第607話 しりとり

 子どもからするとただの遊びだと思っていることでも、大人から見ると、これって勉強だよなぁ、って思うことというのがあってですね。


 それが、かるたとか、しりとりだと思うわけです。

 かるたは字が読めないと出来ないわけではないですけど(絵が描いてるから)、字が読めれば初見の札でも取れますし、あとは何だろう、俊敏さを磨く、的な?


 それと、しりとりは言葉をたくさん知ってる人が強いですよね、もちろん。それと、例えば同じ言葉で攻めてやろう、みたいな作戦とか、そういうのも頭を使いますし。


 あとはまぁ、記憶力っていう点では神経衰弱とかもそうですけど、まぁとにかく、子ども達が何気なくやっている遊びでも親としては、


「いつのまにこんなに字を覚えたの?!」ですとか、

「すごい、子ども達だけでしりとりがこんなに続いてる!」みたいな、


 そういうことでもいちいち感動したりするわけです。


 そんで、娘はやはり身近にライバル(兄)がいるわけですから、負けたくなくて頑張るわけですよね。まだまだかるたなんかはハンデが必要(兄さんは2枚取ったら一回休みになる)だったりするのですが、しりとりですと、おしゃべりが達者な娘の方に案外軍配が上がったりするのも面白いです。


 ただ、兄さんの場合はあれですね。

 マイナーな怪獣の名前とかでもイケますからね。


 そうそう、マイナーな怪獣といえばですよ。

 先日図工の時間で、ころころおもちゃを作る、みたいなのがありまして、家からトイレットペーパーの芯ですとか、古電池ですとか、そういった材料を山ほど持たせたんですけど、その日の連絡帳に、


『息子君は、今日の図工もとってもがんばって、ダダ(たぶんメジャーな三面怪人)、バルタン星人(確実にメジャーな星人)、そして、ムルチ(たぶんマイナーな怪獣)を作ってました!』


 って書いてましたね。


 ム ル チ ! 


 いや、このメジャーとかマイナーっていうのは完全に私の主観ですので、ダダなんて知らねぇよ! って人もいるでしょうし、ムルチなんてめちゃくちゃメジャーだろ! って思う方もいるかと思うんですけど(でもバルタン星人は絶対メジャーだと思う)。いや、ムルチって。ムルチはマイナーでしょ。先生もわかってて書いたのか、それとも息子が教えたのか。


 というね、とにかくまぁ、そのレベルの怪獣も知ってる息子なわけですから、その辺もOKにすればそこそこ強いわけです。まぁ、怪獣といってもですよ、カテゴリとしては『動物』っていうのと同じですからね。そこからさらに細分化して『パンダ』や『ウサギ』となるわけですから、『ダダ』とか『ゴモラ』とかを出しても良いでじょ、ってなもんです。でも、まぁ何となく、それは反則じゃね? みたいな雰囲気ありますよね、そういうのって。


 そうそう、それはそうと。

 娘ちゃんのしりとりなわけです。


 先述の通り娘ちゃんはおしゃべりが達者という点で兄を凌駕しておりまして、そのボキャブラリーも中々のものなのです。


 先日、いとこの男の子とのしりとりでですね、『む』をパスされた時の娘の返しがなかなか秀逸だったわけです。


「『む』? えーと、何があるかなぁー、あっ、わかった! 『むくち(無口)』!」


 ――無口?!


 そんなチョイスある?

 虫とか、婿とか、鞭とか、ムヒ(商品名)とか、村とかあるじゃん?

 何なら、『蒸しパン』とか言って、「あー、『ん』ついちゃったー、アハハー!」っていうのが幼児のしりとりなんじゃないの?


 それなのに、『無口』! 無口がOKなら、無味とか無風とか無理とかそういうのもありになっちゃうけど!?

 

 もうね、大人達はざわつきましたね。

 5歳の口から出る単語じゃねぇし、お前の口から出るべき単語でもねぇ(無口とは無縁の娘)。


 そして、さんざんざわつかせた後、しばらくして『ち』のパスが回って来まして、


「ち〇こ」


 とド下ネタをぶっ込んできました。

 

 えっ、ちょっともうほんと止めて? ママ、まだあなたにはそういう言葉使ってほしくないし、言うなら最後『ん』で終わる方の表現にしてほしかったっていうか、まぁそれだとしりとり負けちゃうけどさ。何、5歳児ってそういうの口にしちゃうの? 女児でも?!


 ていうか、それ保育園で言ってたりしないよね? ね?

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