第353話二名様御案内

「さて、話しはある程度決まったな。約束通りアンタの傷を治すとしよう、まずは飲め、と言いたいが飲ませてやってくれ」



 俺はショルに酒が入った壷を渡す。受け取るとすぐにそれを父親に飲ませる。続いて俺はポーションを傷へと振りかける。するとどうだろう、その部分から光りだし、その光はどんどん大きくなっていく。



 光が収まる頃には腕や手は綺麗に生えていた。改めて見ると凄いを通り越して気持ち悪さを感じる。



 その光景を見て親子は抱き合い涙を流す。感動的なシーンかもしれないが、そんな事よりこれから保護するかもしれない精霊の方が気になってしまう。



「約束通りその体は癒された、お前等2人は俺の管理下にある。構わないな?」



「ああ、構わない。多少制限があるが自由と言っても差し支えない、ここで生きていくよりは良い」



「さて、いくつかの約束事を追加する。ひとつ、俺に関する情報を一切漏らすな。二つ、何か作る場合俺の許可を取る事。これの理由は分かるな? そしてどう言う物がダメかの基準もある程度理解できるはずだ」



「無論構わないよ」



「一先ず数日はもう一人の異界人の下で暮らして貰う。だが、そこは完全に人間の領域、出来れば外へは出ずに過ごして欲しい。そして、ショルは俺と精霊の所へ行く。これでいいな?」



「アタイはそれでいいよ、でもダイスはココへ行商へ来たんだろう? そっちはいいのかい?」



「精霊の件が終わってからだな、まずはトト様・・・は言いにくい。アンタ名前は?」



「ザッドです」



「了解だ。ではザッドは先に同じく異界人のアキラの所へ送る、ショルも顔合わせに連れて行く方がいいか」



「待ってください、ダイスさんは違う大陸の方ですよね? しかもこの3島の外の」



「それがどうかしたか」



「いえ、長距離の移動をして私をアキラさんに預け娘とまたココへ戻る様に聞こえましたので」



「なるほど、見た方が早いな」



(アキラ聞こえるか?)



(聞こえてますよ。戻って来るなら今部屋ですので大丈夫です)



(客人を連れて行く。もしかしたら共通の話題で盛り上がれそうな客だ)



(それは楽しみですね)


(では今から陣の位置へ飛ぶ)



(了解です)



 心配そうにこちらを覗き込む親子、無理もないか。



「さて行こう」



 俺は対象を指定すると、転移符を起動する。


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