第4章 革命の時は来たり

第1話 その後

 次郎と無事契約が終了。


 その後、残していた契約分を利用して、一通りできる実験を重ねた。


 無事、次郎は今、圭の情報をネイティブに漏らすこともなく、そしてネイティブに対して牙を向けることを止めようともしない。

それどころか、手を貸してくれている。


 といっても、今の次郎は、この行為がネイティブに反抗を示すことだとは思っていないが。


 一通り次郎に策の内容を話し、二人の間で実験的な個々契約を交わしながらコントラクトと言うアプリのルールをしっかり検証していった。




 そして来たる納金日。前日に指定してきた投函場所にこの日、好きな時間に各自入金しなければならないらしい。

 投函場所は特別棟四階、西から三番目の教室。だが、圭は納金を行わない。代わりに、フライハイトから現場を覗いていた。


「圭、お前は納金しないのか?」

「ああ、しない。というか……出来ない。手持ちに金がないからな」


 圭はそのセリフを意味ありげに笑み浮かべながら言った。


「そ……そうなのか? じゃ、じゃあ、代わりに俺が圭の分も」

「いや、それは結構。滞納金もでるが、仕方ない」


 なんて口では言っているが、納金しないのはわざと。

 とりあえず、三ヶ月間、納金をするつもりはない。それは、ネイティブが立てた集団契約の中に理由がある。


『第二条 民は毎月一日(学校が休みの場合、次に学校に来る日)三千円を主に支払わなければならない。


  2 金は毎回グループチャットで指定したところに投函すること。


  3 手持ちがなく、どうあがいても払えないという場合、次回の回収日にまとめて支払ってもらう。ただし、滞納した月につきプラス五百円となる。滞納が三か月以上になると主から取り立てに動き出す。』


 ならば、三ヶ月待って是非ともネイティブさんから、会いに来てもらおうじゃないか、って考えただけだ。


 ”主”から取立てに、とご丁寧になっている以上、ネイティブもまた、条件が整えば絶対に取立てに動かなければいけない。

 これは、ネイティブにとったら、絶対に金を払わすために行った契約だろうが、同時に自分の行動も制限させる契約になっていると気づいた。


 と、言ってもそれより前の契約で、基本的に金を持っていたら納金は絶対だ。手持ちがなく、どうあがいても~という表現が、それに当たる。


 だが、所詮手持ち。

 もともと、亜壽香に三万を貸していたため、所持金自体も少なかった。残りは全部親の口座にこっそり送っておいた。今、所持金はほぼほぼゼロだ。昼飯代程度しかない。


 この契約において、一番良かったのは、所持金が三千円に満たない場合、満たない全額をごっそり支払わなければならない契約になっていなかったこと。それが功を奏して、昼飯(卵サンド)代を残したまま、策も続行できる。


 あとは、入ってくるバイト代を親の口座に押し付けておけば、払う必要はなくなる。納金は”全力で注ぐ”必要がないのも、これができる理由なのかもしれないな。


「もしかして、その滞納する行動も……ネイティブを救うためなのか?」

「……まあな」


 自分で仕込んでおいてなんだが、次郎のセリフのとんちんかんさに、軽い笑いすらこみ上げてきた。無論、それは表面下には出さない。全力で押し殺す。


「じゃあ、俺も納金やめたほうがいいのか?」

「あぁ……うん? やめれるのか?」


 一応、次郎にも納金の契約はかかっているはず。


「え? 圭がやめろっていうならそれに従うが? 契約しただろう? 俺はネイティブを救うためになら、できる限りお前に手を貸す」


 平然と言ってのける次郎に頷きながら、納得した。どうやら、契約の優先度において、うまくこっちの契約の方が高くなってくれているらしい。


 全く、実に次郎はうまく、契約通りに動いてくれている。

 改めて、そんなことができている契約を見た。



『友情契約』

 ※以下、Aは次郎、Bは圭のアカウント名を差す。

 第二条 Bがこれから行動することは、『ネイティブatp』(以下Cという。)を救うことに繋がる。

  2 AはCにバレないようにしながら、そのBの行動を手助けすること。



 この条文にはいくつか、日本語トリックとも言えるようなものが入っている。

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