第601話 恋する娘

 齢5歳にしてお肌(主にほっぺの)を気にする未来の大女優の娘ちゃんなんですが、実は彼女にはもう2年くらい好き好き言っている男の子がおります。


 ちなみに彼女が恰好良い恰好良い連呼するキャラは『忍たま乱太郎』の『立花先輩』です。サラッサラのストレートヘアーを持つ、何か火薬を使うのがうまい上級生です。ちょっとクールな感じと思われますが、だいたいレギュラーメンバーにもみくちゃにされてるイメージしかありません。

 

 さて、そんなロン毛の上級生が好みの娘ちゃんですから、気になるあの子もきっと年上のクールな男子(さすがにロン毛の男の子はこの辺にいない)だろうと思われたでしょう。ところがどっこい。


 めちゃくちゃ同い年です。上級生のかけらもありません。

 めちゃくちゃ短髪です。さらりとなびきません。

 そんでもってクールでもありません。めちゃくちゃ明るい子です。


 エ――――!? 

 お前それでもまだ立花先輩恰好良いとかいうの? 彼、どちらかといえば乱太郎の方だよ?


 二次元は二次元、三次元は三次元ということなのでしょう。さすがは我々の子、二次元に推しがいながらも、それはそれのようです。


 もう彼女の中で結婚は確定らしく、どんな式にするとか、そんな話にまで発展しています。こういう話になると、


「そんな! 娘ちゃん! パパと結婚するって言ってたじゃないか! 結婚なんてゆるさーんっ!」


 というのが男親のあるべき姿(?)だと思うのですが、旦那はそんなことありません。


「よしよし、頑張れ娘ちゃん。しっかり捕まえとけよ」


 相手の親御さんのことも知ってますし、その子のことも知ってます(何せ同じ組)ので、むしろ頑張れの姿勢。


 そういや息子もこれくらいの時、女の子達の間で「わたし、○○くんとけっこんするー!」が流行りましたからね。やはり娘にも来たか、という感じです。


 一応相手の方でもOKをもらっているので、二人はいま婚約状態。いやー、将来安泰ですわ。その子の家も近いし、すぐ帰って来られて良いわねー、ってなものです。


 そして娘ちゃんは愛する○○君のためにお手紙を書くのです。にやにやしながら、ところどころでたらめなひらがなで、一生懸命です。


「パパー、ここに『か』って書いて!」


 自信がない字はパパの手も借ります。


『パパー、ここに『て』って書いて!』


 パパに書かせるの多くない? と思いつつ。


 もう何往復もし、いっそここでパパに書かせりゃ良いじゃんの言葉をあと一歩で口に出してしまいそうになったその時です。相変わらず一文字ずつ書かされていたパパが「ううん!?」とか言い出しました。


「娘ちゃん! これあれでしょ? 次『る』でしょ!? もう書く? パパ、ここに、『る』って書く!?」


 どうやら娘、いっちょまえに『あいしてる』とパパに書かせる気だった模様。いや、それほとんどパパが書いてるからな? ゴーストライター有りのラブレターって何。


 そんで、書き上がったお手紙にべったべったと糊を塗り、たぶん二度と開けられないレベルに封印した挙げ句、ウチの郵便受けにIN。


 娘のアイラブユーは永遠に届かないようです。いまも郵便受けに入ってます。

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