名は体を、体は名を ~4~

「いやぁ、急にごめんねぇ。」


 たはは、と頭を掻きながら笑うのはアクトリエルさん。いつも朝礼でお世話になっております。

 今日もゴーグルを頭に掛け、大きめの白衣と、のほほんとした雰囲気を纏っている。


 私・・・ラファエルとサリちゃんは、教官さんに抱えられて、ここ『科学技術研究部』に来ていた。


 新薬の開発、科学技術の発展を目指す部署だって座学で教わった。


 様々な薬品の匂いが鼻をくすぐる。


「ここはボクのお城なんだぁ。あ、改めて自己紹介するねぇ。ボクはアクトリエル。ヤーちゃんって呼んでもいいよぉ?」


「・・・ヤーちゃん要素はどこ?」


 サリちゃんが静かにツッコミを入れる。サリちゃん!この上官さんだよ!


 上官さん・・・なのだけれど、アクトリエルさんの纏う空気に壁は感じられず、緊張も自然と抜けていった。


 ミカちゃんは「緩い!ただただ緩い!」なんて言っていたけど、部下に不要な緊張を与えない、アクトリエルさんならではの魅力だと思うな。


「あの・・・ミカ・・・エルちゃんがまだ・・・・・・。」


「およ?何か用事?」


「ミカエルは別の仕事をしている。後で個別に講義すればいい。」


「それじゃあ、仕方ないねぇ。まぁ、立ち話もなんだしその辺座ってよ。あ、ラファエル、そのフラスコ倒さないようにねぇ。中は激薬だよぉ。おーっとサリエル、今触ってるの最新の小型爆弾。起爆したら、シャングリラ消し飛んじゃう。」


 部屋の中は座る場所が無いほど物で溢れかえっている。それら全て激薬だったり、爆弾だったりって・・・・・・。


「おい。バ科学者。」


「あー激薬はそうだけど、爆弾は冗談。起爆しても消し飛ぶのはこの部屋くらいだから、安心していいよ!」


 アクトリエルさんは楽しそうに笑う。

 安心出来る点が1つもないですよ・・・。


「隣の倉庫から椅子を持ってきた。ここに座れ。」


「あ、ありがとうございます・・・。」


 みんな怖がるけど、教官さんは優しい。厳しく指導している時でも時々優しい目をしているのを私は知っている。

 お礼を言い、私とサリちゃんが腰をかけると。


「あ、それ椅子型のトリモチ。」


 ペチャッ


「・・・・・・。」


「・・・・・・。」


「別のと交換する?」


「・・・こ、このままでいいです。」




「えっと今日呼んだのはねぇ、『天使名』の意味について講義するためなんだぁ。」


「天使名の意味・・・ですか?」


「そそ。天使名は前任の天使から譲り受ける。もしくは上級天使から任命させるっていうのは座学で習ったよねぇ?」


「はい・・・。」


「まぁ、この講義はその続き。天使名を貰った大天使には追加で、天使名の意味を教えているんだぁ。ふぅ、疲れた・・・。」


 そう言いアクトリエルさんは一息つくと、手元にあった試験官にストローを指し、中の液体を一口。

 あれ?それって何かの薬品じゃ・・・。


「おぅふ!不味っ!なんだろこれ・・・まぁいいやぁ。そんで天使名の意味なんだけどねぇ。」


 えぇ・・・・・・。まぁいいや、で済ませちゃうんですか・・・。


「天使名にはそれぞれ象徴と、任命するにあたって求められる条件が定められているんだぁ。名は体を表すってねぇ。」


「名は体を・・・ですか・・・。」


 と口に出すけど、正直ピンと来ていない。

 サリちゃんは相槌でコクンコクンと頷いて・・・・・・あれ?寝てる?!


「んー、そうだねぇ。例えば君、ラファエル。象徴するは『癒し』。条件は『医と慈悲を以て隊を癒す者』・・・って感じ。」


 口を緩め柔らかい笑顔を見せるアクトリエルさん。


「私の天使名にそんな意味があったんて・・・知らなかったです。」


「その為の講義だからねぇ。」


「天使名の意味は、シャングリラ創設時から変わらない。ただ、中には難解なものもあり、使われていない天使名も存在する。・・・貴様はそろそろ起きろ!」


 ペシッ!


「ぁぅ・・・。・・・問題ない。聞こえているよ。」


 サリちゃん・・・全然説得力ないよ・・・・・・。


「難解って言えば、サリエルの意味もそうだよねぇ。なんだっけ?象徴は『命令』。条件は・・・。」


「条件は『命令に従うが、縛られぬ者。孤独を嫌う孤高の者』。私は、真っ先にこいつが浮かんだがな。」


 今度は優しく頭に手を乗せる教官さん。サリちゃんは「ん~」と心地良さそうに声を漏らす。なんか可愛い・・・。


「そんな感じで、天使には一人一人意味がありますっていう講義だねぇ。名に恥じぬよう頑張ろぉ。おー!ってねぇ。」


「名は体を表すように、体もまた名を表す。貴様らの行動一つ一つが、天使名への印象に影響する事を忘れるな。」


 ここで私は1つ引っかかった。・・・聞いてもいいのかな・・・?


「あ、ひゃの!・・・ミカ・・・エルちゃんの意味を・・・聞いてもいい・・・・・・でしょうか・・・・・・。」


 はぅ・・・。出だしで噛んじゃった・・・。じわじわ恥ずかしくなって、最後なんて声が消えそうなくらい小さい・・・。恥ずかしいよ・・・・・・。


 それを見たアクトリエルは優しく微笑む。私の知っているが見せた笑顔に似ている。

 アクトリエルさんは目を閉じ言葉を紡ぎ始める。まるで記憶を探り、思い出話をするような穏やかな声で。


「ミカエル。意味は『勇気』。条件は『隊の士気を高め、逆境をも跳ね除ける曇りのない笑顔』。」


「・・・・・・笑顔。」

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