銀翔軍VSぬらりひょん軍 決戦の時

第116話 いざ決戦!!

 ――いよいよ、銀翔たち妖怪連合軍とぬらりひょん軍との、約束の決戦の時間が刻一刻と迫ってきていた。


 その日、藤島ナナコと玄武の化身であることを思い出した佐藤薫と、雪女の加賀雪菜は中学校にいつものように通い、一見普段と変わらぬ日常を淡々とこなしている。

 だが、ナナコも、雪菜も薫も朝から言葉少なでひしひしと緊張感に包まれていた。

 互い互いに声に出さずとも、これから起きうる死闘が、果たして勝利を掴めるのか犠牲をどれだけ払わねばならないのか、不安は募っていく。



 稲荷神社のおきつね様の風城銀翔かぜしろぎんしょうは学校を休んだ。

 ぬらりひょん達との戦いに向けて、仲間たちと入念に稲荷神社の境内から続く高天原たかまがはらの周りに結界をほどこしていく。


 修行の時間はまだまだ足らないぐらいだったが、各々おのおのが手応えを感じていた。


「ぬらりひょんにしては正々堂々と戦いに決着をつけるなんざ、何か裏があるとは思えんか? 銀翔」


 おきつね銀翔には大蛇妖怪オロチの指摘はごもっともな意見だった。だが、それ以上詮索は出来ない。探るには時間がない。

 ――決戦開戦は午後五時だ。

 ぬらりひょんの家来の一匹の烏天狗が稲荷神社にやって来てそう伝えて来た。


 どちらからともなく太鼓や法螺貝の合図でもってして、戦の始まりが報されるはずだ。


 今、ウサギの爺やのバンショウがはめた腕時計の針は四時を回っていた。


 中学校の授業を終えたナナコたちが高天原に来る頃だろう。

 銀翔はナナコたちが結界内に入って来たら人間界の時止めをして、さらに保護しようと策を講じていた。


 一体の式神が銀翔の元に戻って来た。先日、うかのみたまの神様がぬらりひょんに放った式神だ。


『ぬらりひょんの仲間たちの中には、人間が姿を変えさせられた者が大勢いる。傷を深く負いすぎては元には戻れまい』


 そう言うと式神は役目を終え、ボウッと瞬時に燃え尽きた。


 銀翔は式神の報告に立ち尽くしていた。元々戦うと言ってもこちら側には、命を断つことはしてはならぬようには、言い渡してはある。

 だが敵であるぬらりひょんがたにはそんなことは通じまい。

 本気で我々を倒しに掛かってくるだろう。

 命の保証はない。


「オロチの言うとおりであったの。裏があったのじゃ」

「下手に戦えば人間たちが戻れなくなる、か。ぬらりひょんの野郎! 相も変わらず卑怯な奴だな。どうすんだ? 銀翔。みんなには黙っておくのか?」


 おきつね銀翔は頭を横に静かに振った。


みなにはありのままを伝える」


 銀翔は獣型の妖狐の姿に変化へんげして四肢を蹴って、それぞれのリーダーに式神の探索結果を伝えていった。


 河童の一族の中でも水を武器に変えたり出来る妖力の高い精鋭数百名と息子たちを連れだって駆けつけた、八束。


 雪女一族の中から優れた妖力と頭脳戦に強い者たちを従えて山から下りて参戦する雪菜の母、雪姫ゆきめ


 天狗の里から天狗一族の力に長けた猛者たちを数百名連れて来た一族の頭領、荒天丸。


 大狸の里の一族から高い妖気や機転の利く戦いをする、日頃から鍛錬に余念の無い武闘派の者を数百名連れて参戦する、空知葉。


 それぞれに伝えると皆「相分かった」「ぬらりひょんの卑劣さは分かっていますわ」「面白えじゃねえか」「大丈夫だ、承知した」と口々に力強く言葉を銀翔に返し掛ける。


 おきつね銀翔は、勇敢な仲間たちの結束の強さに胸が奮い湧き立っていくのをじわじわ感じていた。



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