30.真打登場 其の五

 駆け寄ってきた早坂あかりが脚をもつれさせて倒れそうになるのを、新九郎は手を伸ばして抱き止めた。

「見事だ、早坂くん」

「先生? わたし、今……」あかりは頭を抑える。胸元ではヘドロン飾りが輝きを脈動させる。「何かが、頭の中を、とにかくたくさんのものが、わたしを通り抜けて」

「君が訳したものはこの世界を規定する文書、そのものだ。よくやってくれた。後でゆっくり話そう」

 あかりはその場で膝を屈する。「すみません。なんか、力が……」

 そして遥か頭上、黄金の輝きを放つ怪鳥の嘴の上で、髭面に白服の男が叫んだ。

「なぜそこにいるんです、探偵さん!」

「残念だったな。貴様を、世界を渡る旅人にはさせない」

「再翻訳。復号。夢を守ったとでも?」

「どうとでも解釈したまえ。しかし、鍍金仕上げは黄金に非ず。黒鋼の力を思い知れ」

「……ならば力で叩き潰すまで。あなたを!」

 選留主の姿が嘴の中に飲み込まれて消える。

「やってみろ、三流教祖。身の程を教えてやる」

 そして眼鏡のつるに手を触れ、しかし新九郎は一旦手を離し、被っていた帽子を取った。

「どうもね。何か忘れていると思ったんだ」

 新九郎は、足元で荒い息をするあかりに、その帽子を被せた。

 あかりが顔を上げる。「わたしも、頭が落ち着かないと思ってました」

「すぐに戻る。そいつを頼むよ」

「先生」帽子を確かめて、あかりは口を尖らせて言った。「カッコつけてないで、早く! みんな待ってるんですから!」

「それは失礼した」

 新九郎は進み出る。翼を広げる〈金色夜鷓〉を真正面に見据え、眼鏡のつるに隠された釦を押した。

星鋳物ホーリーレリクス第七号ナンバーセブン、〈闢光クラウドバスター〉……鎧よ来たれ!」


 怪鳥の嘶きが瓦礫の山と化した上野駅前に木霊する。とうに陽は暮れ、東の空には天樹と朧月の共演。東方、墨田の流れを越えた先へと逃げ出した市民たちと、そこに紛れた喫茶店主の夫婦が、空を見た。千住吉原に根を張ったように動かない楼主の女も、やはり空を見た。破壊の轟音を聞きつけて壊れかけの車で走っていた東京警視庁異星犯罪対策課の刑事ふたりも、空を見た。身体に合わない筋電甲を装着して戦いの中心へと駆けていた傷だらけの少年も、立ち止まって空を見た。二ッ森姉妹が背中合わせに全電甲の群れを警戒しながら、空を見た。三位一体の〈兼密・怪〉となった犯罪者と不法入星者の三人組も、空を見た。金の爪に押し潰されながらも抵抗を続ける青い星鋳物と、その中の青い肌の男も、舌打ちして、空を見た。そして自分が何をしたのかも、これから何ができるのかも知らない少女の頭上に、星虹の光が降り注いだ。

 帝都を覆う雲を蹴散らすように、円形の超次元力場が開く。その奥から虹色の光を引き連れて、黒鋼の悪鬼が姿を見せる。鬼はなぜ人里に現れるのか。悪事を働く者を、懲らしめるためだ。

 鎧を纏った修羅。その表面は、鋳造された鉄器のように黒く、凸凹が多い。両脛には反り返った燻銀色の脛当。一見すると先へ行くほど細くなっているように見えるが、頼りなさには程遠い。短い草摺から伸びる大腿部も、黒色の装甲に覆われている。当世具足がごとき肩と胸の鎧は、甲冑の大袖と喉輪を象ったような積層装甲。隙間からは断続的に蒸奇の翠光が散る。列車のように太い両腕の、これも燻銀色の篭手には刃を阻む鉄筋が走る。

 胴に比べて大きい腕と、小さい脚。逆三角形の不均斉な輪郭は、人型をして人ならざるものを見るものに想起させる。

 そしてついに現れる、頭部の偃月飾りと、額に光る翠の光球。頬当てに守られた顎部は怒りに歯を食い縛ったよう。

 着地の寸前、反重力の制動をかける。それでも轟音が、巨大な太鼓を叩いたように、もぬけの殻の上野駅前に響き渡る。車や瓦礫が跳ね上がり、送電線が振動する。規格外の蒸奇機関の煽りを受けて街を作る異星砂礫が崩れ、ただの砂になって舞い上がった。

 天下無敵の星鋳物第七号〈闢光〉。その背に、男物の帽子を被せられた、簡着物の学生服の少女がひとり。早坂あかりである。跳ねるように駆け寄った赤い短髪の女、二ッ森焔が、あかりを抱えて撤退する。

 そして星鋳物の胸中で、伊瀬新九郎はトグルスイッチを次々と立ち上げダイヤルを捻り、頭上から降りてきた一対の操縦用の機械筒に腕を通し、眉間に皺を寄せて言った。

「おい、時計。聞いているだろう」

「箱の始末は我々にお任せを」クロックマンが電想通信で即座に応じた。「〈朧諸星サイデリアル〉の禁を解除。小野崎徳太郎はラプラス・セーフティの対象外に設定しています」

「助かる。後は任せろ」

 通信が切れる。〈闢光〉が歩を進める。

 鉄の歩みが街に響く。一歩ごとに大地が震え、建物の壁面からヒビの入った硝子が落ちる。装甲板の隙間から翠緑の煙が巻き散らかされ、巨大な手脚がその煙を蹴散らしていく。見上げる者を畏怖させ、立ち塞がる者を恐怖させ、背に守られた者にもう大丈夫と語りかけるような、四〇米の巨鉄塊。翠玉宇宙超鋼の黒は、夜の闇よりなお暗い。

 その星鋳物の操縦席。伊瀬新九郎の耳朶を、女の叫び声のような嘶きが打った。

 闇をかき消さんと輝きを放つ、金色の怪鳥。偽星者〈金色夜鷓〉が、左右の翼を大きく広げ、嘴を空へ向けて鳴き声を上げる。そして、一六対三二枚の、骨格に接触せずに浮遊したまま翼を作る羽根の一番外側から二本が、根本を前方へ向けるように捻りを入れながら回転。二対四門の回転式六連蒸奇光弾砲が〈闢光〉を照準し、火を吹いた。

 絶え間のない甲高い発砲音。だが、夥しい数の光弾の、ただの一発たりとも、〈闢光〉の装甲を焼くことはない。空中に生成された、超高出力の光波防壁ペンローズ・バリアが飛来する光弾をすべて弾き飛ばしていたのだ。着弾点で、知性の証たるペンローズ・タイルが光の筋として可視化され、〈闢光〉の進行方向に光の籠が出現しているように見える。

 流れ弾が左右の建物を穴だらけにし、方々から火の手が上がる。足元の仲間たちのことを案じる新九郎だったが、三位一体の〈兼密・怪〉が二ッ森姉妹と早坂あかりを庇っている光景に安堵する。

 執拗な着弾光に目が眩み、電探の反応が微弱になる。

 不意に止む砲撃。同時に、左右から乗っ取られた四八式〈兼密〉が迫る。さらに上方には五〇式〈震改〉。宇宙超鋼の刀を、落下しながら〈闢光〉へ突き立てようとしていた。後方にも五〇式。こちらは突進しながらの突きを狙っている。

 だが、光学と電子の目眩ましごときで警戒を疎かにする伊瀬新九郎ではなかった。

 憲兵隊仕様の都市迷彩灰色に塗装された鉄狒々の巨大な両腕が、〈闢光〉の腕を肩の鎧ごと抱える。それが左右に一機ずつ。なかなかやるじゃないか、と伊瀬新九郎は心中呟く。拠点防衛・砲撃戦のために建造された〈闢光〉は、直上と背後への迎撃を想定していない。射撃方向は常に前。背中を見せるような状況が即ち敗北を意味するような戦場への投入が、本来の〈闢光〉の役割なのである。

 そして背を向けざるを得なくなった緊急事態のために、禁術がある。

 左右の建物の屋上に一基ずつ、さらに建物の低層部と歩道を融合させながら二基のビームレンズが出現。自機の周辺に存在する微小機械群へ最上位の電文を送り、自在に制御できる蒸奇光線砲を生成することができる、星鋳物第七号に隠された必殺兵装〈朧諸星〉が、哀れな超電装らに襲いかかった。

 頭上から刀を突き降ろそうとしていた五〇式〈震改〉が、屋上から放たれた蒸奇光線の十字砲火の餌食となる。背後から迫っていた五〇式が、足元からこれも十字に放たれた蒸奇光線により火を吹いて爆散する。そして両肩に取りついていた〈兼密〉を、零距離の光が襲った。

 肩部鎧型積層装甲の内部に格納された蒸奇光線砲が、悪の手に落ちた鉄狒々を撃ち貫いた。

 その間、僅かに数秒。超電装の屍を四方に築き、爆炎を踏み越えて〈闢光〉は進む。揺れる炎が、鉄の肌に影絵を描く。

 さらに、伊瀬新九郎の目線が、前方画面と、流星徽章が変形した眼鏡に投影された電探の反応点を目まぐるしく巡る。狙うは、怪鳥の眷属と化した超電装たちだ。その数、残り九。これは、伊瀬新九郎の予想より少なかった。乗っ取られずに出動した憲兵隊の機体と交戦し倒されたものや、〈兼密・怪〉が獅子奮迅の戦いを見せた結果だ。

 〈金色夜鷓〉が動く。尚も抵抗を続ける〈斬光〉を蹴り飛ばし、長い尾で苛立ちを紛らわすように地面を叩く。そして翼を広げ、内側から数えて四枚目から六枚目の羽根が、根本の砲門を正面へ向けるように回転した。

 既に正体は割れている。〈斬光〉の奮戦の結果だ。新九郎は、機体のペンローズ・バリアの出力を全開にした。

 一発目、二発目、三発目。すべて、光の壁が阻む。蒸奇光弾を単装で放つものが片側三基並んで三点射撃する副砲だ。

 だが、連射は止まらない。三点射撃が一対、合わせて六門の副砲は、その一発一発が、超電装の装甲を貫通するほどの威力を有しているのだ。

 ペンローズ・バリアは二種の菱形を平面充填した形を取っているが、〈闢光〉の腹中に収まる蒸奇機関を中心とする球形になるよう湾曲している。射撃を受けるたび、菱形の筋が現れる範囲が拡大し、ついには着弾点だけでなく、球形が可視化される。そしてとうとう、光弾が減衰しながらもバリアを抜けて、黒鋼の翠玉宇宙超鋼を叩いた。

 それでも、もはや両者の距離は目前。執拗な射撃を、〈闢光〉の鉄壁の防御が上回ったのだ。

 すると、〈金色夜鷓〉が光の粒をばら撒きながら羽ばたき、翼を広げれば上野駅の駅舎よりも大きい巨躯が嘘のようにふわりと浮上した。なおも副砲による三点砲撃は続き、さらに六連回転式の火砲も加わる。ペンローズ・バリアに弾かれ、また翠玉宇宙超鋼に阻まれ加速度を失った蒸奇が文字通りの煙となり、〈闢光〉の四〇米に達する機体を半ば覆い隠す。

 新九郎は、目一杯の大声で怒鳴った。

「理久之進、北極野郎! なんでもいいから上に投げろ!」

「人使いが荒いな!」とポーラ・ノースの即答。戒めを解かれた〈斬光〉を起き上がらせもせず、片腕を動かす。碧鋼の装甲に、蒸奇亡霊の翠光が重なり、巨大な右手となる。そして掬える限りの瓦礫を頭上へと放り投げた。

「心得たり! よくわからんでござるが!」と理久之進。

「帰りたい帰りたい、これも早く帰るため」とフレイマー。

「てめえに手を貸したんじゃねえからな! 覚えとけ!」

 榊の絶叫。そして、〈兼密・怪〉の肥大した右腕が、力一杯反動をつけて、崩れかけた建物を基礎から天へと打ち上げた。

「だから君は誰なんだ」と新九郎は呟く。その間に、空に舞い上がった無数の建材が、寄せ集まって姿を変える。〈朧諸星〉の小型砲台である。

 空へ逃れようとする〈金色夜鷓〉の頭上に一基。正面に二基。背後に一基。左右に二基ずつ。足元からも二基。数えて一〇の砲台が、逃すまじと一斉に火を吹いた。

 さらにその爆煙を取り囲むように一〇、その外側にさらに一〇の砲台が出現。絶え間ない砲撃を見舞う。〈朧諸星〉の名は、着弾の煙の中で尚も光弾の閃く様を評したものなのだ。

 反応が降下。暗翠の煙に包まれながら、〈金色夜鷓〉が落下する。

「見事でござるぞ家主どの!」と理久之進が超電装の手を叩いて喝采する。

「ま、ざっとこんなものさ」と新九郎は応じながらも、〈闢光〉の両脛と胸部左右、軽四門の光線砲は射撃態勢。

「これで墜ちれば御の字だ」ポーラが言い、〈斬光〉が処刑刀を杖にして立ち上がる。

「おお、そいつは正しい用法だ。優秀な翻訳機だな」新九郎は口笛を吹く。「御の字ってのは、とりあえず合格ではなく、これ以上なく最良という意味で使うんだ。元を正せば廓言葉でね……」

「どうでも構わん。機械はいつでも正確……」

 叫び声のような、怪鳥の鳴き声がポーラの言葉を遮った。

 そして煙が吹き散らかされ、〈金色夜鷓〉の姿が顕になる。

 翼を畳んでいるが、切り離された羽根が機体周辺を周回運動している。六枚は、組み換え自在な機動防壁。これを二枚一組とし、機体三方を守っている。表面の鍍金には、さすがに焼け焦げが目立っている。そして隙間を埋めるのが、〈斬光〉との空中戦で用いた、光波刀を発生させる機動攻刃だ。これがやはり二枚一組で高速回転し、光の盾となって防御の隙間を埋めている。

 本体の傷は僅かに一箇所。肩の辺りに一発だけだった。着地した足元では、猛禽のような脚と、三本爪の生えた尾が機動砲台を破壊していた。

 新九郎が舌打ちし、〈朧諸星〉が射撃を再開する。一方の〈金色夜鷓〉も、今度は防ぐばかりではない。翼の六連回転式光弾砲と副砲がすべて別の方を向いて滅茶苦茶に乱射する。

 目まぐるしい光の応酬。流れ弾が上野戦勝記念公園に着弾し、樹木に火が回る。建物も、線路も、何もかもを灰燼に帰すような暴力の嵐。〈朧諸星〉からの光線は届かない。それどころか、次第に数を減らしていく。

 さしもの新九郎も瞠目した。眼鏡の上には、電子地図に重ねて戦場に生成した〈朧諸星〉がすべて表示されている。その輝点が、次々と消滅していたのだ。

 幾つかは、乱射される光弾に破壊されている。だがそれにしては速く、正確すぎる。

 後退していく〈斬光〉と〈兼密・怪〉を尻目に、ならば、と〈闢光〉本体の砲門をすべて開いて連射する。すると、六枚の機動防壁が交差しながら集結して射線を塞ぐ。〈朧諸星〉の方の光線は、ペンローズ・バリアに弾かれる。

 押し切れない――互いに悟り、射撃を同時に中断。飛び回っていた〈金色夜鷓〉の羽根が正位置に復帰する。

「仕組みは同じなのですよ」選留主の声が電想通信から聞こえた。「この〈金色夜鷓〉を建造し、そして今は自己修復機能の中核となっているものと、あなたの〈朧諸星〉とやら。通信を傍受するまでもない。同じ場所に別の無意味なものを作れば、機動砲台は機能停止する。後は地力の差です」

「こちらの再生成能力を、貴様の無意味が上回っていると」新九郎は江戸前の悪態をついて、続けた。「生者と屍の差か」

「ええ。同じ〈奇跡の一族〉といえど、あなたの星鋳物に宿るものは、遺体に過ぎない」

「だがそんな戦いでは直に燃料切れだぞ」

「駆け引きをしている余裕がおありとは。いや、口先八丁が商売道具でしたな、探偵さん」

「奇跡を騙る手品で商売してるやつに言われたくはないね!」

 両脛、両腕、両肩鎧、胸部左右の光線砲を一斉射。そして〈闢光〉が、〈金色夜鷓〉に背を向けた。

 背後から忍び寄っていたのは、電装王者エレカイザー三世。砲撃の雨から逃れ、必殺の電装荒神剣イナヅマ・ブレヱドに雷撃を溜め込み、機を窺って穴だらけの建物の陰から飛び出してきたのである。

 だが、振り被った必殺剣より、振り向きざまの拳の方が速い。

 廃墟の町に鋼が砕ける鈍い音。黒鋼の右腕が繰り出す直拳が、エレカイザーの獅子を象る胸部を、もはや命のない全電甲が座る操縦席ごと叩き潰した。

 数十米も吹き飛ぶエレカイザー。その彼方に天樹が見える。そして警報音が〈闢光〉の操縦席に鳴り響く。

 背後で、〈金色夜鷓〉が奇妙な構えを取っていた。膝を屈し、上体を伏せ、畳んだ翼を支えにして首だけを前方に突き出す。そして嘴が開き、内部の鮫のような歯と、喉奥から三段に迫り出す砲門が、雲越しの月光を受ける。

 外道め、と新九郎は毒づく。

 ポーラ・ノースと〈斬光〉の戦闘は逐一情報を共有した。最も恐れるべきは、〈金色夜鷓〉の武装のうち最大の威力を持ち、〈斬光〉に大損害を与えて渋谷の街を焼いた、顎部砲だ。そして選留主は、無辜の市民を巻き込むことを躊躇わない。嘘の世界の住人が傷つくことは、彼の心を傷めないのだ。

 低い射線。〈闢光〉を狙うだけならば俯角を取ればいい。そうしないのは、同時に隅田川の対岸を狙い撃つためだ。蒸奇光線は距離に比例して減衰するが、避ければ天樹と、天樹の麓に避難した市民が無事では済まない。

 〈闢光〉が、両腕を腰溜めに構えた。

 両手を開き、全ビームレンズを開放。両腕を、指先を揃えて前に突き出す。

 〈金色夜鷓〉の顎部砲、そして同じ射角を確保した、翼の内側から三枚を占める計六門の主砲に光が宿る。

 〈闢光〉が両腕を左右に広げる。すると、正面に機体全高と同等の巨大なレンズが出現し、全身に内蔵した九つの蒸奇光線砲の出力が収束する。

「まったく度し難いものです、スターダスターとは」

「地球の平和を守る稼業だからね!」

 振り返る〈闢光〉――新九郎の眼鏡に砲門の臨界を告げる銀河標準語A種が流れ、〈闢光〉が胸の前で拳を重ねた。

 仮想ビームレンズから迸る、〈闢光〉内蔵武器を用いた最大の火砲。同時に、〈金色夜鷓〉の顎部砲と主砲が眩い光を放つ。

「七星変怪・大炎熱下天光」

「蒸奇殺砲!」

 超々高出力の蒸奇光線同士が真正面から衝突する。轟音と暴風が瓦礫を彼方へ吹き飛ばす。地上に翠の太陽が生じたような猛烈な光が、夜に片足を踏み入れた街に影絵を描いた。

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