第42話 絶対に笑ってはいけないシャンプー台24時

 生きていれば結構言われるのが「○○さんって案外○○だよね」っていう台詞。


 ええっ、そんな風に見えてました? やだー! ってまんざらでもない感じにうふうふする時もあれば、

 はぁ? 決めつけないでもらえますー? ってやや喧嘩腰に返す時もある。ありますよね? 


 え? この話、ここからスタート? シャンプー台は? ってそわそわしちゃうのは宇部さん初心者ですね。プロになると、もう落ち着いたものです。ほう、こんな感じですか、ええ、良い滑り出しではないですかね、まぁ、あと500字ほどはだらだら書くでしょうねハハハ、ってな具合に、ソファにふんぞり返ってブランデーグラスとかをね、こう、ゆらゆらってね、したりするわけです。いや中はめんつゆですけどね。そういうドッキリでやらせてもらってますんでね。


 さて、宇部さんは案外何なのか、って話なんですけど。

 もうここでピンと来るでしょう? だってタイトルに書いてるんですもん。もうタイトル回収もスピーディー。ぱっぱと回収。ぱっぱと。


 宇部さんって案外笑いの沸点低いよね。


 そういうこと。

 何かもう、すーぐ笑っちゃう。


 といっても、例えばお笑い番組とか見てずーっと笑ってるわけじゃない。プロに対しては厳しいの、私。

 でもね、素人さん、つまり、一般人に対してはほぼノーガード。私のナンバーワンコメディアン(アマチュア)はウチの旦那。何かツボに入るんですね。毎回ホームラン級のネタがあるわけじゃないんですけど、毎日何かしらのネタ仕込んでくるわけですわ。


 で。

 それは良いんですよ。良いのかよ。


 いやね、笑いの沸点が低いと何が困るかって話。

 美容室ですよね。もっというとシャンプー台。これね。

 しかもいつも行ってる美容室、私のあずかり知らないところでシャンプー台変えたんですよ。完全に背もたれが倒れるタイプじゃなくて、ほんのちょこっと傾くだけっていうか。そんで、ノーガーゼなんですよ。正気? あなた絶対に私の顔に飛沫かけない自信あるわけ? ヘイヘイヘーイッ。私はそう問い詰めたい。結構ぴゃっぴゃとお顔にね、跳ねてますけどって。


 こうなるともう始まりますよね。

 絶対に笑ってはいけないシャンプー台24時!


 もうあれやこれやをね、旦那の珠玉のネタをね、思い出しちゃったりして。

 いやもうひとつひとつはつまらないんですよ。

 ほんの些細な言い間違いとかね、そんなレベルなんですよ。

 でもね、やつらが束になって襲い掛かって来るんです。

 しかも私はシャンプー台の上。

 まな板の上の鯉。シャンプー台の上の宇部。


 もう頭の中に流れてるよね。

 テテーン、宇部、アウトー。


 もう、「かゆいところはございませんかー?」だけでも笑いそうになるから。

 いや、かゆいところがあるとして、それどうやって教えたら良いの?って。

 頭蓋骨の部位で教えれば良い? 右の側頭骨って。

 それとも、脳の部位で教えれば良い? 右の側頭葉って。

 つまり右のその、うん、その辺りがかゆいっていうかね。


 「流し足りないところございませんかー?」とかね。

 それって流されてる側にわかるものなの?

 うーん、まだ泡が残ってますねーって? 人間ってそこまで頭皮敏感に――っていうかこの場合敏感なのって髪の毛だよね? わかる? 皆の髪の毛どうなってんの?

 

 そんなこんなでいつも笑いを堪えながらシャンプーされている宇部さんでしたよ。


 うふふ、髪、とゅるっとゅる~。

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