啓示

ルジャが出て来なくなって一週間、俺は歯がゆい思いをしていた・・・俺自身、ルジャに何て声をかければいいのか解らず・・・ただ時だけが過ぎていた・・・そんなある日・・・・・・・


不思議な空間に俺は居た・・・周りは全て白で誰もいない空間・・・


この感じ、ルジャが舞を舞っている時に感じる神々しさをこの空間に感じる・・・そんな事を感じていると・・・


『よく来てくれた・・・』


不意に声が聞こえた・・・どこから聞こえたのか・・・辺りを見回していると・・・


『周りを見ても見えん・・・儂の本体は人の目には見えんからな・・・』


その言葉を聞き、


『神か?』


と咄嗟に聞いた。何故そう聞いたのか、それは、この空間から、神の儀式をルジャがした時と同じ神々しさをこの空間から感じ取ったからだ。


『・・・そうだ・・・』


やはりと俺は思った・・・ルジャと幼少の頃から一緒だった為、儀式も自然と同じ位見て来た俺にとって、神は身近な存在だった・・・だからこそ・・・・


『・・・・・・・・・何故・・・俺達を見放した!!』


神に対し怒りが湧いてきていた。お前らがきちんと解決さえできていればルジャがあんなに苦しむことが無かったんだ・・・・


『・・・・・・・・すまない・・・』


『すまないじゃない!!俺達はもうおしまいだ!!争いの類はお前達神によって、解決されてきた為に武力はほとんどの国が持っていない!!唯一武力と言えるものを持っていた大陸も始めに魔物に蹂躙されもう闘える者はほとんどいない!!そんな状態で『今は自らの力で戦線を維持してくれ』だ!!もうどうしようもないだろう!!』


殆ど八つ当たりだった・・・神のおかげで今まで平和だったのに、いざ神自身対応出来ない事柄が起きた時にその原因を神の所為にする・・・本当に何で・・・・・・


『神様なんだろう・・・・助けてくれ・・・』


今回は何故助けてくれないのか?今までだったら助けてくれていたのに・・・・


『・・・・・・・本当にすまない・・・今起きている事を出来るだけ詳しく説明する・・・・』


その話は余りにも壮大過ぎた・・・今神同士の争いが起きており、魔界はその別世界の神が作った世界を強引にこちらの世界に組み込んだものであるという事、そして、その別な神が魔界と言う世界を作り出した際、制約をかけていったと・・・その為本来行えた神の干渉がほぼ出来ない状態になっていると・・・・


『・・・何故別世界の神は戦争を・・・』


『・・・本当に何でじゃろうな・・・まあ以前から他の神を見下していた節もあるし、恐らく、力の誇示ではないかのう・・・』


力の誇示・・・そんな事の為に俺達は・・・・


『・・・本当にすまない・・・今できる事は、情報を与える事・・・・後・・・解決策を示す事だけじゃ・・・』


解決策・・・


『解決する方法があるのですか!!』


俺はあらん限り大声で言った・・・


『・・・・・一応な・・・・』


『どんな事でもします!!教えて下さい!!』


皆を・・・ルジャを救える・・・そう言われ、俺は必死になってそう言った・・・


『・・・・・・・お前には、辛い決断になると思う・・・』


そう言って、神はため息をついた・・・辛い決断?どんな辛い事でもやり遂げて・・・・


『ルジャを勇者とし!ルザー、ルウェールと共に、魔界に行き神を卸せ!そうすれば、解決の糸口が見える・・・・』


・・・・・・・今なんて言った・・・ルジャを勇者にするだと・・・


『何を・・・ルジャは・・・あいつは戦闘なんて・・・その前にあいつは神殿以外に外に出た事が無いんだぞ!それなのに・・・・』


ルジャはその重要性が高い人物として外に出す事すら無かった・・・その為、ルジャの世界は神殿内が全てだった・・・・それを不憫に思った事は何度もあった・・・だがあいつはそれを巫女だからと言う理由を受け入れ頑張っていたのだ・・・それなのにいきなり外に出ろだと・・・出来る訳が・・・


『・・・これしか方法は無いのだ・・・』


『何故・・・ルジャを・・・巫女なら他にも・・・』


『・・・神卸が出来るだけでは駄目なのだ・・・神を具現化しこちらの世界に現界出来る可能性がある巫女・・・それが出来る可能性があるのが別の世界を含めてルジャあやつのみなのだ・・・』


『それはどういう・・・・』


『おかしいとは思わなかったか?神の力を卸したと言っても天候、災害を操り、または、神自身をその身に宿す事すら出来る・・・他の巫女ならそんな事は簡単には出来ん・・・だが、あやつは多少の疲労があるだろうが、それを事も無くやり遂げる・・・それだけで異常なのは気付いているだろう・・・』


そう神は言ってきた・・・確かに、他の巫女達は神との対話だけで、精神を疲労するのに、あいつは疲労どころか、気軽に神との対話をしてみせている・・・・今回の精神的な疲労も、儀式によるダメージというよりは、周りから言われたことに対するダメージが全てだろう・・・


『あやつの才能はすざましい・・・その才を持っている人物は他の世界を含め、あやつ位しかおらんのだ・・解ってくれ・・』


そう言って、神はそのまま黙った・・・恐らく俺の返答待ちなのだろう・・・だが・・・


『・・・さっき、神は干渉できないと言っていたと思うが・・・神卸の儀式を魔界なんかで本当に出来るのか?』


そう、さっきの話の中に神自身制限を受け、干渉できないそう言っていた。簡単に神卸が出来るのなら、神の儀式の時にそれをすればよかった・・・それなのに、助言だけで終わったのだ。それはこの世界で神卸自体出来ない状態になっているその証明であるのだろう・・・


それなのに、あいつの能力だけで、私達の神による加護があるとは思えない魔界での神卸それが出来るとは思えなかった。



『・・・・こちらから、神を2人送る・・・そいつらは人間並みに能力を落として制限をすり抜けさせ世界に送ろう・・・そいつ等を贄に神卸を成功させてくれ・・・』


『贄だと・・・』


贄その言葉に嫌な予感を覚える・・・神は精神体が本体であるとルジャから聞いた事がある。あいつ、本当に気軽に神と話をしていたから、本当に雑談したのりで聞いたのだろう・・・能力の無駄使いとはこういう事を言うのだろう・・・


話がそれたが、それにより、神自身精神の力は人間のそれとは比較にならない位程膨大である。まあ、神自身人間とは比べられ無い程すざましい力を持っているのだが・・・精神が本体である神を生贄に捧げる・・・それを意味する事は・・・


『・・・・・・・ああ、その通りだ・・・神の存在する為の力自体を贄に捧げ神卸を成功させる・・・』


その言葉を聞き、俺は思わず叫んでいた・・・・


『ルジャに神殺しをしろということか!!!』


神の精神力それは人間とは比較にならない位巨大だろう・・・それを贄に神卸をする・・・それならば成功する可能性は高い・・・だが、あいつは・・・あいつの心はどうなる・・・


あいつにとって神とは信仰の対象とは別に家族という意識もあるだろう・・・・色んなことを神様から聞いて、それを嬉しそうに俺達に話して・・・


『あのね、かみさまってひとりだけじゃないんだよ・・・たくさんいて・・・いろんなせいかくなかみさまがいるんだ・・・!にんげんみたいだよね!』


そいつ等をあの心優しいルジャに殺せと・・・・


『・・・何故・・・そんな酷い方法を・・・・・・・』


『・・・・・・・・これしか方法は無いのだ・・・・・もう既にここ以外の世界はいくつも消えておる・・・時間が経てば経つほどその被害は大きくなる・・・』


『解決する為なら!!ルジャを犠牲にしても良いと言うのか?!!』


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


『答えろ!!神よ!!』


『力不足ですまない・・・本当なら私達で解決しなければいけなかったことだ・・・それがお前達に重荷を背負わせてしまった・・・こんな方法でしかお前達に解決策を示せずに申し訳ない・・・』


『~~~~~~~~~~~~~~~!!!』


俺は声にならない叫び声を発した・・・・そして、


『他の神官達にも神の啓示としてルジャが勇者である事を伝えた・・・』


『なっ?!』


『時間が経てば、その事は神殿内に広がるだろう・・・・』


『お前達はどこまで・・・』


ルジャを苦しめるんだ・・・・そう思うと、思わず涙が出て来た・・・・


『神は近々お前達の前に現れる・・・・お主達に酷な運命を与えてしまってすまない・・・』


そういうと、周りの風景が崩れて来た・・・


『待て!!まだ話しは・・・』


手を伸ばそうとした瞬間・・・風景は崩れ・・・そして、次の瞬間俺はベットから飛び起きていた・・・


・・・夢・・・?いやこれは、啓示だろう・・そうでなければ、あれだけ鮮明な夢などあり得ない・・ああ、本当に夢ならいいのに・・・・・・俺はしばらく、ベッドの上でうずくまっていた・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る