第19話

 久しぶりに見る宝箱は、サイズとしては小さいものに分類されるものだった。

 今までにも様々な大きさの宝箱を見て来たが、大きなサイズのものの中に、ちょんまり貴重かつ小さなアイテムが入っていたことも有って、実はサイズはアテにならない部分もある。

 しかし、小さな宝箱に入りきらないぐらい大きなアイテム……ということは無いらしい。

 大は小を兼ねるが、その逆は無いということだ。

 もちろん見た目に反して、たくさんの物が入る収納バッグ類も有るのだから、絶対とは言い切れないのだが……まぁ、それは例外中の例外だろう。

 第1層の階層ボスが落とした宝箱だからといって、中身がショボいとは限らないが……過度の期待もせず、粛々と中身を確認する。

 中には、千社札せんじゃふだのような意匠の護符が1枚……ペラっと入っていた。

 ……?何だろうコレは?

 見たことが無いということは有用なアイテムである可能性も高いのだが、まるで効果の分からないアイテムなので、リアクションも取りにくい。

 デザインは和風に寄り過ぎているが、書いてある文字は見事に読めないのだ。

 東側の戦利品は、見事に魔石と僅かなポーション類だけだったので、コレが良いアイテムなら嬉しい……さて、帰ろう。

 時刻は17時を回って、既に17時半に近い。

 いくつか効果の分からないアイテムを簡易鑑定機に掛ける手間も考えると、帰りは少し急いだ方が良いだろう。


 少しだけ警戒していた、若者連中との望まぬ再会も無く、無事にダンジョンゲートを出て、申し訳程度の作りのダン協の買い取り所に向かう。

 受付で暇そうに文庫本を読んでいた女性(年齢は高め……)が、驚いたような顔を見せたが、すぐに営業スマイルを浮かべて出迎えてくれた。


 異変が起きた後とは言え、いまだ魔石の相場は二束三文のようだが、あまり多くを自宅へ持ち帰ると悪目立ちするので、キープはそこそこにして残りを売り払う。

 ポーション類は迷わず全て持ち帰り。

 謎の薬瓶、指輪、千社札は簡易鑑定機に掛けて貰う。


 誰も居ない待合室の椅子に腰掛けて待つこと数分。


「番号札1番のお客様~」


 鑑定が終わったようだ。

 鑑定料金を支払い、鑑定結果の記されたB5サイズの紙を3枚受け取る。

 オレと職員のお姉さん以外、周りに誰も居ないので、特に警戒する必要は無い。

 その場でサッと目を通す。


『腕力向上剤……およそ1割ほど、永続的に腕力が向上する。身体的な見た目に変化は起きない』


『ラックの指輪……幸運が訪れ不運を退しりぞける。凡そ2割弱の期待値。必ずしも指にめる必要は無い』


『甲殻の護符……防具の内側に貼り付けることで、ギガントビートルの甲殻と同程度の防御力を、元々の防具性能に付与する。着脱自在』


 3つとも今のオレにとっては、大当たりの部類だ。

 もちろん買い取り依頼や、オークション出品依頼をすることなく、現物を返却してもらう。


 大収穫だが、家に帰るまでが探索だ。

 アイツらにまた遭遇しないうちに、ここを出よう。

 オレは外に出現するかもしれないモンスターを警戒しながら、帰路についたのだった。

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