妖精の森

俺は今精霊の森と言う所に母上に連れられて居る・・・何故こんな所に居るかと言うと・・・ここに俺と契約してくれるかもしれない精霊が居ると言うのだ・・・


ここに来るまでに母上から精霊と妖精について様々なことを聞いた・・・・


この森は世界のエネルギーが集まりやすく故に、妖精、精霊が集まりやすく、生まれやすいという事・・


精霊は妖精が成長した姿で、契約する事により妖精が成長しやすくなり、強くなると言う・・・その結果精霊に成長しやすい為、人間と精霊や妖精は契約するのだと聞いた・・


そして、契約した人間もまた強くなる、契約した人間は妖精、精霊魔法を使える様になる・・・


精霊魔法とは精霊と契約をする事で、本来精霊しか使えない、魔法を使えるようにする。魔法だ。普通の魔法と違う所は精霊と協力して魔法を使うので、魔力消費を抑え、威力も上がるという点だ。


まあ、妖精と一緒に魔法を使うので、難しい魔法の応用や複雑な術式は使えないのだけど・・・。威力の上昇は闘いの上でかなりアドバンテージが取れる。


だが、俺は契約どころか、近づくことすら出来ない・・・何でも俺は魔力が強すぎて、普通の妖精や精霊は近寄ってすら来ないらしい・・・今まで妖精や精霊が逃げていくの何故なのだと思っていたのだが、理由あったんだな・・・・まあ、知ってても魔力を抑えること自体苦手だったしあまり変わらなかったか・・・


そんな事を考えていると、目の前に人が現れた・・・いや、よく見ると人では無かった・・・透き通った羽が背中に生えていたのだ・・・


「この人?は・・・」


「・・・この方が精霊王であるスピンよ・・・」


母上がそんな事を言ってくる・・・この者が精霊や妖精を束ねている、精霊王・・・


母上が勇者時代に見つけたと母上、道に迷ったときに周りにいる精霊に案内されてここに来たと言っていた・・・


この精霊と妖精の住処には様々な属性の妖精と精霊が居る・・・本来属性が違うと、なかなか纏まらないらしいのだが、精霊王が纏めているらしい・・・


母上もどの属性との精霊でも仲良くできる為、似たようなことが出来るらしい・・・だが、精霊達や妖精を契約する事はその精霊や妖精を縛り付ける事だと思い、今まで契約してこなかったらしい・・・・


実際人間の中には妖精や精霊を道具として使おうとしている人間も多いらしい・・・とはいえ、契約は相互関係で契約している為、妖精や精霊が嫌がれば、契約は勝手に妖精、精霊が解除する・・・


まあ、無理矢理言う事を聞かせている者もいるらしいが・・・


そういったのを見てきた為、母上は本来契約で精霊魔法を使う所、その場に居る精霊にお願いして、精霊魔法を使っている。


契約して使うより威力は落ちるが元勇者としての資質なのか普通の契約者とそん色ないかそれ以上に扱えるらしい・・・


母上もしてこなかった契約・・・それを俺はしようとしている・・・


「やあ、よく来たね」


精霊王が話しかけてくる・・・俺は何か言った方が良いのかと思っていたら、母上が話し出した・・・


「ええ、迎えてくれてありがとう・・・・本来なら精霊は神側の立場なのに、受け入れてくれて・・・・・・・本当に感謝の念しかないわ・・・」


そう言って、母上は頭を下げる・・・それを見て俺も頭を下げた・・・何でも、精霊や妖精は神の創造物らしく、本来なら神と敵対している魔王側に肩入れしてはいけない立場だと母上が来る前に伝えていた・・・


それなのに、受け入れてくれて本当に感謝の念しかない・・・頭位いくらでも下げよう・・・


「いいんだよ・・・神の創造物何て言われているけど、実際に会ったこと無いしね・・・だったら、目の前にいる助けを求めて来た友人を助けるよ・・・」


何この人徳者?そう思っていると、


「・・・・・・・あの子は・・・・?」


母上がそう聞いた・・・そう俺は今から、ある精霊と会う・・あの子とはその精霊を指しているのだろう・・・その精霊は、本来、妖精の姿で生まれるはずが始めから精霊として生まれ、何でも魔力だけなら生まれた時に父上以上の力を持っていたらしい・・・・・・何そのチート?


その精霊なら俺も契約できるのではないかという事で、ここまでやって来たという話だ・・・まあ、契約が出来るかどうかはその精霊次第なんだがな・・・そんな事を考えていると・・・


「ああ、今あっちの木の方に居るよ・・・早速会ってみるかい?」


そう言われて母上が俺を見る・・・俺は頷く・・・


「解った・・着いてきて・・・」


そう言って精霊王スピンが森の中に入っていく・・俺も母上と一緒に着いていった・・・


―――――――――――――――――――

森の奥に入っていくと雲の上すら通り越していそうな木があった。世界樹の木だ。


その世界樹の木の近くにその子は居た・・・。ここから感じる魔力からでもわかる、父上以上の魔力だ・・・ただ、見た目だけは、ただの小さな子供にしか見えない。


ちなみにこの精霊に名前は無い・・・名前は世界と契約する際にする本契約というものをするとつくらしいがこの子はしていないらしい・・・


本来これ程の力を持っている精霊は精神体の精霊は世界に受け入れらる様に契約をしてその体を安定させる。そうしないと世界に拒絶され消えると母上が言っていた・・・一度それで精霊王も消えかかった事があるらしい・・・


だけど、この精霊はその契約を断り続けているらしい・・・


自分が消える可能性があるのに契約しない精霊が俺と契約してくれるのか?少し心配になったがとにかく話をしてみないと解らない・・・


「やあ、この人達が昨日話をしていた人達、ロイドさんとハールさんだ、少しお話してみないか?」


そう言ってきたので、俺も一歩前に出て話し始めた・・・


「初めましてロイド・ハーンです、今日はお願いがあってきました・・・」


そう、はっきりと言う・・・ここまで来たら細かい言い回し何ていらない!俺はその子の目を見てそう言う!


「・・・何?」


「喋った・・・。」


子供が喋ると驚いた顔をしたスピン・・・・一言言っただけだぞ・・・母上が喋らない子って言っていたけどさ・・・一言喋るだけでも異常なの?・・・まあ、いいや反応してくれたのなら更に言うだけだ!!


「俺は強くなりたい!だから、契約してくれないか!!」


・・・・・・・・・・どうなんだこれ・・・と言うよりこの子契約したくないと言ってたんだよな?それなのに強引に契約をしてくれないかって・・・絶対に断れるに決まってるだろう!!


「どうして?」


・・・・あれそうでもない・・・何でもいい!!とにかく自分の思いをぶつけよう!!取引何て俺知らないし!!


「戦争を止めたいから・・・その為に誰にも負けない力が欲しい!!」


「?戦争を止める為に力が欲しいの?」


「そうだ!」


「止まらないよ・・・」


「えっ?」


「絶対に止まらないよ・・・」


そう断言するようにその子は言い放った・・・


「・・・力で戦争を止めるって言っていたけど・・・・どうやって?」


「・・・そりゃあ、大きな力を見せれば、相手が怖がって止まるんじゃないか?」


『すごい力を持って見せつければ、敵わないと思って逃げていくかもな』という父上の言葉を思い出し、そう言う・・・


「・・・止まらなかったら・・・」


「えっ?」


「それでも止まらなかったらどうするんですか?」


そう言われて、また、考える・・・そうだ!だったら、転移魔法で飛ばせばいい!!魔法抵抗とかあるだろうが、魔力のごり押しで行けば何とか・・なるかな?とりあえず、言ってみよう!


「・・・その時は転移魔法で、遠くに飛ばす・・・」


「それだといつか戻ってきますよね?ただの時間稼ぎでしょうか?」


そう言われて言葉が出なかった・・確かにこれはただの問題の先送りだ・・・


「後、万が一力で支配したとして、その後をどうするんですか?」


「えっ?」


「まさかずっと力で言う事を聞かせていくのでしょうか?」


「えっと・・・・」


「出来ないと思いますよ・・・人間の土地は膨大ですから、全てを支配しきれるなんてできない・・・どこかしらで暴動が起きて、小さいでしょうがあちこちで争いは無くならないでしょう・・・」


至極真っ当な事を言われてしまった・・・この子確か、生まれて半年しか経っていないって母上言ってたよな・・・本当に半年?長寿種の生まれ変わりと言われても信じるぞこれ・・・


そう言ってきたその子はもう言いたい事は言い切ったという感じで、俺の視線を外した・・・確かに・・・・お前の言う事は正しいよ・・・力を得たからってその力をどういう風に使うかさえ解っていないしな・・・・


「・・・でも・・・」


・・・でもな・・・


「それでも・・・一瞬でも平和になる可能性があるのなら力が欲しい!例えそれが間違っていたとしても!何か可能性があるのなら試してみたい!!!」


俺は思いをぶつける様に叫んでいた!!力を得たからって戦争が止まる訳が無い?!そんな事は百も承知なんだよ!!それでも・・・足掻いてみたい・・・足掻いてみたいんだよ!!!


俺はフェンの事を思い出していた・・・何でもない様な様子で両親の事を喋ってくれたが・・・あの隠しきれていない悲しそうな顔・・・そんな顔をする人を増やしたくない!!


「?・・・力で平和になる方法ってあるの?ああ、人間を全員殺すのね、そうすれば魔族側は平和になる」


・・・人間を全員殺す・・・何なんだそれ・・・そんなのフェンの様な魔族が人間に代わるだけ・・・いや・・全員殺すからそれ以上か・・・・・


確かに全員死ねば悲しむ人は居なくなるかもしれないが・・・そんなの、意味がない・・・


「違う!!俺はあくまで全員を救いたい!!!人間も魔族も関係なく!!!」


全員救わないと!意味がない!!!


「?どうやって?」


・・・・・・・・


「・・・それは・・・力を手に入れてから考える・・・」


はは、情けない・・・力が欲しいって言いながらその使い道すら説明できないなんて・・・これじゃあ、あきれかえられても仕方がない・・・


「・・・ねえ、力があれば何でもできるって言ってるけど・・・今のあなたの力はどうなの?私に頼って来てるって時点でどうかと思うけど・・・」


正論を言われ、言葉が詰まる・・・だけど・・・


「・・・・・・・・・・ああ、そうだ・・・結局、自分の力で何も出来ずに・・・お前に頼っているな・・・」


ああ、その通りだ認めてやる・・俺は何も出来なかったからお前を頼りに来てしまった・・ああ認めるよ・・・


「・・・・だけど、今の力を示す方法ならある・・・」


そう言って、魔力を体に纏わせる・・・この子が言っている事は全部正しい、言っている事も伝えている事も俺は反論できなかった・・・だからと言って、諦める訳にはいかない・・・それをしてしまったらもう、俺は・・・・


俺は最終手段の実力を見せる事にした・・・


「・・・闘うって事?・・・」


「それが一番手っ取り早いだろ・・・」


そういうと、その子は少し考えこむ仕草をしたそして・・・


「解った・・ただ、私が勝ったら諦めてね・・・」


それだけをその子が言うと、俺の周りは暗闇に包まれた・・・

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