第12話
過ぎたことを考え込んでいても仕方ないし、更なるモンスターの出現が無いとも限らない。
とにもかくにも、買い物を終わらせてしまおう。
スーパーで買える物については、これからの世の中では特に重要度が高くなると予想される。
野菜や果物はもちろんだが、特に今後の供給が危ぶまれるのは魚介類や食肉、そしてそれ以上に玉子と乳製品。
パンなんかも凝ったものは、どんどん手に入りにくくなるだろう。
ライトインベントリー内に入れた物は、時間が止まるとかなら良かったのだが、残念ながら時間経過が緩やかになる程度だし、容量もそこまで大きくは無い。
さすがにスーパーにある物を買い尽くす勢いとまではいかないが、限界スレスレまで選んだ物を買い込んでいく。
先ほどのホームセンターに比べても、普段より客足が多いように思えるし、各々が買い物している量も多いように見える。
年齢層が高めなのもあって、どうやら有人レジの方が混雑しているようだ。
オレは迷わずセルフレジの列に並んだ。
セルフレジは列の消化が目に見えて早かったが、それでも商品を選んでいた時間も合わせると、スーパーで30分近くロスしていた。
心持ち早足で隣接するドラッグストアに急ぐ。
薬剤師は田舎の店舗ゆえ、常には居ないのだが、特に当たり障りの無い薬品を選んで、手早く買い物を済ませる。
もちろん、傷薬や湿布などの外用薬は多めに購入した。
ダンジョン産のポーション類は、かなり良い値段だったが、それももちろん手に入れることにする。
車に乗り込み、念のためとルームミラーはじめ周囲を見回すが、モンスター出現の兆候は見受けられない。
車を走らせ今度は大型のドラッグストア(ごく近所に別のドラッグストアが有るのだ)へ。
お目当てはスーパーに置いていなかった食品類や、先ほどのドラッグストアには無かった薬品類。
危うく買い忘れそうだったが、妻に頼まれていた子供用の歯ブラシ、ついでに大人用もカゴに入れていく。
各種洗剤や子供用のオムツ、レジ横に置いてあった絵本も買うことにした。
ここでも在庫のポーション類は迷わず購入。
オレにもダンジョンで入手したポーションを、買い取り所の窓口で売ったことはある。
そうレアな物でも無いし売却額も知れたものだが、その時の売却額と比べると多少のボッタクリ価格に思えて仕方がない。
既に正午に近い時間だ。
ここらで家に帰ることにしよう。
特に何事もなく車を置いて、玄関を開ける。
「ただいま~」
「おかえり。ヒデ、お前大丈夫だったか?すぐ近くでモンスターが出たらしいぞ?」
玄関まで出てきた兄が、怒ったような顔で口を開く。
「ん?それってジャイアントスパイダー?」
「いやゴブリンらしい。お向かいの二階堂さんがさっき金属バットで……って、ジャイアントスパイダーって何のことだ?見たのか?」
あっ……やぶ蛇だったかな?
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