第3話 一回戦質問タイム
花瓶の中に何かが落ちた音とともに、第一フェイズ終了を合図するタイマーがなる。そして、真の王と田村零士以外の視線は皆、その花瓶のほうへ向けられていた。
「第一フェイズ終了」
冷静な口調でそう告げる王。そして、花瓶の中に手を突っ込み何かを取り出す仕草をする影武者。握りこぶしのまま圭を見てその後、それを自分のポケットへと突っ込んだ。
「続いて第二フェイズ。まずは質問タイムから」
真の王は花瓶が置かれている机の隣にある、タイマー用のスマホが置かれた中央机へ向かう。
そして、手から三つのサイコロを投げ出した。
「質問の順番はサイコロで決めよう。三人が投げて大きい目の順で」
着々とゲームを進行していく真の王。影武者が真っ先にサイコロを手に取る。その後、続いて森と長井もサイコロを手にとった。
サイコロが投げられ決まった順番は森、長井、そして影武者の順。真の王は森に向けてそっと手を向けた。
「まずはアリスから。長井か、こっちの影か、まずは好きな方をひとり宣言して質問をしろ。二週目にもうひとりに質問することになる」
真の王の説明が終わると、森が圭のほうに寄ってきた。合わせて田村もこっちにやってくる。
「質問、どうしたらいいの?」
集まると真っ先に聞いてきたのは森だった。対して集まりつつも別の方向に目を向ける田村が答える。
「……影武者のほうは随分と派手に動いていましたね。そちらから質問しますか?」
「……ちょっと待って欲しい。整理する時間をくれ」
「承知しました。ではわたしから」
田村はそう言って森に耳打ちをする。
それを聞き頷いた森は前に出て長井に視線を向けた。
「長井に質問する。コインを隠した場所は机の中か?」
それを聞いて圭の視線は両側の窓に向けられた。そこには側近二人が壁に沿って歩いている姿がある。
対して長井は頷いた。
「……Noだね」
どういう質問か、その意図は良くわからない。だが、田村の考えがあっての質問だからよしとしよう。続いて長井の質問。長井が質問する相手は影武者と森。先に影武者に対して質問してくれたらこっちとしてはありがたいが……。
「アリスさんに質問するよ」
まぁ、そうなるか……。やはり、影武者の動きがあまりに特異すぎてどう手を出したらいいのかわからない状態だ。
「コインを隠した場所は、前の黒板を向いて左側の範囲にある」
これは無難な最初といった感じの質問か。逆に言えば長井側は森が隠した場所を推測もできていないというわけか……。
「……いいえ」
森は難なく答えた。これで森のコイン隠し場所はAからH軸のどこかになった。
「では、わたしだね。わたしの質問はまず長井くんに」
影武者はそう言って長井に視線を向けた。
「君と同じ質問だ。教室の左側にコインを隠した。すなわち外側だ」
「……Yes」
長井は俯きながらそう呟いた。まぁ、そういう反応するのは分かる。一ターンで質問が二つされるというのは想像以上にきつい。しぼり込めるときは一気に絞り込むことができる。
だけど、それをしっかり利用すれば……いけるはず。
「続いて、アリス。影に向かっての質問から」
真の王に指示され、圭はもう一度整理する。
まず影武者が動き出したのは机を引っ張る動作。その時、机の中にティッシュが放り込まれていたが……。
自分の手の中にあるティッシュを触り確かめるが、何も入っていない。であればそこにはない。だが……第一フェイズ終了直前、奴は相当にやっかいな行動を取ってきた。
素直に受け止めれば、コインは花瓶の中にあると捕らえることができる。場所にしてJの11。そのマスがちょうど花瓶のあるマス……。
だが、普通に考えればそこあるとは思えない。別のコイン、硬貨を投げ入れて、隠すべきコインは別の場所にあると考えるのが打倒。だけどそれを見込んで、花瓶に入れたという大胆な行動も……。
ならば……まずは……。
「森、質問内容は……」
圭の質問を受け止めた森は前に一歩出た。
「影武者に質問。隠し場所はJ11とその周り八マス、そしてその外周の十六マスの範囲内にあるのか?」
少々愚直だったかもしれん。だが、どちらの答えでも問題はない……果たして……。
「No。花瓶の中にコインなど入れていない」
やはりそうか……。もし、質問タイムがなければこの影武者の行動は多いに悩まされたことだっただろう。だが、質問すれば一発で答えが出る。そこにコインは存在しないとわかればもう悩む必要はない。
「続いては僕から、君……影? に向けて」
長井は再度、側近に小声で確認を取ったあと、影武者に指を向けた。
「君はコインを机の中に隠した?」
「残念、Noだ」
影武者は間髪入れず答えを返した。
まぁ、妥当な質問かなとは思う。あれだけ色々と動いたんだ。どさくさにまぎれてコインを入れた可能性も否定できない。だが……結果はNo。だとすれば、一体どこにコインを隠したのか……。
「では、わたしから、アリスさんに向けた最後の質問……だが」
影武者はキツネの仮面の位置をクイッ修正すると、森の前に立った。
「その必要はない。お前の隠し場所は既に把握している」
「「……えっ!?」」
影武者のセリフに対し、同時に声を発したのは圭と森だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます