第16話 ルール説明
ネイティブは自作のカードと言って、三枚のカードを取り出した。絵柄は印刷されたカードのようだが、それを一枚ずつカードゲームのカードを入れるスリーブといわれるものに入れられている。これによってカードのイカサマはできないと思われる。
そして肝心の絵柄は……。
「ステーキのカード二枚、そして……毒入りのステーキが一枚だ」
さっきまでと違い、明らかに勝負する目と口調に変わった。そんなネイティブが差し出すカード。ステーキの絵柄が二枚と確かにもう一つドクロマークが描かれたステーキの絵柄。
「これをお前に三つ好きな順番に机の左端、中央、右端に裏向けて並べてもらう。例によってちゃんと確認したうえで伏せてもらう。俺はそのカードのうち、二枚を選ぶだけ。このゲーム、俺は客で……お前が暗殺者だ」
「……洒落たゲームを作りますね? トランプだと対策されているとでも思いましたか?」
だが、根本的ルールは一方的ババ抜きと変わらない。大きく変わる点は二つ。手札に持つか、並べて伏せるかの違い。それと……
「しかし、今回は三分の一なんですね。前は五分の一の確率で圧倒的にあなたは勝ったのに。ちょっと焦っているんですかね?」
「……」
質問には答えてくれない。まあ、どちらでも構わない。
「では、実際にエンゲームの契約条文を作成しましょう。ですがその前に……」
圭は次郎のほうを見た。
「次郎、お前は後ろを向け。そのまま、壁に向かっていろ。このゲームは俺対ネイティブで行われるものだ。お前が俺の味方なのか、奴のかは知らないが、どちらにしても、変に手を出されても困るからな。
ネイティブ、あなたもそれぐらい、構わないでしょう?」
「あぁ、構わない」
「よし……」
次郎は圭の言葉に従い、圭の後ろに立った。そして壁の方に向かってひたすら沈黙する。その間、圭は契約条文の作成に入った。
「基本的に前のルールと変わりませんし、時間節約のため前と同じ条文をさくっと作らせてもらいます」
そうして作り上げた条文。三条まですでに使われたから四条目より。
『第四条 甲乙双方は不正及びイカサマをしないこと。
第五条 ゲーム開始後、甲は乙が伏せるカード情報をルールで選ぶ、又は推測や憶測、推理といったもの以外の方法で意図的に得ることは禁止とする。
2 もし、意思を介さず情報を得た場合にはゲームを一からやり直す。
第六条 乙はカードの内容を確認したうえで伏せなければならない。また、最初にカードを並べた後、順番を変更してはならない。
第七条 ゲーム中、乙は甲からの質問には虚偽なく絶対に答えること。ただし、毒入りカードの位置などゲームの勝敗を直接決めるような質問に答える義務はない』
「これともう一つ、条文を付け加えさせてください」
『第八条 甲の勝負相手はあくまで乙である。よって甲は丙を利用してカード情報を探ることを禁止とする。』
「次郎の行動しぐさで悟られるのは……興ざめですよね。これならいいでしょ? あなたも構わないといいました」
「……確かに。いいだろう」
ネイティブからの了承を得て、一つ息を吐いた。
「では、契約条文はこれでいいでしょうか? 完全に前作った条文を覚えているわけではないので一字一句たがわないというわけではないですが、ニュアンスは変わらないかと……ご不満な点があれば修正します」
ネイティブは確認を始めた。圭も問題ないか確認をする。
「確認だ。お前はカードを必ず確認して伏せる。適当に目をつぶって伏せたりはしないこと。そして勝敗にかかわるもの以外の質問には嘘なく答える。これは守ってもらう」
「もちろんです。受け入れます」
「よし……その旨もしっかり契約に記されている……なら……問題ない」
「ありがとうございます。では契約に同意を」
圭とネイティブ、お互いのスマホにでたポップアップ画面の同意ボタンを押した。
それと同時にネイティブはカードを三枚圭に渡してくる。圭はそれをルール通り、一枚一枚確認しながらゆっくりと伏せた。机の左端、中央、右端にカードを動かす。
「これでいいですか?」
「ああ、よしゲームを始めるぞ。お前の差し出すステーキ、おいしくいただかせてもらう」
「……どうぞ、お召し上がりください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます