第412話 むしろ堂々と

 これはですね、やっぱりモテ男って違うな、って話になるんですけどね。


 モテ男のプレゼントテク的なものをですね、聞いたことがあるんですよ。


 プレゼントってやっぱりどこかサプライズ要素が必須だったりするじゃないですか。何の前触れもなくいきなり、っていう完全なるサプライズもあれば、誕生日とかクリスマスとか、何かしらのイベントで渡すことは決まっていても何がもらえるのかまではわからないっていうのもある意味サプライズですよね。


 これが子ども相手ですと、「○○がほしい」ってリクエストされたものを用意する、って感じになるんですけど、恋人とか、恋人一歩手前の関係くらいだったらどこかしらサプライズ要素必要じゃないですか。


 え? 夫婦?

 いやぁ夫婦はですよ、そこまでの関係になりますと、下手にサプライズされて「ちょっとこれはいらないな」ってなったら気まずいですからね。一緒にお食事とか、いっそ現金とか、あるいは一人でのびのび過ごせる時間とかね、もう最終的にはそういうプライスレスな感じになったりしますよね。しますよね、って誰に聞いてるんだ私は。


 そんでもって、女の子の好むものって難しいじゃないですか。いや、女の側からしてみればですね、男の子の好むものも正直わかりませんよ。カブトムシで喜ぶ年でもないでしょうしね。


 まぁ今回は女性へのプレゼントの話をしたいわけなんですが、何が難しいって、サイズのあるものだと思うんですよ。例えば、可愛い靴をプレゼントしたいとするじゃないですか。これはね、難易度★★★★★のやつですから。


 いや、あなたわかる? 彼女の足の大きさ。家に遊びに来てる時とか、トイレに行く振りしつつちゃんとチェックしました? 面と向かって聞くのは、人によっては失礼なパターンもありますから。


 けどね、モテ男さんにはとっておきの方法があるらしく。それは――、


 ボウリングデートに行くこと!

 確かにあれならさりげなく靴のサイズを知ることが出来ます。うぉい、賢いなぁモテ男!


 ってめちゃくちゃ感心したんですけど、いや、ボウリングの靴のサイズ=普段から履いてるサイズとは限らない、と私は主張したい。スニーカーとパンプス(あるいはハイヒール)は同じじゃないと思うのですよ。幅も違いますしね。だから安易にサイズだけ見て買うのは危険。まぁ、プレゼントしたいのがボウリングシューズなら良いんですけど。ていうかね、そもそもどうして彼女に靴をプレゼントしようなんて考えた!?


 あと、サイズがあって困るものって言ったら、アレでしょうね。


 指輪。


 もう、ここぞ、って時のスーパーアイテムですからね、ちょっと大きかったくらいならまぁ笑い話でサイズ交換に行けば良いですけど、逆だったら悲惨ですよ。えっ、お前そんなに指太かった?! とか断頭台へ直行コースですからね。


 しかし、指輪のサイズなんて、どう考えてもさりげなくチェック出来ないんですよ。普段に身に着けている指輪をこっそり拝借して――とか、君の彼女、普段から左手の薬指に指輪してんの?! それもしかして既婚者じゃない?! あと、寝ている時などにこっそり糸を巻くなどして計測する、なんていう隠密のような方法もありましたけど、その糸もきつく巻いたらアウトですしね。まぁ当たり前ですけど。あと、私だったら確実に印とかつけ損ねて結局失敗しそうです。


 さて、ウチのモテ男ですよ。

 

 ある日、ミシンをカタカタしている私の元にやって参りまして、「ママ、指貸して」と。何だ何だ、何をされるんだ、と身構えている私の指にですね、何やら紙を巻き付けるわけですね。


 えっ、指のサイズ測ってる?!

 こんなに堂々と?!


「息子君、もしかしてママに指輪をプレゼントしてくれるの?!」

「ひ・み・つ!」


 良い笑顔ですよ。


 ここまで堂々とやっておいて秘密も何もあったもんじゃないですよ。

 まぁ、十中八九、指輪を作ってくれるんだろうなって思いながら待つこと数分。


 コピー用紙で作ったへろへろの小箱を持って、彼は現れました。そして私の前に跪き――、


「ママ、僕と結婚してください!」


 どこで覚えたの、その完璧なプロポーズ。

 言っとくけど、君のパパもやったことないやつだからね、それ。


 こんなのね、私が独身だったら即OKですよ。まぁ、独身だったら息子君はこの世に存在してませんけど。


 もうね、これくらい堂々とやってくれればですね、逆に清々しいな、と。サプライズとか関係ねぇな、って。これがモテ男がモテ男たる所以なのだろうな、と。


 彼女に指輪を贈ろうとしている彼氏諸君! もういっそのこと堂々と計測しようぜ! そんで突っ込まれたら笑顔で「ひ・み・つ!」とか返せば良いから!


 あ、プロポーズは泣く泣く断りました。ごめんな、ママって実は既に結婚してるんだ。

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