第189話再・リシャー商会
その気になれば明日にでも終らせる事が出来はするが、あえてそれはしない。迅速すぎても色々勘繰られるかもしれないからな。
ヘス、精霊の彼女には約束通り、念話符を渡した。すぐに爺さんと話し出したが。喜んでるようなのでまあ良いだろう。
そんなこんなでようやく新大陸への旅だ。一月で帰る羽目になるが、それまでに拠点を設けたい。まずはあの商人ともう少し取引して、信頼と情報と代金を頂くとしよう。
移動も転移符ですぐだ。レイウス邸に着くと門番に事情を話す。一人が中へ話しに行くと帰りは大慌てで戻ってきた。向こうはずいぶんとこの商品が欲しいらしい。
門を抜け、長い庭を抜け。邸宅に入る。前来たときも思ったがとにかく警備が凄い。これだけでも金が掛かるだろうに。
部屋へ入ると。
「おお、待っていたぞダイス君。あの酒も欲しいがまずは私の成果を見て欲しい」
出されたのは壷、多分独自の味を試していたのだろう。
「御馳走になります」
そう言って、一つ一つ試飲して行く。果肉を飲む直前に混ぜる物やベリー酒。生姜のような物と柑橘を使った酒どれも良い味だ。
「どれも何処にも出回らない、最高の出来だと思います」
「そうだろう、そうだろうとも。ガルと一緒に開発したのだ」
酒を足する飲兵衛にしか最早見えない。が、それが良い、こう言う人間は嫌いではない。酒の利益をギルドへも分配する必要もある。どうせやるつもりではあったのだ。
「本当に素晴しい。今回は大量に持って来た甲斐があったと言う物」
「おお、それは嬉しい。して如何程に」
「前回の8倍が今回は限界でしたが、まぁこれは商談の後という事で」
「そちらも気になるが、まずはこれよな。ガル、代金をもって来てくれ」
「はいよ。てか、ダイスの袋容量がすげぇな。この短期間での往復もそうだが、一流所はちがうねぇ」
「まさか、俺なんて三流ですよ」
ガルははいはいと手を振りながら「一流の戦闘力、一流の商品。一流の移動速度。これで三流なら俺たちも危ういってもんだ。なぁ旦那」
「その通りだ。この大陸では無名でもダイスの大陸ではさぞ名の知れた傑物に違いない」
あちゃ~少しばかし早く来すぎたか。有能程度の評価ならまぁ良いか。
「じゃあ行ってくるぜ」ガルは部屋を後にする。
「さて、これは俺からの提案ですが。この酒を酒造所から買いたいとは思わないですか?」
「商人なら当然だろう?」
「これは貴方が信頼に足る人物だからこそ明かしましょう。この酒は私の大陸の冒険者ギルドの元に作られている物になります」
レイウスは黙り込む。そして少しの沈黙が過ぎ。
「何故それを教える?商人としてそれは失態ではないのか?」
「それはどうでしょう?まず、ギルドへの義理もあります。更に貴方がこの酒を買い求めるのに手ぶらで別大陸に行くでしょうか?」
「そういう事か。確かにいくら君が有能だろうと一商人では流通に限界がある。そこで私に一枚噛ませて流通を広めるか。視野が広いな。君はやはり一流の商家の者なのだろう」
「その話受けよう。それを踏まえて情報交換もしたい。つくづく君は相互利益を提示するのだな」
え?そこまでは考えてませんが?まぁいいか。
それでは互いの大陸の話をしようじゃないか。今日は長くなるだろうが大丈夫だろうか?
あ、この人なんか火がついてる。こうなれば流れに乗るしかないか。
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