世界魔女編
第7話 悪魔に魅入られた家族
第1節 烙印の少女
ここは地方都市ラピス。
それなりに大きく、それなりに沢山の人が住むこの街には魔女がいる。
世界に七人しか存在しないという『七賢人』が一人。
永年の魔女ファウスト。
そしてその弟子――
「あ、メグだ! やーい、ブサイク、スッピン、陰キャ」
「誰がブス陰キャじゃ殺すぞこの糞が! ミンチにされたいんかおどれぇ!」
見習い魔女こと、私、メグ・ラズベリーである。
見習い魔女とは言え、私の生活に暇はない。
毎日が魔法の修行と勉強、そしてお師匠様に与えられたおつかい――偉大な使命の遂行に邁進しているのだ。
しかしながらこの生まれ持っての美貌と人徳がそうさせるのだろう。
こうして街に出ると、毎日のように人々が寄ってきてしまう。
特にこの美しい心に魅了されたガキども――子どもたちが。
そんな子どもたちの相手も、私はしてあげているのだ。
「メグって何歳?」
「あぁ? 十七だけど……」
「見習い魔女歴何年?」
「十七年だよ」
「あれ、私テレビで見たけど、普通の魔女は十年で独り立ちするって」
「僕もみた!」
「俺も! やーい、万年見習い!」
「うるさいわ! お前らなめとったらその首引きちぎってアラカルトにしてまうど!」
「わーい、怒ったぁ!」
そう……相手してあげているのだ。
「ふぅ、ふぅ、今日は一段と口悪いなこいつら。今度人糞のお風呂に入れたろ」
子どもたちがキャッキャッ言っているのを横目に私が不穏な独り言をつぶやいていると、ふとあるものに目が奪われた。
子どもたちの中の一人、とある女の子の首筋に、火傷のような跡があったのだ。
「ねぇ、あなた。えっと……」
「メアリだよ?」
「メアリね。いや、その首筋どうしたのかなって」
メアリの首には、まるで焼きゴテで焼いたかのような跡がくっきりと浮かび上がっていた。
紋章、印、烙印。
そんな印象を受ける跡だ。
しかし、私の言葉を聞いたメアリは「傷?」と首を傾げた
「うん、ほら、火傷したあとみたいなのあるでしょ」
「えー? ないよ」
「そんなはずないって。ほら、みんなも見てよ」
私の言葉に子どもたちが集まってメアリの首元を覗き込む。
しかし、皆、不思議そうに首を傾げるばかりだった。
「何もないぞ?」
「変なの」
えっ?
どう言うことだ?
メアリの傷跡はかなり目立っており、普通であれば見逃すことはない。
それに気が付かないと言うことは、子供達には見えていないということか?
そこで気づいた。
子供達だけじゃない。
普通の人には見えないんだ。
魔力を持たないと見えないものは、この世に一定数存在する。
魔力の流れ、あるいは……呪い。
「メグ訳わかんねー。何もないのに『火傷だー』だって」
「ファウスト様にこき使われすぎて頭がおかしくなったのよ」
「やーい、社畜ー」
「社畜って言うより奴隷じゃない?」
「万年見習いの従属奴隷ー」
「誰に物言っとんじゃぶち殺されたいんかワレぇ!」
子供達にブチ切れながらも、私の頭の中にはその烙印が引っかかっていた。
胸騒ぎがする。
この感覚は、覚えがある。
誰かが死ぬ前に感じる、嫌な胸騒ぎだ。
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