第483話 危機的状況

 危機ですよ、危機。

 危機的状況なんですよ。


 何がってもうわかると思うんですけど、ジェイソンさんですわ。

 私の見間違いなのか何なのかわからないんですけど、Xがなかったんですよ、近くのTSUTAYAに。ちっきしょー、こんちくしょう。おかしいなぁ、確かに見たはずなのに。


 何だ、TSUTAYAは13日の金曜日に何か恨みでもあるのか。アレか、ジェイソンさんに親でも殺されたか。おおそうか、だったら仕方ない。だとしたらいっそシリーズ全部撤去してくれ。

 

 いやいや、違う違う。さすがに私だってあれがフィクションだってわかってますからね? まぁ、せいぜい『気になるあのとの初デートで当時話題になってたその映画を見たら、想像してたよりも殺戮シーンがグロめだったわ、ちょいちょいエロいシーンなんかも飛び出してくるわで何となく気まずくなった』程度だと思いますけどね。だとしてもそれはお前のチョイスミスだからな。大人しくローマの休日にしとけば良かったものを。


 とまぁそんなこんなでジェイソンさんがスペースをアドベンチャーするやつを借りられなかったのです。スペースをアドベンチャーするのかは知りませんけど。


 しかし旦那は、「こんなにも毎回毎回ジェイソンさんを楽しみにしている妻に、Xがなかったからと何も借りずに帰るなんて俺には出来ない」と思ったのでしょう。さすがはマイハズバンド。


「リメイクのやつあるよ」


 そんな交渉をしてきたのです。


 ――リメイク、とな?


 何でしょうね、見る前からもう何となく駄作なんじゃないかなって勝手に予想しちゃったんですよね。名作のリメイクはだいたい駄作、っていうね。完全に私のイメージですのでね、大成功してるリメイク作品もたくさんあると思うんですけど。まぁちょっといまパッと思い浮かびませんが。


 気になるのがですね、旦那から送られてきたパッケージの写真ですよ。誰もが知ってるホッケーマスクのジェイソンさんなんですね。えっ、ということは1のリメイクというわけではないのかしら。一体どこをリメイクしたの?


 は? 俺って最初っからホッケーマスクコレ被ってたし? ってことなんでしょうか。そんな、布袋被ってた時代もあったじゃない! 私に『布袋玉三郎』って呼ばれてたじゃない! 


 しかしご安心ください皆さん(何が)!


 名作なら名作で万々歳ですけれども、これが駄作だとしても、私はむしろ大歓迎です! 何でしょうね、もう逆に美味しいですから。駄作には駄作の楽しみ方があるのです。大丈夫、いままでも合いの手を入れながら見てきましたから。絶対ホラーの視聴法じゃないやつ。


 というわけで、借りてきてもらいました。

 もうね、色々と楽しみで仕方がないですね。とはいえ、残念ではあるんですよ。やっぱりXは見たいですし、何なら見逃してしまった3と5だってあるわけですから。


 これはいよいよもってAmazon様の本領を発揮する時が来たのではないのでしょうか。そう思い、それ専用のAmazonギフト券を5000円分購入した私でございます。


 それはそうと、TSUTAYAの帰りにドラッグストアでトイレットペーパーを買ってきてもらう予定だったんですけど、旦那もジェイソンさんのことで頭がいっぱいだったらしく、その辺をまるっと忘れてしまったみたいでですね、いま宇部家のトイレにはペーパーが1ロールしかない、というのもなかなかの危機的状況です。今日買いにいきます。


 ええと、Xを確認したのは、ちょっと離れたGEOの方でした。

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