第413話 家内制手工業
このエッセイの355話で書いた話なんですけどね。あの、伊達直人のヤツですよ。養護施設にランドセルを送る感じで、そういう有名人の名を騙って手作りマスクを寄付してやろうか、みたいな話なんですけどね。
まぁ355話ということはですね、いまから約60話も前の話で、つまりは約2ヶ月前とかなんですよ。当時は、まだ「なぁんちゃってね」みたいな雰囲気があったわけです。何ならその2ヶ月後にはもう下火になってるんだろうな、くらいの気持ちでおりましたとも。
ところが。
えっ、そろそろこれガチで実行すべきなんじゃない? と、にわかに現実味を帯びてきたわけです。
ヤフオクやらメルカリやらそういうサイトで、マスクをとんでもない額で売ってた頃は手作りマスクの入札なんて多くても5件とかそんな感じだったんですけど、いま普通に30件とかあったりしますからね。すげえ、需要が高まりまくっている……。
さらにはあれですよ。一国の首相までもが布マスク配布しますとか言い出しましたからね。いやー、私は作れるんでいらないんですけども。
もうこうなったら宇部マスク工場を稼働させるっきゃないわけです。我が家のミシン(brotherのヤツ)が唸りを上げるわけです。最近たまに本当に唸ってるみたいな音を発するようになって些か恐ろしいんですけど。
『ないよりはマシ』を旗印にですね、家にある端切れを消費してやるぞと多少厚めの生地でもお構いなしに加工しております。
ふと思い浮かぶのは、社会の教科書の挿し絵ですよ。何かこう、家内制手工業から工業制手工業に移り変わりました、みたいな部分のやつね。おい、逆行してねぇか? って思いながら、一人でミシンをカタカタしているわけです。社長兼従業員ですよ。
ただ、ガーゼが手に入りにくくなっているので、材料は家にある端切れなんですけど、私のセンスがアレなのか、多少柄がね、ふざけたヤツもあるといいますか。いや、ふざけてるわけじゃないんです。とっても可愛いんですよ。可愛いは可愛いんですけど、プチケーキ柄とか、ちょいレトロな駄菓子柄とかあるんですよね。これ、正直私はつける勇気ないんですけど。
でもほら、『ないよりはマシ』だから。この呪文をですね、唱えながら作るわけです。もういっそ『Nai Yoriha Mashi』ってブランド名にしても良いくらい。この場合、『ないよりは』って『ha』なんでしょうか、それとも『wa』? どっちでも良いですけど。
まぁそんなこんなで「ないよりはマシだべ」って思って、布をしまっている衣装ケースをガサガサしてたんですけども。まぁ、衣装ケースにしまってるレベルという点でその量を察してほしいところではありますが。
発掘されたのがですね、ジャパニーズ柄ね。
おすもうさんとか忍者とか、観音様とかの柄のヤツ。しかも色は赤だよ。私は何を作る気でそんな柄を買ったんだ。
で、でもほら『ないよりはマシ』ですからね、ええ。
そんでもうひとつ困ってるのがアレね。
耳にかけるゴムがない、っていう。ガーゼも手に入りにくくなっちゃいましたけど、マスク用のゴムも売ってないのです。
ネットの情報で、白タイツ(黒でも良いけど)を切って使うとちょうど良い、みたいなのを知りまして、息子の発表会用で買った白タイツ(予備のため未使用)をチョキチョキ。
確かになんか伸縮性も良い感じだけど、ほんとにこれ良いの? 未使用だけど、なんかイメージ的に大丈夫!?
もう柄が騒がしいわ、ゴムの代わりにタイツだわで、本当に『ないよりはマシ』と言えるのかわからなくなってきましたが、宇部マスク工場は隙間時間に稼働中です。
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