第250話 この時期の本屋さんで思い出す

 もうすぐハロウィンですね。

 もちろんコスプレとかそういうのはしないです。ウチ仏教なんで。


 嘘です。

 別に仏教でも何でもないです。

 仏教とは都合の良い時に仏様とか南無阿弥陀仏って言うくらいの距離感です。嫌いでもないですし、他の宗教よりはなじみ深いですけど、教徒です、とまでは言えません。

 そもそもハロウィンの有無って宗教関係あるのかな。

 

 南無阿弥陀仏と言えば、昔、旦那(当時彼氏)に「もし私が怪しい新興宗教にハマって、そういう施設で暮らし始めたらどうする」ってよくわからないもしも話をぶつけたことがあるんですね。いや、当時色んな物騒な感じの宗教があったので。

 そしたら、割とすぐに答えが返ってきましてね。


「お坊さんが持ってるみたいなめっちゃ長い数珠を持って『南無阿弥陀仏ー!!』って叫びながらその宗教施設に乗り込む」


 って。

 

 ああもう安心だわこれ。

 私がよくわからない世界に迷い込んでもきっとこの人は『南無阿弥陀仏』一本で救いに来てくれるんだな、と。もうマリオですよね、こうなると。別にマリオは仏教徒じゃないですけど。


 で、まぁ旦那も仏教徒ではないんですけどね。


 とまぁ、仏教の話は良いです。

 ぶっちゃけ白状しちゃいますけど、コスプレとか飾り付けとかかぼちゃ料理とかが面倒なので、適当なことを言ってごまかしただけです。

 第一、冬至の日ですらかぼちゃ料理を作らないほどの私なんですから、ここ数年で盛り上がった異国のイベントのためにあのったいったいかぼちゃをえいえい言いながら切ったりするの嫌なんですよ。全国のママさん、すごすぎない? それだけのためにあのったいったい鈍器みたいな野菜に包丁入れてるとかすごくない?


 え? レンジ使えって? 

 う、うん、まぁそうなんですけど……。


 じゃなくて。


 本屋さんなんですよ。

 この時期になりますと、ハロウィン関係の絵本がぞくぞくと並ぶじゃないですか。もともと悪役大好き(ファーストヒーローはばいきんまん)の息子は、骸骨やらお化けやらの絵本がたくさん並んでうっきうきなんですよ。ジャックオランタンとか、蜘蛛とか(ママは嫌だけど)、蝙蝠とかも大好きなもので。


 自分も本が大好きですし、宇部家の教育方針が「本はたくさん読め(ぶっちゃけ漫画でもOK)」なので、絵本コーナーに行くとついつい「どれにする~?」が始まるわけです。


 数年前、その日もハロウィン間近でして、絵本コーナーはすっかりハロウィン仕様。店員さんほんとお疲れ様です、と言いたくなるほど凝った飾り付けに目を奪われておりますと、息子が「ぼく、これー!」と一冊の本を抱えてやってきました。絵本って基本大きいですからね。自分の胴と同じくらいの大きさの本を胸に抱えている様はいつ見ても最高にキュート、と心の中でシャッターを押しまくってたんですけど。


 持ってるの、人体図鑑。


 表紙がね、人間の骸骨で。リアル骸骨で。ハロウィンまるで関係ねぇの。骸骨ではあるけれども。それ理科室とかにあるタイプのだから。


 さすがにそこまでの金はねぇ。

 

 そして図鑑の受け入れ態勢も整ってねぇ。

 いずれ買うつもりではありましたが、まさかそれがいまだとは思ってなかったといいますか。当時まだ字も読めませんでしたしね。いやお前、それ内臓とかも載ってるやつだからね? 人骨の写真集とかじゃないからね? 人骨の写真集でも嫌だけど。


 とりあえず、金銭的な理由で買えない、と全力で伝えまして、ハロウィン的な絵本を買って帰りました。


 時は流れて現在、彼はマックのハッピーセットでもらった人体図鑑(の小さいやつ)で一生懸命人間の骸骨を描いています。


 結局人骨は描きたいみたいです。


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