第502話 案外よく見てる
よその子どもはあっという間に大きくなる、みたいな話、聞きません?
時の流れは同じはずなのに、人ん家の子って気づけば中学生だったりして。
職場の人からもよく言われるんですよ。私がいまの職場で働き始めた頃って、娘はまだベビーカーでガラガラされてておしゃべりも全然だったので。それがいまや、
「○○保育園、○○組さんの宇部娘ちゃんです! 4歳です!」
って聞かれてもいないのに自ら個人情報をばらまくようになりましたから。せめて聞かれてからにしてくれ。
なので、職場の人からすると、「あのベビーカーに乗ってた赤ちゃんがもう立って歩いてお話ししてる!」となるわけですけども、毎日見てるこっちからしてみれば、そう大して成長してる感じではないといいますか。まぁ、服がサイズアウトするとさすがに思うことはあるんですけど。
というわけで今回は我が家のムードメイカー『ネタ泉先生』こと娘ちゃんが予想外の活躍をし、その成長を感じる回です。娘ちゃんファンの皆様お待たせしました。
とにかくこの娘ちゃんがですね、一日中キャッキャキャッキャしてるタイプなんですね。息子君は紙と鉛筆、それからヒーローか怪人の図鑑や折紙を与えておけば何時間でもその場から動かず(トイレは行くけど)過ごせるんですが、娘ちゃんは無理です。
さっきまでテレビを見ていたはずなのに、気づけばお人形遊びが始まっていたり、パパかママに「ほんよんでくーださいっ☆」と可愛く甘えに来るか、といった感じでですね、なかなかに落ち着きがないのです。これが普通なのかもしれませんけど、何せ比較対象が息子君なもので。
私や旦那、そしてじぃじとばぁばからも「娘(孫)ちゃんは落ち着きがない」と言われてしまうのです。
だから集中力が続かないのかな、注意力散漫な子なのかな、みたいに思ってたんですよ。大丈夫かしら、この先、って。
が、この何とも落ち着きのない、1日中キョロキョロしている娘がですね、実は案外周りをよく見ているということがわかったのです。
お姑さんの運転で息子の学校に向かっている時のことでした。お姑さんがぽつりと「そういえばね、こないだ娘ちゃんに助けられたのよ」と言うのです。一体何があったのか身構えておりますと。
お姑さんが、大ババ(お姑さんの義母)の病院の診察券などが入ったポーチがどうしても見つからず、どこかに落としてしまったんじゃないかと困り果てていたら、
「おばあちゃん、それパパの車の中じゃない?」と教えてくれたらしいのです。
というのも、チャイルドシートは旦那の車に取り付けられているため、孫を連れてどこかに行く時には、そっちの車を使うことになっているのです。娘を連れて調剤薬局にお薬をもらいに行った際、座席の隙間などに落ちたのではないか、と指摘されたらしく、そして、その通りにポーチは旦那の車の中で発見された、というわけなのでした。
もう娘ちゃんは得意気です。名探偵娘ちゃんの爆誕です。「わたし、ちゃんと見てるデショ!」と、自慢のほっぺもふくふくです。お姑さんはパニックのあまり、どっちの車で行ったのかもすぽんと頭から抜け落ちてしまっていたらしいので、娘、確かにグッジョブでした。
そして、これだけで終わらないのが名探偵娘ちゃん。
お次のミッションは『ばぁば(お姑さん)の入れ歯を探せ!』です。
歯がない歯がない、と色んな所を探し回るばぁばに、娘ちゃんはさらりとこう言ったそうです。
「ゴミ箱のなかじゃない?」と。
おいおい、まさかまさか大事な入れ歯をゴミ箱なんかに――――――ってあったぁぁぁぁ!!!
どうやら、ご飯を食べる際にティッシュの上に置いていたのを、最後、くしゃっと丸めてポイしていたらしく。
お姑さん、めちゃくちゃ神妙な顔つきでですね、私に言うわけですよ。
「……あの子、見てるわよ(ゴクリ」と。
何かもう、ドキッとしましたよね。
自分達が気付いていないところも案外見られてるんだと思うとねぇ。もう夜にこっそりお菓子とか食べられないのかな、って。
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