第2話 彼女居るのか居ないのか論争
圭の家の中でジュースを飲み続ける亜壽香。圭の分も用意されていたが、まだ口につけてはいなかった。
「圭はジュース飲まないの?」
「……飲むよ」
そう言って軽く一口飲む。
「でさ、さっきの話に戻すけど」
「話? どこまでの?」
亜壽香はジュースを圭の部屋にあるテーブルに置くと、ぐっと身を寄せてきた。
「女の匂いがするって話」
「……そこか」
完璧なまでに嘘ではあるが、勘違いしてもらうに越したことはない。現状、亜壽香とあまり構っている暇はないのだから、ちょうどいい口実。
まぁ、認めるような言動は一切するつもりないが。
「さっき、否定はしなかったよね? 冗談のつもりだったんだけど……本当なの?」
「さぁ?」
「それか、彼女ってほどではないけど……いい感じの雰囲気になっている子がいるとか?」
あらからさに亜壽香から視線を逸らしてみた。
「……だとしたら……誰だろうな~。相手は一年生とか?」
「……なぜそうなる?」
「ううん? いま、ちょっと反応しなかった?」
……正直言えば反応した。一年生と言われ、思わず森の顔が浮かんでしまったからだ。でも、別に森とそういう関係を持っているわけでは当然ない。
「気のせいだろ? それとも、亜壽香は俺が年下好きに見えるのか?」
「……う~ん、可能性としてはあるよね?」
「あるのか……」
どうやら、亜壽香には圭がロリコン側に傾いているように見えるらしい。
「でも、年上の人だって、問題なさそう」
「どっちだよ!?」
「そうだね~、お姉さんに甘えたいとか……いや、罵りられたい? 踏まれたい!? 踏まれたい!? 踏まれたいの!?」
「俺をMにしようとするのはやめろ」
「じゃあ、甘えたいか! いや、それとも……茶髪のエロカワいィィお姉さんに、あんなことや~、こんな……ふぎゅッ!?」
暴走仕掛けていたので圭の手で強引に口を閉じさせてもらった。
ちなみに、殺気亜壽香が言った女性像で仮の王を思い描いてしまったのは一生の不覚としておこう。
「この反応……なんなんだろう? 果たして……圭は彼女がいるのか、いないのか? ふ~む、まだまだ謎である」
なんか探偵気取りでもしているのか、顎に手を当て首をかしげる亜壽香。
「いや、いっそスマホ見せてよ! 女の子の連絡先があれば、一目瞭然だぜ」
「断る」
「なんで!?」
「当然じゃないッ!?」
手を前に突き出す亜壽香は本気で驚いた様子。果たして……これは演技なのか素なのか……謎である。
「むむむ……、大丈夫だよ。イヤラシイのが入っててもノータッチで行くからさ。連絡先をちょこっと見るだけだからさ」
「そういう問題じゃないと思うぞ? それとも、お前のスマホも見せてくれるのか?」
「いいよ」
「いいのかよ!? てか、気安く人にスマホ見せるな!?」
本当に、この人はスマホが情報の塊だってことを理解してないのか? 本当に一回のかの映画を見るべきだろう。
「お前、誰にでもスマホ見せるのか?」
「いいや、圭にだけだよ。あとは彼氏とか!」
……自分で地雷を踏みに行くような発言をしていたが、無視しよう。
「いや、無視するなよ、突っ込めよ!」
「ゴファッ!?」
無視した代償として蹴りを入れられたら分にあわないな。
「少しは反応しなさいよ! 「え? 彼氏いるの?」とか、「彼氏にも見せるなよ!?」あとは、「まさか、彼氏にも強制させる気か!?」とかさ!」
「正直言おう。お前が彼氏いようがいまいがどうでもいい。彼氏をどう扱おうがどうでもいい」
「ヒドイっ!?」
亜壽香は圭のベットに顔をうずめて泣くふりをしだす。
「どうせあたしなんて、どうせあたしなんて……女の子としても魅力なんてないんだから、い~もん、い~もんだ!
あぁ、もう、あたしは枕を涙で濡らすしかない」
「俺の枕に顔をうずめるな!」
しばらく亜壽香が嘘泣きを続けたあと、チラリと顔だけこちらに向ける。
「でも、本当に、あたしに彼氏、いるかいないか、気にならないの?」
「……どうでも」
それは本当にそうだ。そんなことに構っている余裕はない。亜壽香に男がいようがいまいが、解放者としての行動に違いができることはないのだから。
解放者に関係ないことに、興味を持つのは無駄だ。
「というか、俺の部屋にこうやって勝手に入り込んでいる時点で、まあ彼氏はいないだろうな」
「ぉお! 鋭いね、圭!!」
亜壽香は散々圭のベットの上で好き勝手やったあと、体を起こし、ベットに腰をかける。そして、亜壽香はスマホを自分の顔の横に持ってきた。
「ところで、圭。スマホの電源切れてる?」
「……え?」
思わず、自分のポケットに手を当てた。
「いやぁ、LIONの通話かけても繋がらないからさ」
「……なぜ通話をかけた?」
「いや、スマホどこにあるのかなって。あわよくば、圭のスマホがベットのどこかにあったり、机の上に置いてあったら、鳴った瞬間に取り上げられるかも、って思ってさ」
「とことん俺のスマホ見たいらしいなっ!? そこまでするか!?」
なんか、もう。いろいろ怖いよ、この子。
「で……ポケットにあるスマホ。貸してよ」
「……」
「あれ? なんで分かったかって? だって、電撃切れてる? って聞いたとき、ポケットに手、触れてたじゃん。そこにあるんでしょ?」
「……」
恐ろしい子。
「はい、貸して」
「貸すかい!!」
結局、本当に亜壽香は理由も用事もなく、圭の部屋に来たようで。気が付けば嵐のように去っていった。
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