第469話 それ星座のやつじゃない?

 もうすぐ父の日じゃないですか。ほら、もう6月ですからね。

 先月、母の日の時もあったんですけど、スーパーとかで似顔絵を描くための用紙が置いてあるんですよ。描いて持っていくとお菓子がもらえて、それで、父の日までの間、そこに貼ってもらえる、みたいな。


 描いてくれたんですよ、娘と息子がね。母の日の時に。

 もちろん親馬鹿な私ですからね、もう最高に上手だわぁってニヤニヤしてたんですけども、子ども達の方でもですね、「描いたらお菓子がもらえる!」って覚えてしまったもので、今回の父の日もウッキウキで紙をもらってきたみたいなんですね。


 それで先日ですよ。

 旦那が子ども達と一緒に帰宅したんですが、その手には2枚の紙があるわけです。もうね、ちらっと見えただけでわかるんですよ。父の日の似顔絵なんですよ。旦那もニヤニヤが止まらないわけです。どれ、ちょっと見せてみなさいよ、と。


 さぁ、もちろんここからも親馬鹿が炸裂する流れではあるんですが、これがまた本当にそっくりで。びっくりするほどそっくりでもう。髪の生え際の形とかね、眼鏡のつるの色とかね、もうすべてがそっくりなんですよ。そんでまぁ大いに盛り上がったわけなんですけど、もっと驚いたのがですね、その描き方です。


 息子は、皆さんもご存じの通り、年間360日くらいお絵描きをしているお絵描き小僧なんですけども、私からすると結構謎なところから描いたりするんですよ。身体全体の輪郭を描いてからその中を描いたりとか。

 私も昔は絵をよく描いてたんですが、顔からとか目からとかそんな感じだったんですよね。だけど息子はいきなり肩とか腕とかから描いたりしますから。器用なやつですよ全く。


 そんで、その旦那の――つまりパパの顔なんですけど、これまた描き方が独特だったみたいで。描いてるところを見ていた旦那曰く、


「これ、点から描いたんだよね」と。


 ――は?


「顔の前でこう……鉛筆で距離(?)をはかりながら、顎、頬、こめかみのあたりにちょんちょんって点を描くのよ」

 

 鉛筆で距離をはかる(?)やつってあれでしょ、画家の人がよくやるやつ! お前そんなのどこで覚えた!


「で、ちょんちょんって描いた点をね、線で結ぶわけ。ぐいーって。それで輪郭完了。で、顔を描いて、髪をぐわーって描いて、終わり。3分で描いてた」


 3分でそのクオリティなんだ! という部分にも驚いたわけですけど、いや、描き方! 点をうって線を繋ぐって、星座かよ! パパ座かよ!

 彼は常に新しい描き方を模索しているようですね。そのことにも驚きです。


 で、せっかくですから、その描き方で私のことも描いてもらおう、ってことになったわけです。私も見たいですからね、その星座描写法を。


 そんなこんなで息子にお願いしてみたら、予想に反してあっさりOKしてくれましてね。お風呂から上がって、ご飯を食べるまでの間に描いてもらおうってことになったわけです。ただ、私、頭にバスタオル巻いてるんですよ。この状態で描かれちゃうのか? こんなインド人もびっくりな感じの状態で描かれてしまうの? どうしよう、取った方が良いのかな? 


 そんな風に思っておりますと。


「ママ、その美しい髪をまとめてきて」


 さらっととんでもないことを言ったわけですね。いちいち口説いてきやがる。


 しかし当の本人はですよ。もう涼しい顔で「いつもみたいにゴムでねー」とか言うわけですね。え? ぼく何もおかしなこと言ってませんけど? みたいなね。


 お前マジで王子なの?! 乙女ゲームに出てなかった?! 出てなかった?! 違うな、これから出る予定なのかな? もうとにかく自分の息子にドキドキしましたね。お前ほんと何者なんだよ。


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