第14話 姫たち集め

「いま何人いるのかなあ?30人くらいかな?」


 なんと、中村さん直々に、美月の投稿にコメントが来てたのだ。中村さんは、いいね、やコメントの返事はしてくれるけれど、ファンの投稿にコメントすることはない。またこれで美月がいい気になる、わたしの嫉妬心がメラメラと燃え上がり、益々、美月のことが嫌いになった。


「Twitterで聞いてみましょうか笑」


 そう返事をした美月は、直ぐにTwitterでツイートをした。


「中村さんのファンのことを、姫たち、というのだけど、姫たちが50人になったら、中村さんがグッズを作るそうです。わたし姫、って人は、ここのツイートに手を挙げてね」


 中村さんがやればいいのに、美月がやっても、配信で繋がった人しか、それ見えないんだから、と若干わたしはイライラとしていた。


「はーい。わたしも姫です」

「わたしもです」


 10人未満の人が集まった。他にもたくさんいるはずなのだけれど、Twitterの美月のフォロワーさんだけ集めてどうするのだろう?中村さんのファンはTwitterだけにいるんじゃなくて、Instagramにも、ブログにも、そして舞台を観に行っている人もいるのだから。


 だいいち、自分のファンが何人いるのか把握していないのはどういうことなのだろうか。ファンとの距離が、誰よりも近いはずの俳優さんなのに。


 Instagramでも、返事をするときに、〇〇姫、とひとりひとり呼んでいるではないか。


 わたしがコンスタントに応援できなくなり、もう何年も経つ。以前はファンのこと全員を姫とは呼んでいなかった。


 わたしは、TwitterでもInstagramでも、自分のアカウント名や作家名に、姫と付ける癖がある。なので以前から中村さんは、わたしのことを、その頃使っていた〇〇姫と呼んでいたのだ。


 あれからアカウント名も変わり〇〇姫というのは使っていないのだけれど、Instagramでの返事で、mammy姫と中村さんから呼ばれた。mammy姫?中村さん、誰か他の人の返事を、わたしのと待ちがえたのだろうか。そう思って、あっと思った。Instagramのアカウントが、わたしはmammyなのだ。名前はみゆきとしているのだけれど、コメントをするときには、ローマ字のmammyしか見えない。だからmammy姫と中村さんは言ったのだ。たまに、そういうところのある中村さんなのである。天然というのは失礼なので言わないけれど。他の人への返事を見てみると、全員に〇〇姫と呼んでいた。


「mammy姫って何かと思いました(笑)中村さん、わたしも姫の仲間なのですか?」


「そうだよ。俺のファンの子はみんな姫だからね」


 いい年をしてるのに、中村さんは、わたしを姫扱いしてくれる。中村さんは、わたしの方が年上なのは知っているのだけれど、わたしに対しても、他の若いファンの子と平等に接してくれるのだ。


「美月さん、わたしも中村さんから姫と呼ばれたので姫なのかな?」


 わたしはTwitterで美月の了承を得るという嫌なことを、やりたくはないのだけれど、中村さんの姫たちが50人集まればグッズを作るという、昔書いたブログにもあった夢のために、美月に話しかけたのだ。


「中村さんが姫と呼んだのなら姫だよ」


 ああ、そうですか。


 中村さんが、美月のツイートをリツイートしたので、中村さんのファンが、美月のツイートに「姫です」とコメントに来て、なんとか30人の姫たちが集まった。


「あと20人かぁ」


 中村さんまでもが、美月のツイートにコメントしている。


 どこまでも、付け上がるじゃないの、美月が!とわたしは悔しい思いをした。


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