第612話 大学時代のアルバイト

 大学生の時に、すすきのでアルバイトをしてたんですよ。

 すすきのと言いますと、恐らく大抵の人が耳にしたことがあるであろう北海道最大の歓楽街です。眠らない街、すすきのですよ。歌舞伎町もなかなか眠らない街らしいのですが、すすきのの眠らないっぷりも相当なものです。


 さて、そんなすすきのにあるそこそこ老舗のお菓子屋さんで働いていたわけですが、さすが眠らない街のお菓子屋さんだけあってですね、閉店時間が確か0時くらいだったんですよ(いまは知りませんが)。買いに来るお客さんも、夜が更ければ更けるほど、『それ系のお店に持って行くんだろうな』的な雰囲気でした。何なら、『それ系のお姉さん』に買って渡しているサラリーマンのおじ様も多かったです。


 日中は観光客ですね。

 日本人もそうですし、外国の方もたくさんいらっしゃいました。いまはどうかわかりませんけど、私が働いていた十数年前は、遥か遠くに見える団体様が日本人か外国人か、すぐにわかったものです。アジア系の外国人の方々は、お召し物がパキっと原色系なんですよね。若い女性のヘアスタイルはストレートのロングが多かった印象です。そんで、男性は割とずんぐりしていて、この彼女(奥さん)に、この方?! と思うような(失礼)、少々年齢も高めな感じでしたね。


 あと、お店の外に置いてある灰皿の上に試食のゴミ等を置いていくのもやはり外国の方でした。ゴミ箱だとわからなかったのかもしれません。お子様達は自動ドアを開閉させて遊ぶので、夏はまだしも、冬はほんとヤメロ! マジで死ぬ! って思ってましたね。



 さて、そんなバイトの仕事内容の中に、『配達』というのがありまして。

 歩いて届けられる範囲限定、というか、常連さん限定のようなシステムではありましたが、スナックのママから、定期的に電話が来るわけです。


「○○(店名)だけど、2つね」


 と。

 そこのママのオーダーは決まっているので、問題は個数のみなのです。注文が入りますと、きちんと紙袋に一箱ずつ入れ、小走りで眠らない街を駆けるのです。夏も、雪の降る冬も。履いてる靴なんて、底がつるつるのローファーなんですけど、それでも走るのです。割とロードヒーティングが頑張っていてくれているので何とか走れるのです。まぁ、それでもぶっちゃけ氷が張ってたりするんですけど、こちとら生まれも育ちも北海道のうんと北の方! 札幌の雪なんて可愛いものです。とりあえず、配達ですっ転んだ記憶はありません。


 そして、そのスナックへの配達では、


『決して、配達している姿を見られてはならない』


 という決まりがありました。

 我々配達担当はサンタクロースです。

 指定された小部屋に紙袋と納品伝票のみを置き、そそくさと退散します。サンタクロースというか、忍者かもしれません。ちなみに、支払いはツケのようでした。


 常連さんの中には普通に手渡しでその場でお支払いパターンもあったんですが、そこのママだけはそういうシステムでした。


 さて、そんなこんなで閉店時間近くになりますと、謎の10分休憩がありました。これは本当に謎で、そこで10分休むことに何の意味があるのか最後までわかりませんでしたが、その日が店長とのシフトだと、そこで必ず120円くれるわけですね。

 近くの自販機でジュースでも買いなさい、という。


 いや、ありがたいんですけど、10分なんですよ。

 その近くの自販機まで走って買って、そんで戻ってバックヤードで飲むんですよ。もう一気ですよね。どう頑張っても350ml缶は飲みきれないので、缶コーヒー一択でした。そんで、それをガーッと飲んで、ぷはー! ってやって、それから閉店作業するわけです。


 そんで、ぜいたくにも、帰りはタクシーでした。終電ないので。

 店長も含め、社員さんは全員女性でしたので、仲良く相乗りで帰ります。

 正直その空間も苦痛でですね、ほら、何せコミュ障なもので。


 そこは就職を機に辞めたんですけど、お菓子に囲まれて働けるのは良かったですね。新商品の試食とかねウフフ。

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