第145話完済

「理屈は分かったかい?」



 黙って頷く。そう難しい事ではない。転移符と陣の規模を大きくして、両陣同時に起動するそういう話だ。メリットは一度に大量の物を運べる事。交易で使えればさぞ勝手がいいだろう。



「君は優秀で助かるよ。それじゃ、これからは僕の指示で指定した場所に符を500メートル四方に設置して」



 そう言うとルイは転移符を何処かにいっていまった。




(君がいる場所にまず設置して)



 言われた通り設置する。




(起動して) 言われた通りやる。すると、500メートル四方の森が現れた。成る程、これが置換転移か・・・えげつない。不毛の地と森の交換とか笑えない。



 次々に指定された場所に設置していく。泉に、街道に、荒地に、ただただ設置と起動を繰り返した。




 途中から何故こんな所へと思うような美しい庭や公園らしき物、も置き換わっていく。夜になると、指定される場所がより精密になる。




 次入れ替わったのは畑だ。成る程、水路を考えて畑を配置しているのであろう。高速で移動しながらただただ作業のように繰り返していく。不毛の地と呼ぶに相応しい場所が、緑豊かになっていく。朝を迎えた頃にはかなりの土地を置換できたようだ。この国の半分は置換したのではと思う。途中から転移符の設置も10キロ四方とか滅茶苦茶な事を言ってたし。



 お陰で自分のマナは何度尽きかけた事か、ひたすらポーションがぶ飲みしてやった訳だが、もうやりたくない。しかし、これだけの物を置換された哀れな場所は何処だろうか?まぁ予想は付くが。本当にルイは容赦がない、こんな事をすれば間違いなく死人が大規模で出るだろう。




 水、食料、水路等のインフラ。森などの自然の資材になる場所をこれだけ広範囲で奪われたのだ。まぁ俺が知った事ではないな。と言いたい事ではあるが、王や住民に知らせなければパニックになるのは必然。




 ルイは戻ってしまったし、俺が行かざるを得無いだろう。



(後はよろしく)



 ルイが軽く言うが面倒だ。



(困った奴だよアンタは)ため息混じりに念話符に返す



(そうそう、ダイス、今回の件で長期的な君の儲けを減らした事になるかもしれない。と言う訳で。借金はもういいよ。というよりこれ以上あっても使いようが無い)



(ギルドとの仲介や生成は?)




(そのくらいはやるさ、あの程度のは片手間だからね)



 それを聞いて安心した。


(ありがとう、残りは任せてくれ)



(じゃあ頼んだよ)



 借金は思った以上にすぐ完済できてしまった。説明が大変だなこれは。

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