第九場 戦士の誓い
○500年前・空の街
チャスカは自室で、両親に祈りを捧げている。アントニはチャスカの部屋で曲の最終調整をしながら、戦士に連れ去られたリュイスの身を適当に案じている。
【SE:街のざわめき】
チャスカ「お父さん、お母さん。今年はね、新しい歌が生まれるの」
アントニ「『魂の日』って、どんな祭りなんだ?」
チャスカ「ご先祖様に、見守ってくれてるお礼をするの。毎年踊り子と歌歌いで街を盛り上げてね」
アントニ「なるほど……」
チャスカ「華やかだった方が『暁の乙女』って呼ばれるの。もちろんアントニの歌だもの、負けるはずないけど!」
アントニ「そりゃ、責任重大だ。……じゃあ、今日のこれは?」
チャスカ「前夜祭」
舞台が明るくなると、街の女性たちにリュイスが捕まっており、装飾や服装やらを弄くられている。困惑するリュイスと、張り切るケミィ。
リュイス「何だこれ! どういうことだ!」
ケミィ「(ワクワクして)お前、戦士だろ? 街の連中じゃ相手にならんからな。今年はいきなり決勝だ!」
リュイス「こ、この……客人をいきなり滅多打ちって、野蛮人かよ!」
ケミィ「何ィ!」
ケミィ、準備途中にも関わらず槍を構え臨戦態勢に。その様子にアマルが呆れて止める。
アマル「おいケミィ、まだ始まってねえ!」
戦士A「気ぃつけろよ、当たると谷底まで吹っ飛ぶぞ!」
茶化す戦士をケミィが肘打ちし、戦士は声もなく悶える。自分と出会ったときと全く違う、楽しそうなケミィの様子を不思議がるアントニ。
アントニ「なあ、ケミィが俺に冷たかったのってさ」
チャスカ「『他所からエモノが来たと思ったのにガッカリだ』って言ってたよ」
アントニ「(呆れて)ああ、そう……」
チャスカ「良かったなー、ケミィの相手ができて!」
アントニ「(リュイスへ同情)そうかなぁ」
リュイス「喋ってないで止めろよ!」
ティッカ「何よ、男のくせにピーピーと。逃げるつもりならさっさとやめたら?」
舞台の後方から、ティッカがやじを飛ばす。
リュイス「あー? なんだ、お前」
ティッカ「ふん」
ケミィ「うちの踊り子に手ぇ出すなよ?へっぴり腰じゃ火傷するぞ」
リュイス「何おう!」
ケミィの挑発にリュイスも槍を構え、ついに臨戦態勢に。開始タイミングを見計らっていたアマルは投げやりに戦いの鐘を鳴らす。
アマル「もういい、始めだ!」
ティッカ「戦士たちの勇姿を、ご覧あれ!」
町の人々、殺陣をはやすように踊る(ティンク)。山に血を捧げる戦士の舞い。
♬戦士の誓い
全員"oyoiyoiyoi..."
"舞え 風切る その腕を 空に交えて (ja!) "
"捧げよう 大地へ さあ 戦いの歌を! "
"散る華は 山を濡らし 赤く咲かせて (ja!) "
"ここに 示せ 誉れ高き 英雄の名前! "
"戦うのは 誰がために その手を挙げて "
"守り抜くのは 彼らの思いを"
"明日(あした)へ届け "
女性たち "戦うは "
男性たち "誓おう その手に "
女性たち "誰がために "
男性たち "守る この空 "
全員 "誓いを! "
ケミィとリュイスの打ち合いには決着がつかず、一旦退場。街の人はその熱気にあてられたように、戦士の踊りを合わせる。
全員 "舞う 海風 勇士の腕は 空に交わり (ja!)"
"心揺らす 大地よ 知れ その戦いを! "
"太陽は 山をいだき 戦士を照らした"
"ここに示す 新しき名を 強き人の名を!"
"振るう槍は 守り人の盾 その手を掲げて "
"戦い抜くのは 友のために
女性たち "戦いは"
男性たち "祈りは 力に"
女性たち "誰がために"
男性たち "生命を守り"
全員 "捧げよう! "
演奏が盛り上がり、ケミィとリュイスは最後の決着を付けるため打ち合う。
全員"Ah..."
アマル「勝者は!」
ケミィ「リュイスだ」 リュイス 「ケミィだ」(同時に)
二人「……はぁ?」
アマル「(苦笑して)仲がいいこった」
二人の実力は拮抗していた。ケミィをあわや打ち負かそうとしたリュイスを、ティッカが褒め称える。
【SE:街のざわめき】
ティッカ「リュイス! 凄いじゃない、ケミィに勝つなんて!」
アマル「おっ、手のひら返しがはええな」
アマルもティッカにのされ、悶える。姉妹から同じような扱いを受ける。
ティッカ「(照れて)強い人を祝福するのが踊り子の役目なの! あ、それとリュイス。貴方の槍ってすごく……」
リュイス「ん?」
ティッカ「……すっごく駄目、まだまだね!」
リュイス「このっ……黙って聞いてれば!」
ティッカ「あははっ! じゃ、また後でねー!」
ティッカ、怒ったリュイスを交わしながらハケる。アントニ、チャスカの紹介時に茶化されたのを仕返すようにリュイスへ絡む。
アントニ「(茶化すように)だってさ」
リュイス「何が」
アントニ「いや、別に。ふむ、「英雄の名」ってとこだな」
アントニ、持ち歩いている書物に譜面を書き記す。
リュイス「……おい、さっき何書いてたんだ?」
アントニ「新曲」
リュイス「何だよ、変なこと書くなよな!」
前夜祭が終わり、魂の日の祭りの準備。街の人がゆきかい、賑やかな様子になっていく。
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