第14話 次郎の第二問
ゲームは終盤に入っていた。
二対一で圭がリードの状態で、最終問題かつ延長戦に入るか決着かが決まる。
ここは間違いなく次郎の実力が問われるところと言える。
二対ゼロであったさっきの問題と違い、今度は一点返せば、逆転の可能性が残された状況だ。普通に考えたら、まずここは慎重になる。
まだ勝てる可能性が見え始めた状態なのだから。
次郎は既に、圭から問題の出し方の指摘を受けた。どういう問題がいいかも、今度はちゃんと頭の中で思いつける状況にある。
その状態の全力で、次郎はどういう問題をだせるのか。
結局運任せの問題を出すなら、そこまで。か……スリルを楽しみたい狂人か……。
「圭……」
「……ん?」
次郎はうつむいたまま、圭の名前を呼ぶ。
「お前……すごいな。コントラクトの存在を知ってから、まだ一ヶ月も経ってないのに、ここまでやってくるなんて……。
お前なら……本当にネイティブを倒せるのかもな」
「……それを止めようとしたお前が言うか?」
「……それも、そうだな。それに、こうやってお前に期待を見出しながらも、やっぱりお前を俺は全力で止めるために動こうとしているんだから」
「そうだよな……」
「ああ、そうだ。俺は意地でも、お前を止める。お前の策を暴く。お前を全力で止めてみせる! 絶対に、絶対に止めてみせる!」
「そのセリフ、相変わらず場違いな気がするが……こいよ」
次郎は一度息を大きく吸うと、どんと自分の胸を叩いてみせた。
「問題!」
問題……。
「俺は、圭、お前のことを友達だと思っている。マルか! バツか!」
その問題は圭も流石に絶句した。数秒間、その過程を得て、問題の意図が分かり始めると同時に、ようやく呼吸することを思い出す。この問題は……。
「フフッ……フハハ……」
最高だ……この問題。単純にセンスがいいと思ってしまった。
で、解答の方だが……
「どうしたものかな……」
流石に頭を悩ませた。
友達という定義は曖昧かもしれないが、この問題において、そこは大した問題にはならない。単純に、次郎が圭に対してどう思っているかが、全てだ。
で、今までの状況から考えて……というよりも……情を考えたなら、答えはマルだ。だけど、そこで思うのはそんな単純かどうかだ。
確かにやつは本気だ。全力だ。そう、全力で圭を倒そうとしてきているその状況下で、そんな素直な問題を出すか? それとも……
「俺を試してるのか?」
「……俺はお前に勝てる、俺が考え付ける最善策を出しただけだ……」
最善策……。マルではない……そんな気はする。だが、そこでならバツと答えるのは無理だ。なにか根拠が欲しい。でないと、結局その裏を書かれて、マルでした、となるのがオチ。
根拠が出てこないならば、マルと答えるしかないか……。
いや、落ち着け……そんな消極的な考え方じゃ、答えにたどり着けない。別の方向から考えよう。全力の次郎が思いつけて、それでいてなおかつ、圭がたどり着けない答え……。俺を……陥れることができる……解答……。
「少しは……俺、いい問題、出せたかな?」
存分に思考の海に落ちていた圭は次郎の言葉に、思わず笑みをこぼした。
「ああ……疑心暗鬼になりつつあった俺に仕掛けられる、最高の問題だ。
しかし……こんな結構小っ恥ずかしい問題、よくお前も出せたものだよ。友達って……それも……コントラクトによって引き出された全力ってわけか……」
本当に、呆れ半分だが、称えるばかりだ。次郎は確かにやる時はやるやつだって言うのはわかった……。こんな問題、圭は恥ずかしくて出せやしない……。
「……ん?」
そうだ、こんな問題、俺は思いつけない。思いつけたとしても、それを本当に問題として提示できる自信はない。こんなの、極論で言えば、告白だ。自分の心の奥にある本当の思いをぶつけるという意味で。
次郎がたどり着いた、最善策。圭に勝てる問題。
「ちょっと……答えがわかった気がする……」
「っ!? ……で?」
「が……それが答えだとしても……」
こんなことを言えってか? 無理だろ……でも……圭には答えられなくて、次郎が思いつける答えなんて……これ以外……。
いや、プライドなど……捨てなきゃ、勝てねえよな……。
「答えは……バツだ……」
ありえないと踏んでいた答えを自らの口で唱えた。そして、じっと次郎を見据える。
「お前は俺のことを……友達だなんて思ってねえ」
圭は答えを言いながら、こぶしを握り締めた。
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