第516話 子ども相手に

 Eテレってよく出来てるなぁ、って思うわけですよ。

 子ども達は帰宅しますと、うがい手洗いを済ませてテレビをポチっとするわけですが、当然のようにEテレなわけです。


 私の中でEテレというと、『おかあさんといっしょ』と『みんなのうた』『えいごであそぼ』くらいなものだったんですが、いまは、『おとうさんといっしょ』なんてのもありますし、英語のみならず『にほんごであそぼ』なんてのもあるわけです。その他、『ピタゴラスイッチ』や『ノージーのひらめき工房』など、見たら確実に「これやりたい!」が始まるやつなんかもありまして、ひらめき工房の工作程度ならまだしも、ウチでピタゴラ装置は無理だぜ? 


 最近は、『ニャンちゅう宇宙放送チュー』という番組の中で、色んな粘土作品を作る『おねんどおねえさん』なる人物がお気に入りのようです。このお粘土お姉さん、ひとみさんとおっしゃるのですが、もう雰囲気が可愛らしくてですね、お粘土をこねる様も何だかお上品でいらっしゃるのです。


 ただね、何がびっくりって彼女、私より年上! 普通なら『おねんどおばさん』の年齢ですよ。いや、けれども、彼女はお姉さん! 私のことはおばちゃんと呼んでくれても良い、ただ、『おねんどおねえさん』のことはお姉さんと呼んでくれ!

 

 もうね、こねてる時とか、すごいんですよ。声にちょっとエコーもかけてんのかな、そんでカメラの方もちょっとモヤをかけてる感じって言うんですかね、「こねこね~、こねこね~」って言ってこねてるだけなのに何かもうエロティック。これは世のお父さんも黙ってませんし、何なら私もそんな目で見てます。


 そんでアレね、もう十中八九、「つくりたーい!」が始まりますから。とりあえずウチに粘土ないから、でごまかしてますけど。全く罪な女です、おねんどおねえさん。


 そしてさらに最近はそれ以上に厄介なやつが現れたんですよ。その名は――、


『キッチン戦隊クックルン』!


 子ども達のお料理番組ですね、ざっくりいうと。我々世代(アラフォーくらい)にもあったじゃないですか、『ひとりでできるもん!』とか。小さな女の子が謎のマスコットキャラに指導を受けつつ立派に料理を――、っていう。

 それが、この『キッチン戦隊クックルン』になりますと、大人に教えてもらって(?)料理をするのは同じなんですけど、そこになぜか戦隊要素も加わってまして、変身し、料理を作って食べてパワーチャージ(?)、そんで必殺技を放ってやっつける! みたいな感じなわけです。これがもう、子ども達に大ヒット。娘の方は、可愛い女の子が変身するところが好きみたいなんですが、息子は――、


「ママー、これ食べたいー! 作ってー!」


 これですわ。

 いや、嬉しいんですよ? 息子は昔、めちゃくちゃ偏食で、ほうれん草の混ぜご飯とアンパンマンポテト(冷凍食品)くらいしか食べない子でしたから。そんな彼が、食べたいものをリクエストなんて……って。


 ただ、面倒臭い。

 面倒臭いとか言っちゃいましたけど。


 いや、これに限らずね? 料理番組って基本的に材料全部用意されてるところからのスタートだからね? それに、一般家庭って普通ドライイーストとかベーキングパウダーとか常備してねぇからな? そうですよね?


 それでもね、たまには作ってやるかな、って、ポークカツレツをね、ポークがなかったからチキン(むね肉)で作ろうとしたんですよ。こっそりね。内緒で。どうせテレビに集中してる時に台所なんて来ないんですから。ウフフ、びっくりするぞー、なんてね、ほくそ笑みながら作ってましたらね。


 そのポークカツレツ回、再放送してやがる! よりによって今日かよ! おい!


「ママー、僕これ食べたーい」


 ほら始まった!

 いや、いま正に作ってるところだから別に良いんだけど、何か釈然としない。あくまでもサプライズな感じでいきたかったのに、これ夕飯に出したら(ポークじゃないけど)、番組見ながら作った感じになるじゃん!


 とか色々考えましてね。


 案の定夕飯に出した時に「あー、クックルンのやつー! ママ、クックルン見て作ったのー?」とか言われちゃったんですが、何かちょっと悔しくて、


「べ、別にたまたま材料があったから作っただけだし!」


 ってね、何かツンデレっぽい台詞吐いちゃったな、って。

 私は子ども相手に何ムキになってんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る