第361話人事のおっさん
「こいつは即興で作ったイミテーション。本物はこれだ」
オッサンに放り投げる。
受け取ると、妖精がこれが本物なのだとオッサンの耳元で喋る。ここまで聞こえる声量だからうるさいだろうなぁ。
「ミューちゃんお願いだからもう少し控えめな声でお願いね、耳が痛いのよ」
なんだか毒気が抜かれてしまった。
「それで用件はなんだ異界人。護衛を無力化して俺に接触してきた、この世界での大半の異界人の行動を考えれば攻撃されても仕方ない、そうは思わないかな?」
「そんなに酷いんですか?」
「おっさん、今までに見た異界人はどれだけいる?」
「一人だけです」
「そいつは?」
「魔王討伐の為に出て行ってからは見てません。先代の勇者ですね」
「でっ?おっさんは何者なんだ?」
「巻き込まれただけの一般人です」
「巻き込まれた?」
「面接で先代勇者が来ていたのでその時巻き込まれたとしか」
「そうか、そいつは災難だったな。だが、それだけではこの世界は生き延びる事はできない。あの城にいないと言う事は、逃げ出したか放り出されたのどちらかだと思うが?」
「いいえ、平和的に力が無いのでお役に立てないと伝え、少しばかりの路銀をお願いして平和に城からは抜け出しました。こう見えてそこそこ大きい会社の人事部なんですよ、明らかにおかしな人間くらいは見抜けます」
「じゃあ、オッサンの目は節穴だな。俺に声を掛けたんだ、そして銃で撃たれた」
「それは接触の仕方を間違えた。それでもこうして話す事ができている、これだけでも十分な成果なんですよ。こちらが何故、貴方に接触したかは」
精霊がオッサンの肩から飛び立ち俺の目の前に来る。
「ここからは僕が説明するのだ」
敵意が無い。というか精霊にしては幼い、見た目ではなくあり方?魔力の質?漠然とそう感じてしまう。
「お母さんがあの城で囚われて酷い事をされているのだ」
さっきまで元気いっぱいと言う感じだったのにしょぼんとして話出した。
「それで?」
「お母さんは闇精霊の中でも一番力があるのだ、それを悪用されてるのだ」
「どう言う事だ?」
「ここからは僕が」
オッサンが続く。
「貴方はこの国を見てどう思いました?城や村々を見て」
「気持ちが悪いだな。城の上層部が屑なのは指輪を見る前から分かっていたからそれは置いておくとして。頭にお花畑を咲かしている姫君、親切すぎる住民。それ自体はない事ではないが違和感がある」
「もし、喜怒哀楽の怒哀をある程度コントロールされているとすれば如何でしょう?」
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