第70話
勢い良く階層ボスの部屋の扉を開けると、そこに待ち構えていたのは、親玉の
フライングジェリーフィッシュは、飛んでいるというよりは、宙を漂っていると言った方が正確かもしれない。
その浮遊速度は、さほど速いものでは無いが、長大な触手が無数に予測戦闘領域に張り巡らされていて、邪魔なことこの上無いので、ここは敢えてクラゲ共を先に落とすことにする。
先制攻撃の風魔法を、
まず手前のフライングジェリーフィッシュにワンドを向け、
そして、モンスター達が反応らしい反応を示す前に、続けざまに魔法を放ち、奥のクラゲも撃破。
もう1発……と思ったが、足の遅いカメを置き去りにして、
ボスダコはそうでもないが、グラトンコンストリクターは、それなりに高速で、どうにか魔法で落とせたのは1匹だけに留まった。
天井から襲い掛かるヘビ共の初撃を回避した後は、部屋の広さを上手く利用し、円を描くようにカメの方へ周り込む。
敵同士の速度差、そして敵とオレとの間にも速度差があるので、この分断策は見事に成功。
ここでワンドはインベントリーにしまい、鎗に持ち換えて、ジャイアントタートル2匹も無傷のまま排除することが出来た。
ここで振り返って、残りの敵の位置を確認すると、少し離れたところにボスダコ、そこから少し奥にヘビ2匹で、今にも追い抜きそうな格好だ。
そのまま、ヘビだけが先行してくるなら、楽な展開だったのだが、さすがにそう上手くはいかなかった。
足並みを合わせて、グラトンコンストリクターが前衛、
まぁ……それならそれで、幾らでもやりようは有るのだけど。
ここで、オレは敢えて後退し、さらに彼我の距離を離す。
そして……また武器の持ち換え。
狙いを
10本も有ったタコ足は、今や6本を残すのみ。
グラトンコンストリクターは、どうにかボスダコを庇おうと必死に身体を伸ばすが、
それに、この展開になったからには、
ぐるぐると部屋を回るようにしながら魔法で攻撃を加える傍ら、時おり連中の側面や背後に周り、鎗に持ち換えて急接近しては、鎗の側面の月牙を活かして、そのタコ足を切断していった。
魔法で切り裂き、鎗で切り落とし、
こうなっては
前回、オロチに
残りの8本が胴体に変わったと見るなら、それは既に切り落とされた後だ。
今さらタコの姿を辞めたところで、極めて胴の短いオロチでは、上手くバランスも取れまい。
既に死に体といった
これでようやく、
瘴気だけは喰らいたくないが、既にオレの残りMP(マジックポイント)も、あまり多くないような気がする。
先程ほんの僅かに、目眩の様な症状に見舞われたのだ。
オロチモードになっていない
速度差を活かして、さらにタコ足を2本斬り落とし、今さら瘴気を喰らわないように、背面から滅多刺しにしてやると、前回の苦戦が嘘のように呆気なく、白い光に包まれ消えていった。
【風魔法】に加えて、柏木氏に新しく作成して貰った鎗のおかげではあるのだが、改めて武器と敵との相性の大切さ……そして、既知と未知との違いが
さて……思っていた以上に短時間で、予定していた分の探索が終わってしまった。
もう、あまり魔法に頼ることは出来ないが、第5層の間引きは少しでもやっておきたい気持ちもある。
……どうすべきだろうか?
慎重を期すなら、夜の探索に備えて一度帰宅するというのも、もちろんアリだとは思う。
ただ、消耗しているのがMP(マジックポイント)だけなのも事実で、体力、精神力とも、むしろ充実しているように感じる。
それならば、昨日までの魔法が使えなかったオレが探索するのと、さほど変わらないとも言えるだろう。
よし……悩んでいる時間も勿体ない。
こうしてオレは、長く足を踏み入れる者も居なかったであろう、第5層へと続く階段に歩を進めることにしたのだった。
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