勇者の思い 後編

「ぜえ、ぜえ、本当・・・しつこいな・・・・」


俺は肩で息をしながら悪態をつく・・・


「・・・はあ・・・はあ・・・だけど・・・向こうも疲れているわよ・・・・」


そうだ、あいつ自身も目に見えて疲れている・・・もう少しのはずだ!!


「・・ですが、これだけ時間をかけていると戦士の方が気になりますね・・・」


確かに本来なら奇襲をしているはずなのにこんな所で躓かされるとは・・・


「・・・・・・・・・(肩で息をしている)・・・・」


リカイも辛そうだ・・・あと少しだ頑張れ・・・・


「はあ・・・はあ・・・1つ聞かせてくれ、どうして俺達魔族に攻めかかる・・・こちらからは攻撃していないはずだ・・・・・・・・・」


俺達が息を整えていると、目の前の魔族は素っ頓狂んな事を言ってきた・・・


あっ?何を言ってるんだこいつは?


「・・・・・・・・魔族が何か言ってるわね?・・・・」


本当だな!耳が腐る!!


「魔族は存在するだけで邪悪な存在だろう?攻撃して何が悪い?」


そうだ、神の御心が解らない魔族など滅ぼさなければ・・・神の意志を執行する者、その為の勇者だ


「教典にも魔族は存在だけで害悪・・・神の敵とされています・・・魔族を滅するのは神の思し召し・・・ほら見なさい・・・この力を・・・」


そう言って、神の加護で強化した魔法をエイブは放つ・・・そうだ!これだけの加護・・神の力を持っている俺達が負ける訳が無い!!!


「神から貰ったこの力で、お前達を根絶やしにしてやる!!!」


そう言って、俺は切りかかる・・・全員、攻撃をしようと突っ込む・・・・だが、次の瞬間俺達はぶっ飛ぶ・・・何が起きた・・障壁は?リャルとエイブは張って守っていたはず・・・なのに何故こんなに痛い?そして、一瞬映った子供の魔族の傷は全てなかったかのように癒えていた・・・


「何なんだ!!何なんだよ!!!!これ!!!!!」


俺は叫ぶ・・・それしか出来なかったからだ・・・次の瞬間左腕が飛ぶ・・・・はは、これで両腕一回ずつ切り飛ばされたな・・・そんな事を他人事のように考えていると、リカイが魔族の後ろに居た・・・・そうだ・・・今がチャンスだ・・・殺せ!俺の事しか見ていない今がチャンスだころ・・・


次の瞬間、どうみても人知を超えた動きで、リカイは真っ二つにされる・・・


・・・・・・・・・はは・・・・・・何だよそれ・・・・・・・・・


・・・・・・・その後のことは余り覚えていない・・・・・あの後戦場を駆けずり周り気づいたら、俺達は街の教会に居た・・・・


旗頭である俺達が死んだり、大けがをしていた為、街まで引き返したと後から教えてもらった・・・・・・・・はは・・・・・・あれだけ神から支援をもらったのにおめおめと帰って来た?はは・・・ははははっははっはあっはははあはははっは・・・・・・・・・・


それから一週間後俺達は軍を見ている・・・100万という大部隊だ・・・


「これだけの軍勢であれば負けないだろう・・・しかも神はこの100万の兵士にも加護を与えて下さると言って下さっている・・・・」


そうエイブが言ってくる・・・・関係ない・・・


「そうよ!これだけの軍勢が居れば負けないわ!!前の戦争で不覚を取ってしまったけど、これだけ居れば負ける方がおかしいわ!!!!」


そう、リャルが言ってくる・・・関係ない・・・


「それにしても、お前達が死んで帰ったり、大けがを負うなんてないまだに信じられん・・・・」


そう、ウェンが言ってくる・・・・関係ない・・・あの魔族以外関係ない・・・・


「それなのよね・・・・あの魔族本当に何だったのかしら?」


「魔王はウェンが相手をしていたのですよね?本当に謎だ・・・」


「ああ、俺は確かに魔王と・・・」


「だとすると・・・」


「でも・・・」


リカイを除く3人が喋っている・・・・関係ない、関係ない、あいつが何者何て関係ない・・・関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない関係ない


ドン!!


俺は思わず、後ろの壁を叩いていた・・・3人が俺の方を見るが関係ない・・・


「ぜってー殺してやる!!!」


俺の心の中にあるのはその一点だけだった・・・

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