすがに酷ですって。


 よく聞くのが、缶ジュースの蓋ですよ。

 私達(アラフォー)が小さい頃は缶ジュースの蓋は取れるものだったのです。あの蓋がまた、危ないんですよ。飲んでる最中どこに置いときゃ良いのよ、って。良いこと思いついた、とか言ってその蓋を缶の中に入れてる子がいましたね。そしてそのまま飲むんですよ。絶対に危ないやつだから決して真似してはなりません。馬鹿か。良いこと思いついた、じゃねぇよ。


 あと、ダイヤル式の電話とかね。まさかあの数字のところに指を突っ込んでぐーるぐーるするなんて夢にも思わないんでしょうね、数字のところを一生懸命押すらしいです。まぁわからなくもないです。まさかそんなトリッキーな動きするとは思いませんって。


 それでですね、知り合いの方が言ってたんですけど、平成生まれの我が子が、缶切りを使えないことがわかった、って。


 確かにこれも平成――いや、令和となったいまではあんまり使わなくなったものかもしれません。たいていのはほら、パカっと開けられる感じになってるじゃないですか。先日、手作りのたけのこの缶詰をいただきまして、まず缶詰って手作り出来るものなんだ! ってびっくりしたんですけど、それはまぁ置いといて、その缶がですね、缶切りがないと開けられないタイプだったんですよ。


 昭和生まれの私でも苦戦しましたから。

 いや、確かにね? 開け方はわかる。缶切りの使い方もわかってる。だけど、それを使ってちゃんと開けられるか、ってのはまた別の話なわけ。もうえらい時間かけてね、周囲をたけのこの汁まみれにしつつ、やっと開けられたわけですよ。


 もしもの時にはね、そういう技術がある方が良いんだってわかりますよ。

 だけどね、世の中ってのはどんどん便利になっていくんですから、それが廃れるっていうのはイコールそれだけ色んな人が便利さを求めた結果なわけですしね、それで全然良いんじゃないかな、って。


 たけのこの汁を拭きながら、そんなことを考えた次第でございます。

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