第257話意外な情報提供
尋問はこちらに任せて欲しい。クリートでは無く、ガウを使う辺りが俺の扱い方って感じなのか?当然ギルドの不祥事であるから、文句も言ったが。
向こうも完全に非を認めており、賠償の約束までしてきた。この約束はクリートが取り付けてきた。これはこれで俺の扱い方としての判断だろう。流石に取引があり、誠意を見せて謝罪してくる人間を無碍にはしにくい。今回非こそあれど根本的な物ではないのだから余計にだ。
これ以上は苦情ではなく八つ当たりになると思い、ギルドを後にする。
「もし、そこの商人殿」
振り返ると、そこには恰幅の良いオッサンが一人。俺は警戒を強めながら、そのオッサンに返事をする。他におかしな気配は無い。
「どうされましたかな」
「私、向いの酒商のドルと申します。貴方はダイス殿で間違いありませんね?」
「間違いないが?商談かな?」
「ここでは少し話し辛い内容でして。どこか落ち着ける場所でお話できればと」
俺は他に人はいないか再度確認したが見当たらない。なので提案に応じ落ち着ける場所へ移動した。無論こちらが指定する場所へだ。タイミングがあまりに悪い。
場所はスロートの店の個室だ。ここなら問題は無いと思う。
「それでは用件を聞かせて欲しい」
「私と情報交換を致しませんか?」
「何の情報が欲しいんだ?そして何を差し出す」単刀直入にいこう。
「欲しい情報は、先ほど捕らえられていた、男の事です。差し出せるのは候補として、その男の素性です」
男の知り合いか。依頼主という感じではない。
「簡単な話だ。襲ってきたので返り討ちにしてギルドに突き出した。それだけだ」
「やはりそうなりましたか。馬鹿息子が申し訳ありません。多分ですが、依頼主は大商会の会頭ルツ殿だと思われます」
「何故そうだと思う?お前も関係者か?」
男は大きく手を振りいえいえとオーバーなアクションで答える。
「息子と言いましても、私の元から離れ冒険者になり、同じく冒険者であるルツ殿の娘と婿養子として結婚しておりまして、もう長い事会っておりません」
「何故、襲われたか分かるかと言いますと、ルツ殿の商会は大きく強い商会ですが。同時に苛烈な商会としても知られているのです。ダイス殿のここ数年での躍進は我々の業界では最早悪夢、流通の速度、量、質どれをとっても勝てない。ギルドのポーションも出元はもしやという憶測まで飛び交う始末」
正解だぞそれ。そしてやりすぎたか。物資を集めるのにはこのくらいする必要はあったし、仕方ないか。
「私はまだダイス殿の恩恵がある方なので良いのです。ですが他の者は違います、なんでもギリギリ生かされてる気がするそうで」
店が潰れて俺だけの流通とか悪夢だし、そんな責任は持ちたくないからな。
「そういう事もあってか一年程前からルツ殿の行動が不穏だったのです、そこに息子を捕縛した貴方がギルドに入ったと常連様に教えて頂いて、居ても立っても居られなくなり参った次第です」
「なぁ少し聞きたい、嫁の方も冒険者なんだよな?もしかしてだが両方とも腕が良いとかで今回の襲撃は夫婦でなんて事はありえるのか?」
「ほぼ間違いなく一緒かと・・・まさか」
「殺してはいないよ、俺はな。だが、そろそろ心の方がダメかもな」
「それはどういう」
包み隠さず説明した。
「ダイス殿これは提案というか至らぬ息子が迷惑をかけた罪滅ぼしの一環としての提案ですが、出来るだけ速やかにお隠れ下さい。まだ、向こうに状況は伝わってはいないはず。知れればなりふり構わずに来ます。そういう男です」
オッサンのは拳を強く握り、歯を食いしばり、強く眉間に皺を寄せながらそういった。
「有意義な話しが聞けたよオッサン。礼にもならんがここの料金は俺が持つし、話の裏づけが完全に出来たときは息子の減刑を願い出てやるよ。息子からすれば俺は殺したくてたまらないだろうがな」
やっぱ人間ってめんどくせえ。俺も含めてな。
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