第391話轟音と共に

 さて、やりますか。複数の転移符を見るからに野営地と思われる場所の上空へ飛ばし、設置する。何をやるかって? 景気の良いクールなサウンドを人々にお届けしようって事さ。


 野営地に黒い雨が降り注ぐ。それはもう酷く不気味で祟りでも起こっているかのように。更に追加で爆弾を投下。


 轟音と振動がここまで伝わってくる。文字通り吹き飛ばした。上空高くまで転移符をも巻き込む勢いだ。当然跡形も残る訳が無い。原形を残して無い地形に一人佇む男以外は。


 あの爆発を防いだというのか? その時点で随分な化物がいたもんだ。


 男は右手に金属感を感じさせない槍を持ち、左手には木製の杖を持っている。軽鎧に獣の毛皮らしきものを羽織った外見はこの世界でもあまり見ない組み合わせだ。



 ステータスを久々に見てみよう。それで全てはハッキリする。


 ???名前が使魔となっている。



 槍術:32 ルーン魔術:16 他にも対人闘技等々10以下が無い。32ってなんだよ?スキルってそこまで上がるものなのか? 一つだけレベル5の名前でもある使魔が不気味だ。


 男は反撃する訳でもなく、ただゆっくりと歩いてくる。こちらも赤銅の剣と銃を取り出し男を待つ事にした。妖精を殺したのはこの男では無い可能性が高そうなのと、なにか伝えたそうな男を見たら、とりあえず接触してみようと直感が言うのだ。


 自然な足取りで近くまで男が来ると、倒れた木に腰掛けた。



「おう、兄さんは守護者かい? 随分派手な魔術を使うじゃねぇか。ちと危なかったが、監視の目もろとも吹き飛ばしてくれて助かったぜ」


 どういう状況なんだこの男。見たところやはり何か伝えに来たのだろう。最後まで話を聞くとしよう。この面倒事の志望者というか代表者の情報も手に入るかもしれない。


「まぁそんな所だ。それで?反撃に来たという雰囲気ではないが、何か用か?」


「単刀直入にいうぜ。この状況は不本意極まり無い訳だ。俺も本来なら兄さんと似た立場だからな。今となっては雇い主に名を奪われこのざまよ」



「雇い主を裏切るという事か?」


「元々忠誠なんざねぇよ。スキル? ってやつか? アレで無理やり呼び出されて言われるがままよ。情けねぇ」 



 本当に本意ではないのかも知れない。凄まじい怒気を感じる。しかも俺に向けられた物ではない。


「で? 俺に何をさせたい?」



「雇い主もさっきの連中みたいに吹き飛ばして欲しくてな。ただし俺を殺してからとなるが。正直今の状況もスキルの穴を突いてるだけだ。本来なら兄さんを殺しに掛かってる。守護者の情報を聞きだせって命令の範囲内って訳だ」


「成る程な、俺の情報を少し出せば、それだけお前からも情報を貰える。そう言う事だな?」


「理解が早くて助かるよ」 








 

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