第3話 意図が分からない
次郎が提案することに、まるで次郎の思考が読めない。このまま事を進めるのは間違いなく危険だと判断した。
「分かった……ならいい。別にお前の手を借りなければ絶対勝てないってわけじゃない……。
お前以外にも一応候補はいたからな。得体の知れないやつだし、信用などまともにできる気はしないが……今のお前よりは……マシのような気がするよ」
「はっ、まて!」
圭が手を適当に降って教室を出ようとしたとき、次郎は慌てたように、圭の手を掴み取ってきた。その次郎の目にあるのは、とてつもない気迫。
「……今度はなんだ? 要求内容でも変えるか?」
「お前……あの契約した女子生徒の手を借りるつもりか……」
あの女子生徒、543レインとかいうアカウントを持ったあの生徒のことだろう。そして、圭が確かに、候補に入れていたもうひとりの人物。
「だとしたら何か?」
「あれを信用するのか? ……今の俺に言えることではないのか……」
「あぁ、そうだな。今のお前のほうが、よっぽど怖いし不可思議だ」
圭はっきりと言い放ったあと、次郎の手を振りほ動向としたのだが、次郎はさらに力を加えてきたことにより、離れることができなくなっていた。
「圭、悪いことは言わない。今すぐネイティブに抵抗するのはやめろ」
思わずポカンとしてしまった。あまりに現状においてありえない一言。どこから、どういう話の流れになれば、そんなセリフが次郎の口からは吐かれるという?
「おいおい、ジョークが過ぎるぞ……いや、ジョークだろ? だいたい、やめろと言われて、現状でやめられるわけが……ないだろ!」
「なら圭……俺とエンゲームだ……」
「……は?」
ここに来て、さらに唐突なことを言い出した次郎に、思考がどんどん追いつかなくなっていった。果てしないほどに次郎の考えていることが分からない、わからなすぎる。
「俺がこのゲームに勝てれば、お前にはネイティブに勝負を吹っかけるのはやめてもらう、そして、お前が考えたという、ネイティブの対抗策を教えてもらう」
「待て待て待て! なあ、次郎? 本気で言って言ってるのか? ……言ってる……らしいな……。お前の考えていることはまるでわからない。
でも、その目からして、本気でやってるってことだけは……よくわかる。
だけど……なんでそうなるんだよ!!」
「俺はお前を止める。ただ……それだけだ」
次郎の目は間違いなく真剣だ、全力でいまの圭を止めようとしている。その気迫に、いま自分がやろうとしていることになにか間違いがあるんじゃないかと、思わず考えてしまうほど。
だが、考えたところで、次郎に止められるようなほどのことをしているとは思えない。
「次郎、そのセリフってさ。相手が道を踏み外そうとしているとき、踏み外したときに言うセリフじゃないのか?
別に俺は、法を犯すつもりなんてないし、復讐するつもりもない。そんな俺を、なぜ止める? だいたい、お前さっきまで……俺に手をかすって話で進めていたんじゃないのか?」
次郎は口を開こうとしない。頑なにこっちの正論を無視しようとしてくる。
「なんで、そんなに話を一方的にしようとする?
もっと、詳しく話せよ。お前の考えていることが、まるで分かんねええんだよ! お前は何をしたい? お前は俺に何を求める?
俺はお前に求めていることを言った! お前も言えよ! お前の目的はなんだ!?」
「……お前を止める」
それでも、次郎は同じセリフを繰り出すだけ。その次郎の姿は……圭がかつて友達として接していた次郎のそれじゃない。明らかに、いつもと違う雰囲気……。
なんかもう、この結論にしか……至れない……。
「お前……次郎じゃないな?」
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