名は体を、体は名を ~2~

「絶対に中を見るなよ。」


 そう言って教官から与えられた任務……というか完全におつかい。


「……気になる。」


 サマエルちゃんに届けなきゃいけない内容不明ノート。見るなという教官の言葉…。

 人はどうして念を押されると、余計見たくなるのかな。


 周りを見渡す。誰もいない。よし!いや、よしじゃないけど…。


「…………。」


 ノートの表紙に指を掛ける。

 こ、これは…そう!調査!不審な物、機密情報を運ばされていないかの調査なの!だから、ちょっとだけ…。

 揺らぐ心を惑わすには、十分すぎる言い訳だった。


「これは……日記?」


 1ページ1ページに日付が記され、その下にきれいな字で書かれた文章。

 好奇心に負けた私は、ページを捲る手を進めた。



 ○月○○日


 今日、新人が3人、小隊に入った。第一印象、弱そう。あれじゃシャングリラでは生き残れない。親睦会も不安だった。

 でも、3人とも生還した。よかった。私の中で新人に対する印象が変わった。

 サリエル あんな新人見たことない。人間離れし過ぎ。

 ラファエル 気が弱い。積極性が足りない。隊長は「頭がキレる」って言っていた。

 ミカエル 生意気。先輩にちゃん付けするな!



「あ、あははは……。」


 なんというか、サマエルちゃんが不安だったのは分かった。親睦会が無事終わってホッとしてくれたことも。でも、私の評価…。



 ○月○×日


 今日、サリエルの援護射撃に助けられた。私の後方不注意。基礎を見直さないと。

 お礼を言いたいけどあの子、雰囲気が独特で話し掛けにくい。



 ○月×○日


 任務中に怪我をし、ラファエルに手当してもらった。唾つけとけば治る傷だけど「駄目です!」とラファエルに押し切られた。以外に頑固。

 彼女の手当は優しくて温かかった。ヤエルも少し見習ってほしい。



 ヤエルちゃんが、サマエルちゃんを包帯でぐるぐる巻きにしている姿が目に浮かぶ。


「ふふ・・・。」


「何通路で笑っているのよ。気持ち悪い・・・。」


「っ!さ、サマエルちゃん?!」


 なんでここに?!あ、不味い!

 慌ててノートを隠そうとしたが、ひょいと摘み上げられてしまう。


「・・・人のノート見て笑うなんて、いい趣味してるじゃない。」


 体が凍りつく程の冷めた目。一瞬で全身の血の気が引いていく。


「ご、ごめんなさい!」


「あー!もう!この程度で怖気付かない!」


「ごめん・・・。」


「だーかーらー!」


 声で分かる、絶対イライラしてるよ・・・。そうだよね。勝手に日記見たんだもん。そりゃ怒るよ・・・。


「はぁ・・・・・・疲れるからもういいわ。丁度いいし、あなたも来なさい。」


 呆れられたかと思うと、手首を掴まれ引かれる。


「え・・・ど、どこに?!まさか、人気のない所に連れてって殴られ・・・・・・。」


「しないわよ!そんな事!あんた、私をなんだと思っているの?やるなら正面から堂々と潰すわ。」


 怖い・・・。


「・・・トレーニングよ。日課なの。あんたも付き合いなさい。強くなりたければ、ね。」

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