第553話 上手く切り替わっていない

 気持ちの切り替えがですね、基本的に私は下手くそなんですね。怒りもそうですし、悲しいことがあった時なんかも、ずーっと引きずるタイプ。


 先日ですね、ラーメンサラダ(宇部家夏の定番メニュー。冷やし中華の具をお好きなお野菜にしてドレッシングでいただく)を作ろうと思って、キュウリとトマトを買ったんですね。いやぁ、最近はお野菜が高いですわ。本当はここにレタスも入れたいところだったんですけど、レタスが一玉で200円超えとか! いやいや庶民には無理でしょ。こんなの買えるの貴族様だけでしょ? ということで断念しまして。


 レタスがないならせめてトマトをちょっと良いやつにしようかな? と思ったわけですね。まぁ、ちょっと良いやつといってもあれですよ。所詮は私ですからね。そんな高級なやつではないです。ミディトマトですよ。いつもは安い大玉トマトか、安いプチトマトなんですけど、今日は、まんまる真っ赤っかのミディトマトで、200円以上するやつです。


 何でしょうね、レタスで200円強はためらったくせにトマトなら200円超えてもギリOKみたいなやつって。ありますよね、これにこの値段は無理、みたいなの。私、同じ200円でも、玉子だったら絶対買わないですもん。玉子は98円(税込み108円)の時に買うものなんですよ。たまに150円くらいでも買いますけど、200円はない。1つ20円の玉子とか高級すぎる。もったいなくて目玉焼きになんて出来ない。


 とまぁそんな経緯で、私にしてはちょっと奮発めのトマトを買って帰ったわけです。で、夕飯の仕度ですよ。キュウリを千切りにし、お次はトマトを――とパックを開けたらですね。


 ちょうど商品名のシールで隠れていた部分に、白い綿毛が……。


 カビ生えてたんですよ。


 えっ、これ今日買ったやつなんですけど? 売り場にまだたくさんあったよ? 私、その中からこのトマトを選んだの? 引きが強すぎる! 宝くじ買わなくちゃ! じゃなくて! 


 もうこれがショックでショックで。

 お野菜買う時って、一応吟味するんですよ? 傷んでるところないかな、とか、こっちのが青々してるな、とかね。そんでもちろんそのトマトもちゃんと自分で見て、チェックして、それで買ってるわけです。確かに問題のカビはシールの裏でしたから、開けるまではわからなかったんですけども。


 もうずーっとショックでですね。

 お風呂入っても頭の中はトマトでいっぱいなんですよ。良いんです、200円は、この際。その200円をレタス代に回せば良かったなとか、もちろんそんな考えもよぎりましたけども。


 結局私がこのトマト事件を乗り越えるのに丸1日かかりました。そんで、またこんなことを書いちゃったら思い出すんですけどね。ああ、トマトよ……。


 さて、そんな私と比べて、旦那は割と切り替えが早いタイプでして、その血を受け継いでいる子ども達はさらにその上をいくわけです。その速さたるやもう、韋駄天かな? ってレベル。


 しかし、そんな切り替え韋駄天の筆頭、息子君がですね。先日、その切り替え機能の方にバグが生じまして。


 もう夏休みは終わったっつってんのにですね、工作熱が冷めやらないんですわ。家にある段ボールやら何やらを使って次々と作品を作っているんですね。そのせいで頭の中がすっかり『工作モード』のようでして。

 そんで、先日の夕食時、あまりに熱中しすぎてギアが『お食事モード』に切り替わらなかったみたいで、空のコップをこちらに差し出して言うわけです。


「セロテープ貸してくださーい」って。


 セロテープ?

 何? コップにヒビでも入った? だとしたらセロテープ云々じゃなくて違うやつ使いなよ。


 と我々はしばしきょとんとしていたのですが、息子の方でも「あれ?」と思ったんでしょうね。僕が言ったの聞こえなかったのかな? って。


「ママ、セロテープ……あっ、違った。お茶ください」


 これは萌え。

 もう少し恥ずかしそうに言ってくれればさらに高ポイントだったんですけど、さすがにまだ7歳ですから。息子はもう普通に「えへへ、僕、まちがえちゃった☆」でしたから。それはそれで最高でしたけど。


 これ絶対どこかで使ってやるぞ、と母は心のメモ帳に書き留めましたよ。

 まぁ、ここでも書いちゃったけど。

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