ルジャとジュル

ルザーから、話を聞いた後・・・私は思わず、飛び出していた・・・何で・・・どうして・・・僕は・・・・・神を・・・ダールやジュルを殺す為に旅をしてきたの・・・?


今までのやり取りを思い出す・・・ジュルは今まで話をしてこなかった・・・結局、どんな人物か解らない・・・・ダールは・・・あいつは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


何で!!真面目な話をしている最中に踊っていたんだよ!!あいつは!!!


そう・・・ダールはルザーと話をしている最中ずっと踊っていたのだ・・・完全な場違い・・・絶対にシリアスな雰囲気であって踊る場面では一ミリたりともなかったはずなのにあいつは踊っていたのだ!!そして・・・今までの事を思い出し僕の感情は爆発をした・・・・


大体何なんだよ!!あいつは!!自分が殺されるかもしれないのに・・・あんなに騒いで・・・そこまで言って気づく・・・ダールはわざと気にさせない様にそう・・・振舞っているのではないか・・・ジュルも感情移入させない様にわざと僕から距離を取っていたのではないか・・・・そう考え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無いな・・・・


ジュルはそうかもしれないが・・・ダールは絶対にありえない・・・あいつが・・・何か空気を読むなんて絶対にありえない・・・・そうだ・・・昔から・・・・・・・そこまで考えてふと思う・・・・昔って・・・?


その疑問は船が目につき吹き飛んだ・・・・ああ・・・そうか・・・僕・・・ここまで走ってきちゃったんだ・・・


僕は無意識に・・・船に近づく・・・そう言えば、ジュルは話し合いのあの場にずっといなかった・・・もしかして・・・・


僕が船の中に入ると・・・船底で光を出しながら・・・魔法陣を浮かせ、何か作業をしているジュルがそこに居た・・・・僕がジュルに近づくと


「・・・・・・・・どうした・・・・?」


そうジュルが話しかけてくる・・・・気付かれたか・・・・


「・・・・ちょっとね・・・・・」


「・・・・話を聞いた・・・?」


「うん・・・・」


「そう・・・」


そう言ってジュルは黙った・・・話をしている間もずっと無表情で目をそらさずジュルは作業を続行している・・・


僕はふとある事が気になった・・・そういえばジュルこの半月ずっと、船で作業をしているところ以外全然姿を見ていない・・・・休んでいるの?ジュルは?


「・・・・・・・・そう言えば・・・休まないの・・・?」


「・・・・最後の仕事だから・・・手を抜きたくないの・・・まあ・・・このままだと未完成のまま出航になってしまうかもしれないけど・・・・」


?何故未完成のまま出航?いやそれより・・・


「・・・・ねえ・・・魔界に行ったら私・・・僕の神卸の為に生贄になるんだよね・・・」


「ええ・・・・」


「何で・・・死ぬ為に魔界に行くんだよ・・・そんなの絶対可笑しいよ・・・」


僕はそのまま涙を流した・・・・何で・・・この人・・・神達は自分が死ぬと言うのに・・・・何で・・・・


「・・・・・・・・・お主は何の為に勇者をやっている・・・・」


「・・・・・・えっ・・・・?」


「答えろ・・・・・」


そう言われて考える・・・・世界の為・・・他の僕が知らない人々の為?・・・ううん違う・・ジュルと話して思った事はそんな事じゃない・・・


「・・・・・・ルザーとルウェールを守りたい・・・・本当にそれだけ・・・」


僕は思った事をそのまま伝えた・・・・本当は勇者に似合った事を言わなくてはいけなかったかもしれない・・・だけど・・・僕にとって勇者になったのはそれ以上の理由は無かった・・・・


その言葉を聞くと、さっきまで無表情で一心不乱に作業していた彼女は作業を辞め、こちらを向き微笑みながら・・・・


「・・・そうか・・・」


そうただ一言呟いた・・・・・


「・・・・・・・私も同じだ・・・・世界を救うとかなんだと言っておるが、私にとって重要なのは、ダールとの最後の任務をいかに楽しんで終わらせること・・・それだけだ・・・・」


「えっ?!」


ジュルの言葉を聞き、耳を疑った・・・楽しむ・・・・?しかも・・・ダールと・・・あいつと・・・?いや本気で言っているの・・・?


「神というのは、自らの世界の管理の為、余り神同士の世界を行き来出来ないのだ・・自分と相手の世界に影響を少なからず与えてしまうからと言う理由でな・・まあ、あやつはそんな事関係なしにやって来たが・・・それでも、神として生きて来て共に過ごせたのは・・・本当にわずかな時間だった・・・・」


そう言う・・・彼女はどこか寂しそうだった・・・いやこの感じ・・・えっジュルってダールの事が好きなの?えっ本気で言っているの?シリアスな話をしているのに、踊っている奴だよ・・・本気?


「一度あやつに連れられてあやつの世界に行ってきたが・・・・本当にそこの住民は皆楽しそうに過ごして負った・・・あやつ自身いじられて威厳何て全くなかったが・・・それすらも笑いの神・・・ダールは楽しんでおった・・・・」


そう言うジュル・・・ええ・・・ダール、神なのに、威厳とか無いって・・・しかも、いじられているって・・・


「・・・だがな・・その平和も全てが崩れ去った・・・そう・・・あの日に・・・・・・」


そう言った後、ジュルはため息をついて更に話す・・・・


「ダールの世界が壊れたと聞いた後、一度その世界が壊れた様子を私は自らの力を使って見てしまった・・・・私が作った世界もいくつか、消滅させられたが・・・ダールの世界はそれ以上に・・・地獄だった・・・当り前だ・・・・人々は幸せ以外の感情を知らない世界だ・・・闘うという発想すら無かったんだろう・・・ただ・・・ただ・・・蹂躙され・・・抵抗もしないで・・・ただ、ダールの・・・神の名のみ言って助けを求めるしか出来ない人々が拷問される・・・・それを見て、あやつは何を思ったんだろうな・・・」


気付くと・・・ジュルの顔にも涙が流れていた・・・


僕自身、その凄惨な内容に息をのむ・・・・えっだけど・・・ダールは・・・どう見ても・・・そんな雰囲気全く感じさせた事なんて・・・・・


「任務に一緒になると決まり、いざ顔を合わせた時・・・あやつは一切笑っていなかった・・・信じられるか?笑いの神が一切笑いを忘れたのだ・・・この顔を見た瞬間・・・何故だろうな・・・絶対笑わそう・・・そう思ったんだ・・・・」


ジュルは涙を拭わず・・・笑いながら話し続ける・・・・


ダールが笑わない・・・そんなの想像が・・・・・


「だから。あやつに言ってやったんだ・・・貴方との旅楽しみにしているって・・・まあ、一回怒られたけどね・・・だけど、それが本心だった・・・私は彼と・・・ダールと笑って最後に任務に就きたかった・・・そういったら、ダールが笑って『絶対に楽しませてやる!!』って言ってくれたんだ・・・ハハ・・・本当にその顔を見て・・・私はやっぱりあのダール・・・笑いの神の笑っている姿が好きなんだって思ったんだ・・・・だから、私はこの任務を精一杯楽しむつもり!!最後が消滅するって言うのなら!笑って最後を迎えるんだ!!」


そう言い放った彼女の顔は女性の私から見ても奇麗で・・・美しいと思った・・・・


・・・・・・・・ハハ・・・・・本当に敵わないや・・・・2人共とっくに覚悟何て決まっていたんだ・・・・


「・・・・・・・・・迷い話捨てよ・・・・お主は二人を守る事だけを考えればいい・・・私も自らの最後の使命を全うする事だけを考えておる・・・」


「でも・・・・・・・・」


・・・だけど・・・そんな事急に言われてもすぐに切り替えられるわけ・・・・


「もし、それ以外に望んでいいのなら・・・最後まで・・・ダールの相手をしてやってくれないか・・・?私自身、主とあやつとの掛け合い結構楽しんでおるのでな・・・」


そう言いながら笑うジュル・・・その笑顔は初めて会った無表情な顔から想像が出来ない程楽しそうだった・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・頼む・・・最後まで、ダールと共に笑わせていかせてくれ・・・・・それが私とダールとの最後の約束だったからな・・・・」


そう言って・・・ジュルはそのまま作業に戻った・・・さっきまでの話のに、そんな事が無かったかかの様に夢中になって作業をしている・・・・・私は・・・・・・・・・・


―――――――――――――――――――――――――――――


次の日の朝、ダールにいきなり今日船に乗って、出航する事を伝えられた・・・


「何で!今日!!伝えるんだよ!!!」


「フハハハハ!!話の途中に飛び出す方が悪い!!」


僕はダールに切りかかっているがそれを余裕で躱される・・・くそう全然当たらん!!


「・・・ルジャ・・大丈夫なのか・・・?」


ルザーにそう言われる・・・確かにまだ、心が決まったかと言われたら・・・解らないとしか言えない・・・だけど、贄になる神の二人が前に進もうとしているのに、僕だけが立ち止まる訳にはいかない・・・・だから・・・・・


「・・・・・うん大丈夫!!・・・・」


そう言い切った・・・・例え・・・消えるかも2人だけど・・・ジュルが言った楽しむという言葉・・・それに少しでも近づけられる様に僕も・・・・頑張って・・・応援しよう・・・例えそれが・・・永遠の別れになるとしても・・・・・・・

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