ダールの過去

そこは楽園だった・・・その世界では笑いが絶えず、皆楽しそうに過ごしていた・・・ただ、神への信仰心それだけはどの世界より低かったがその世界の住民全てが神の事を好いていた・・・・


誰よりも、笑い、誰よりも笑わせ、誰よりも世界を愛していた神の世界は・・・一瞬で地獄に変わった・・・


笑いだけの世界が、恐怖の世界に変わり、皆が優しさを持っていた世界は、血塗れになり・・・全員が叫びをあげた・・・痛みや恐怖と無縁だった住民は全員抗う術を持っていなかった・・・誰もが魔物に殺され、魔族に弄ばれた・・・


それを神は黙って見る事しか出来なかった・・・介入しようにも・・・自ら世界に降り立とうとすれば、その瞬間、自身の世界が崩壊する様に仕組まれていた為、介入する事すら出来ない・・・


「神様・・・助けて・・・」


目や腕を、足までも切断されながらも、そう呟く住人達・・・それを黙って見ているしか出来ない・・・我は・・・・・・


創造神に、勇者の手助けと世界とこの神の世界を繋ぐ贄になってくれないかと言われ、我は速攻で受けた・・・


「・・・・今まで、貢献してきたお主にこのような事を頼むのは・・・本当に申し訳ないが・・・」


「構わん!もう既に守るべきものは全て無くなった!!あやつらに一泡吹かせることが出来るのならこの身捧げることなど何ともない!!」


だが、1つ気掛かりが、この計画に際して、我一人だけでは、贄に足りないという問題があった・・・本当なら我一人で片をつけたかったのだが・・・仕方がない・・・それだけ、向こうの神がかけた制限は強すぎるのだ・・・・


そうして、もう一人の贄が決まり、その神に会った瞬間我は目を疑った・・・・


「お主・・・何故・・・」


「あら?私がここにいちゃあ駄目かしら?」


何故、知識の神がここに・・・こやつは・・・まだ、守るべき世界があるだろうに・・・


「お主自分の世界は・・・」


「後任に任せたわ・・・私やりたい事があるから後は頼むってね・・・」


「何を考えている!お主にはまだ守るべき世界があるでは無いか!!」


「あら、怖い・・・笑いの神がそんな怖い顔をしないで下さい・・・」


そう言って知識の神が笑う・・・何故・・・お主は・・・


「・・・お主は何故笑っていられる・・・これから、自らの存在を消す為の旅に出るのだぞ・・・しかも、人間の身体能力まで落として・・・」


「あら?あなたが言っていた事じゃない?どんな状況でも、笑って楽しめってね♪結構楽しみにしているのよ・・・・貴方との旅・・・・神の世界の管理で余り貴方と話すことも出来なかったからね・・・」


「そんなふざけて・・・」


「私は貴方が好き・・・」


いきなり知識の神がそんな事を言ってきた・・・何だって・・・


「私は貴方に会うまで、世界を管理する事だけを考えて、他に興味すら感じていなかった・・・だけど、貴方と出会ってそれが、変わった・・・」


そう、告白する彼女は顔を真っ赤にさせながらも、私に微笑みかけながらそう言った・・・・


「・・・・最後は、存在すら消えるのだぞ・・・」


「貴方と一緒なら、どこにでも行くわ・・・」


「生きて欲しいと願ってもか・・・」


「あら、そうなると別の神が貴方と一緒に消えるのかしら・・・そんなの絶対いやだわ・・・私こう見えて嫉妬深いのよ・・・」


そう、またしても笑いながらそう言う・・・・・本当にこいつは・・・・・・・こいつには・・・敵わない・・・・


「フ・・・フハハハハハ・・・!!そうだな!世界を救う旅だからと言って!楽しまなければ!そんだよな!!知識の神!!楽しみにしておれ!!絶対に楽しませてやる!!」


涙を流しながらそう言う・・・そうだ・・・・我は笑いの神・・・どんな状況でも笑わせなければ・・・それが・・・私という物だから・・・・


「ええ・・・楽しみにしていますね♪」


そう、笑いながら言う彼女は・・・ものすごく美しく見えた・・・・・・

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